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内在性SIK3を介した睡眠要求および概日リズムを制御する神経細胞集団の同定

浅野, 冬樹 筑波大学 DOI:10.15068/0002008050

2023.09.04

概要

筑 波





博士(医学)学位論 文

内在性 SIK3 を介した睡眠要求および
概日リズムを制御する神経細胞集団の同定

2022
筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科

浅野冬樹

目次
略語一覧

P.6

背景

P.7-12

1. 睡眠の重要性

P.7

2. 睡眠の定義

P.7

3. マウスの睡眠

P.7

4. 睡眠の制御機構

P.8

5. 睡眠の恒常性制御と概日リズム制御に関わる
脳領域・分子メカニズム

P.8

6. シナプス恒常性仮説

P.9

7. 機能獲得型 Sik3 変異による睡眠覚醒制御

P.10

8. 機能欠損型 SIK3

P.11

9. Sik3flox マウスの作製

P.12

研究の目的

P.13

研究方法

P.14-19

1. 実験動物

P.14

2. 脳波・筋電図測定用電極の取り付け手術

P.15

3. 脳波・筋電図測定

P.15

4. 脳波・筋電図データの解析

P.15

5. ウェスタンブロッティング

P.17

6. In situ ハイブリダイゼーション法

P.18

7. 概日リズム実験

P.18

8. 統計

P.19

結果

P.20-27

1. 神経系における SIK3 欠損の確認

P.20

2. 神経系における SIK3 欠損は睡眠要求を低下させる

P.20

3. グルタミン酸作動性神経細胞における SIK3 欠損は

3

睡眠要求を低下させる

P.21

4. SIK3 欠損による睡眠要求の低下には
主に大脳皮質のグルタミン酸作動性神経細胞が関与する

P.22

5. 大脳皮質を含む領域における SIK3 欠損は
NREM 睡眠時のデルタ波成分の減少を再現できる

P.24

6. GABA 作動性神経細胞における SIK3 欠損は
覚醒ピークの位相を後退させる
7. 視床下部における SIK3 欠損は覚醒ピークの位相を後退させる

P.25
P.25

8. GABA 作動性神経細胞における SIK3 欠損は
活動開始点の後退と行動周期の延長を引き起こす

P.26

考察

P.28-35

1. Sik3flox マウスの有用性

P.28

2. 内在性 SIK3 は睡眠要求制御に関与する

P.28

3. SIK3 欠損による睡眠要求低下の責任細胞集団

P.30

4. SIK3 欠損が睡眠要求を低下させるメカニズム

P.31

5. 本研究における睡眠覚醒評価の課題

P.32

6. SIK3 欠損による周期長延長の責任細胞集団

P.34

結語

P.36

要約図

P.37



P.38-54

図 1 Sik3flox マウスの設計

P.38

図 2 Sik3flox マウスを用いた SIK3 欠損の確認

P.39

図 3 Nestin-Cre; Sik3flox/flox マウスの睡眠覚醒

P.40

図 4 Vgult2Cre/+; Sik3flox/flox マウスの睡眠覚醒

P.42

図 5 Vgult1Cre/+; Sik3flox/flox マウスの睡眠覚醒

P.44

図 6 Camk2a-Cre; Sik3flox/flox マウスの睡眠覚醒

P.46

図 7 Foxg1Cre/+; Sik3flox/flox マウスの睡眠覚醒

P.48

4

図 8 VgatCre/+; Sik3flox/flox マウスの睡眠覚醒

P.50

図 9 Foxd1Cre/+; Sik3flox/flox マウスの睡眠覚醒

P.52

図 10 VgatCre/+; Sik3flox/flox マウスの輪回し行動

P.54

参考論文

P.55-68

謝辞

P.69

出典

P.70

5

略語一覧
AMPK, AMP-activated protein kinase
BDNF, Brain-derived neurotrophic factor
BMAL1, Brain and muscle Arnt-like protein-1
CAMK2A, Calcium/calmodulin-dependent protein kinase II alpha
CRY, Cryptochrome
Foxd1, Forkhead box D1
Foxg1, Forkhead box G1
GABA, γ-aminobutyric acid
HDAC4, Histone deacetylase 4
LKB1, Liver kinase B1
NMS, Neuromedin S
NPTX2, Neuronal pentraxin 2
NREM, Non-rapid eye movement
PER, Period
PKA, Protein kinase A
REM, Rapid eye movement
SNAP25, Synaptosomal-associated protein 25kDa
SNARE, soluble N-ethylmaleimide fusion protein attachment protein
receptor
SIK, Salt-inducible kinase
VGAT, Vesicular GABA transporter
VGLUT, Vesicular glutamate transporter

6

背景
1. 睡眠の重要性
多くの人が睡眠不足による体調不良を経験したことがあるように、睡眠は心
身の健康に不可欠である。具体的には、睡眠不足は認知機能の低下(Krause
et al., 2017)および消化器系(Khanijow et al., 2015)、免疫系(Ali et al.,
2013)、代謝系(Koren & Taveras, 2018)、循環器系(McAlpine et al., 2019)
の機能障害との関連が報告されている。極めつけは、長期の睡眠剥奪は死に至
ることが動物実験により報告されており、睡眠の重要性は疑う余地がない
(Rechtschaffen et al., 1983)。

2. 睡眠の定義
睡眠は 1)外部からの刺激に対する反応性が低下している様態であり、かつ
2)静止状態からの急速な回復が可能で、3)恒常性による制御を受ける状態で
あると定義されている(Anafi et al., 2018)。これら 3 つの定義を満たす生理
行動は、近年ではクラゲやヒドラにおいても報告されており、睡眠は神経系を
持つ動物に広く保存されている(Kanaya et al., 2020; Nath et al., 2017)。一
方、外部刺激に対する反応性が低下した状態は昏睡や全身麻酔下でも観察され
るが、これらの状態は 2)静止状態からの急速な回復と 3)恒常性による制御
を満たさない。また、安静状態は 2)静止状態からの急速な回復が可能の条件
を満たすが、1)外部からの刺激に対する反応性が低下および、3)恒常性によ
る制御を満たさない。したがって、睡眠を特徴づけているのは恒常性による制
御を受けることだと考えられる。

3. マウスの睡眠
マウスの睡眠は、ヒトの場合と同様に脳波を測定することで、REM 睡眠と
NREM 睡眠に分けることができる。REM 睡眠では脳波のシータ波成分(4 - 7
Hz)が優位となり、覚醒時の脳波と似ているが、筋脱力により容易に覚醒と区
別できる。NREM 睡眠は 1 日の睡眠時間の大部分を占め、脳波のデルタ波成分

7

(1 - 4 Hz)が優位となる(Hubbard et al., 2020; Scammell et al., 2017;
Uygun & Basheer, 2022)。ただし、ヒトは暗期に単相性睡眠をとるが、マウ
スは明期に多相性睡眠をとる点が異なる。さらに、マウスの NREM 睡眠では
ヒトの場合と同様に睡眠紡錘波が観察されるが(Fujiyama et al., 2022)、ヒ
トの NREM 睡眠のように細かく NREM 睡眠のステージを分けない。近年では
トカゲやゼブラフィッシュにおいても REM 睡眠様行動が報告されているが、
細胞外記録やカルシウムイメージングを用いて判定する必要があり、簡便では
ない(Leung et al., 2019; Shein-Idelson et al., 2016)。脳波を測定することで
NREM 睡眠と REM 睡眠が容易に判別でき、さらに遺伝子改変技術の確立も相
まって、マウスは睡眠研究に有用なモデル動物である。

4. 睡眠の制御機構
睡眠が、恒常性(Process S)と、概日リズム(Process C)の 2 つの機構に
よって制御されていることは、広く受け入れられている(Borbély, 1982)。恒
常性制御とは、覚醒時間の増加に伴って睡眠要求が増加することである。増加
した睡眠要求は、睡眠をとることによって次第に解消される。NREM 睡眠中の
デルタ波成分は、直前の覚醒時間の蓄積によって増加し、NREM 睡眠時間の経
過に伴って解消することから(Franken et al., 1991)、有力な睡眠要求の指標
のひとつとされている。概日リズムによる制御は、睡眠をとる時間帯の決定に
重要であると考えられている。恒常性と概日リズムの両方の制御によって、眠
りに落ちやすさが決まる。すなわち、睡眠要求が増加しており、かつ個体ごと
に決まっている睡眠をとるのに適した時間帯に差し掛かった時に、睡眠をとる
傾向にある(Vosko et al., 2010)。したがって、個体レベルでの睡眠に着目し
たとき、恒常性制御と概日リズム制御による影響を完全に切り離すことは困難
である。

5. 睡眠の恒常性制御と概日リズム制御に関わる脳領域・分子メカニズム
睡眠を含む、1 日サイクルで変化する生命現象については概日リズムの制御

8

下にあり、視床下部に存在する視交叉上核が中枢時計として機能する
(Mohawk et al., 2012)。視交叉上核は自律的なペースメーカーとして末梢の
細胞時計を調整し(Reppert & Weaver, 2002)、網膜に存在するメラノプシン
陽性神経節細胞から光による興奮性の刺激を受け取ることで、外界の明暗周期
に適応する(Hastings et al., 2018)。視交叉上核の神経細胞は GABA 作動性
である(Ono et al., 2018)。視交叉上核の中でも、NMS 産生神経細胞が概日
周期長の決定に重要であると考えられている(Lee et al., 2015)。細胞の自律
振動の分子メカニズムについては、転写因子である CLOCK-BMAL1 複合体が
PER、CRY の転写を促進し、PER-CRY 複合体は CLOCK-BMAL1 複合体の転
写を抑制する、ネガティブフィードバックループを形成している(Takahashi,
2017)。一方、睡眠の恒常性制御に関わる神経細胞についても、近年少しずつ
明らかになってきた 。具体的には、大脳皮質第 5 層の錐体細胞における
SNAP25 欠損による神経伝達の遮断や、縫線核セロトニン神経細胞のジフテリ
ア毒素による除去は、断眠による NREM 睡眠時のデルタ波成分の増加を阻害
する(Krone et al., 2021; Oikonomou et al., 2019)。また、視床中心核を光遺
伝学の手法を用いて断眠後に発火させると、NREM 睡眠時のデルタ波成分が減
少するのに要する時間を短縮し、断眠による影響の解消を促す(Gent et al.,
2018)。しかし、恒常性制御に関わる脳領域において、どのような分子メカニ
ズムが作用しているかについての知見は十分ではない。これまでの報告から、
睡眠の恒常性制御と概日リズム制御に関わる脳領域が独立していることは予想
される。

6. シナプス恒常性仮説
NREM 睡眠時の脳波のデルタ波成分の機能的な面を説明する仮説として、シ
ナプス恒常性仮説がある(Tononi & Cirelli, 2003)。これは、覚醒時間の蓄積
は大脳皮質のシナプス強度を増強し、シナプス強度の増強は後に続く NREM
睡眠時のデルタ波成分増加を促し、NREM 睡眠時のデルタ波成分はシナプス強
度の減弱に関わるという仮説である。睡眠時のシナプス強度の減弱は、神経接

9

続における信号対雑音比を改善し、性能向上につながる。覚醒時のシナプス増
強と睡眠時のシナプス減弱については、分子および電気生理学的な証明がなさ
れている(Vyazovskiy et al., 2008)。このように、睡眠覚醒がシナプスに及ぼ
す影響についてはよく研究されているが(Tononi & Cirelli, 2003; Weiss &
Donlea, 2021)、シナプス恒常性が睡眠へ与える影響は明らかになっていない。

7. 機能獲得型 Sik3 変異による睡眠覚醒制御
所属研究室では、新規睡眠制御分子を発見することを目的として、マウスを
用いたフォワード・ジェネティクス研究を行ってきた。これまでに 10000 匹以
上のランダムな点突然変異をもったマウスの睡眠覚醒をスクリーニングし、4
つの睡眠異常家系を樹立した(Miyoshi et al., 2019)。そのひとつに、Sleepy
マウスがある(Funato et al., 2016)。Sleepy マウスは顕著な NREM 睡眠時間
および NREM 睡眠中のデルタ波成分の増加を示す。さらに、Sleepy マウスは
断眠後の NREM 睡眠中のデルタ波成分の増加が野生型マウスより大きい。し
たがって、Sleepy マウスは睡眠要求が増加し、NREM 睡眠時間が増加してい
ると考えられている。この表現型の原因遺伝子は Sik3 と同定された。Sleepy
マウスでは、Sik3 遺伝子のイントロン 13 のスプライスドナー部位中(chr9:
46198712)にグアニンからアデニンへの一塩基置換( Sleepy 変異)があり、
エクソン 13 に相当する 52 個のアミノ酸を欠損した SLEEPY 変異型 SIK3 を発
現している(Funato et al., 2016)。SIK3 は AMPK 関連キナーゼに属するリ
ン酸化酵素であり、N 末端にキナーゼドメインが存在する。SIK3 は LKB1 お
よびプロテインキナーゼ A(PKA)によってリン酸化される。LKB1 は、SIK3
のキナーゼドメイン内の活性化ループに存在する 221 番目のスレオニン残基
(T221)をリン酸化し、これが SIK3 のキナーゼ活性に必要である(Lizcano
et al., 2004)。PKA は Sik3 のエクソン 13 にコードされる 551 番目のセリン
残基(S551)をリン酸化し、14-3-3 との結合を誘導することで SIK3 のキナー
ゼ活性を抑制する(Sonntag et al., 2018)。S551 をアラニン置換(S551A)
し、S551 の疑似非リン酸化状態を模した Sik3S551A マウスにおいても NREM 睡

10

眠時間の延長と NREM 睡眠時のデルタ波成分の増加が観察されることから
(Honda et al., 2018)、睡眠要求の増加には S551 のリン酸化制御が重要であ
ることがわかる。S551 周辺のアミノ酸配列は種を超えてよく保存されており、
ショウジョウバエにおいてマウスの SIK3(S551A)に相当する SIK3(S563A)
の 発 現を 誘導 し た場合 に おい て も 睡 眠 様行 動 が増 加す る ( Funato et al.,
2016)。S551 のリン酸化が SIK3 のキナーゼ活性を抑制することに加え、ヘテ
ロ接合体の Sleepy マウスでも睡眠時間が増加することから、Sleepy 変異は機
能獲得型変異であると考えられている(Funato et al., 2016)。Sleepy マウス
では T221 のリン酸化が亢進しており(Funato et al., 2016)、断眠後のマウス
と同様に脳内の蛋白質のリン酸化が亢進する(Z. Wang et al., 2018)。したが
って、SIK3 の機能亢進が脳内の睡眠要求増加に関わると予想される。SIK3 は
大脳皮質、視床、視床下部、脳幹などに広く発現しており (Funato et al.,
2016)、SIK3 の作用する神経細胞種や脳領域を同定することは、睡眠の恒常
性制御に関わる領域と分子メカニズムの解明への第一歩であると考えられる。

8. 機能欠損型 SIK3
機能獲得型の遺伝子変異は、必ずしも当該遺伝子が持っていた機能の異常を
表現型に反映するとは限らない。例えば、SLEEPY 変異型 SIK3 蛋白は野生型
SIK3 蛋白と比較して、結合相手が増加していることが報告されている(Z.
Wang et al., 2018)。そのため、内在性 SIK3 が睡眠覚醒制御に関わるかどう
かを明らかにするためには、SIK3 の機能欠損実験が必要である。SIK3 は脳だ
け で な く 、 全 身 性 に 発 現 す る こ と が 確 認 さ れ て い る ( Darling & Cohen,
2021)。全身性 SIK3 欠損マウスは、骨格形成異常による胸椎の脱臼により、
生後一日以内に約 90%が死亡すると考えられている(Uebi et al., 2012)。生
き残った SIK3 欠損マウスも低体重、低血糖、高インスリン感受性、低脂血症、
脂肪異栄養症といった栄養失調の表現型に加え(Uebi et al., 2012)、骨形成異
常を示し(Sasagawa et al., 2012)、不健康であるため睡眠研究には使用でき
ない。一方、全身性 SIK3 欠損マウスは行動周期が延長することが報告されて

11

いる(Hayasaka et al., 2017)。機能低下型 SIK3 を発現したショウジョウバ
エ、SIK3 類縁遺伝子を欠損した線虫では睡眠様行動が減少することからも
(Funato et al., 2016; Grubbs et al., 2020)、内在性 SIK3 が哺乳類において
も睡眠制御に関わることが予想される。

9. Sik3flox マウスの作製
Cre 組換え酵素依存的に SIK3 を欠損させることを目的として、私は修士課
程において Sik3flox マウスを作製した(浅野冬樹, 2017)。このマウスは、Sik3
遺伝子のエクソン 3 の前後に loxP 配列が挿入されている(図1)。Sik3 遺伝
子の開始コドンはエクソン1に存在し、エクソン 1 からエクソン 7 がキナーゼ
ドメインをコードする。その中でも、エクソン 3 は SIK3 がキナーゼとして機
能するために必要な ATP 結合部位をコードする(Bishop et al., 2000)。Cre
組換え酵素によるエクソン 3 の除去はフレームシフトを引き起こし、エクソン
5 に由来する配列中に未成熟終止コドンが生じる。Sik3flox マウスは標的位置に
正しい loxP 配列が組み込まれており、Sik3flox アレルが次世代に遺伝すること、
loxP 配列の挿入に使用したターゲティングベクターのゲノムへの組み込みがな
いことは確認済みである。Sik3flox マウスは、外見上から明らかな異常や、繁殖
異常を示さない。次の段階として、Sik3flox マウスと Cre 組換え酵素を発現す
るマウスとを交配し、組換えを引き起こした領域において正しく SIK3 の発現
が減少することの確認が必要である。

12

研究の目的
本研究では、内在性 SIK3 の睡眠覚醒制御における機能についてマウスを用
いて検討した。神経系の細胞において SIK3 を欠損させることにより、末梢の
SIK3 欠損による早期死亡や不健康の表現型を避け、睡眠覚醒を評価した。さ
らに、SIK3 を欠損させる神経細胞種や脳領域を限定することで、SIK3 を介し
た睡眠制御に関わる責任細胞集団の同定を目標とした。

13

研究方法
1. 実験動物
マウスは特に明記されない限り、24 時間の明暗周期(白色蛍光灯)、温度
23 ± 2 ℃、湿度 55 ± 5 %を維持した状態で飼育および実験を行った。餌と水は
自由に摂取可能である。脳波測定中は水の代わりに水ゲル(Napa Nectar、8
oz、Systems Engineering SE Lab Group Inc.)を使用した。動物実験は筑波
大学動物実験取扱規程(令和 2 年法人規程第 43 号)に準拠して行った。Cre ド
ライバーマウスは下記を使用した。

Camk2a-Cre(B6.Cg-Tg(Camk2a-cre)T29-1Stl/J、MGI:2177650)
Foxg1Cre(Foxg1tm1.1(cre)Ddmo、MGI: 5818697)
Foxd1Cre(B6;129S4-Foxd1tm1(GFP/cre)Amc/J、MGI: 4437927)
Nestin-Cre(B6.Cg-Tg(Nes-cre)1Kln/J、MGI: 2174506)
VgatCre(Slc32a1tm2(cre)Lowl/J、MGI:5141270)
Vglut1Cre(B6;129S-Slc17a7tm1.1(cre)Hze/J、MGI: 5507866)
Vglut2Cre(Slc17a6tm2(cre)Lowl/J、MGI:5141269)
Sik3flox マウスは、Mizuno et al., 2014 の手法を一部改変して 作製した
(Mizuno et al., 2014; Sato et al., 2018)。簡単には、C57BL/6 マウスゲノム
から Sik3 遺伝子のイントロン 2(1.1 kb)、エクソン 3 周辺配列(4.6 kb)、
イントロン 3(1.5 kb)のゲノム断片をクローニングし、ターゲティングベク
ターの PmeI-loxP-AscI-loxP-NotI カセットのそれぞれ PmeI、Asc1、NotI の
位置に挿入した。CRISPR design tool(crispr.mit.edu)を用いて、それぞれ
の loxP 挿入位置付近を標的とするガイド RNA 配列を設計し、eSpCas9(1.1)
(Addgene #71841)の BbsI 部位に挿入した。過排卵を誘導した C57BL/6N マ
ウスと C57BL/6J マウスとを交配し、受精した一細胞期胚を卵管から採取した。
線状化したターゲティングベクターと 2 種類のガイド RNA 発現ベクターを前
核に注入し、擬似妊娠した ICR マウスに移植した。F0 新生仔 62 匹中 2 匹で両
側 loxP 配列の挿入が確認でき、このうちターゲティングベクターのゲノムへの
挿入がない F0 マウスから Sik3flox マウスを確立した(浅野冬樹, 2017)。

14

2. 脳波・筋電図測定用電極の取り付け手術
Miyoshi et al., 2019 に従って実施した(Miyoshi et al., 2019)。8 から 12 週
齢の雄マウスに、イソフルラン麻酔下で脳波・筋電図測定用電極を取り付けた。
電極には、脳波測定用の 4 本の電極ピンと 2 本の筋電図測定用クーナーワイヤ
ー(Cooner wire #AS633)が付属する。 ...

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