リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「触媒的酸化反応を駆使したチロシン残基およびヒスチジン残基選択的タンパク質化学修飾研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

触媒的酸化反応を駆使したチロシン残基およびヒスチジン残基選択的タンパク質化学修飾研究

中根, 啓太 東北大学

2023.03.24

概要

博士論文(要約)
触媒的酸化反応を駆使したチロシン残基
およびヒスチジン残基選択的タンパク質化学修飾研究

令和 4 年度
東北大学大学院生命科学研究科
分子化学生物学専攻
中根

啓太

論文内容の要約

博士論文題目:
触媒的酸化反応を駆使したチロシン残基およびヒスチジン残基選択的タンパク質化学修飾研究
東北大学大学院生命科学研究科

分子化学生物学専攻

中根啓太

本博士論文は「触媒的酸化反応を駆使したチロシン残基およびヒスチジン残基選択的タンパク質化学修
飾研究」と題し、全 4 章より構成されている。本博士論文はタンパク質の化学修飾技術の創出を目的とし
て、触媒的酸化反応による高反応性化学種の発生法を駆使したチロシン残基およびヒスチジン残基の化学
修飾法の開発について述べたものである。さらに、独自に開発したタンパク質化学修飾反応を応用して、
ケミカルバイオロジー研究、および創薬科学の発展に資するタンパク質化学的機能化法の開発を行った。

タンパク質は、生体内において各々のタンパク質が多彩な機能を有し、生命現象を緻密かつダイナミッ
クに制御しているため、タンパク質に焦点を当てた生命現象を解明・制御を目的とする研究が盛んに行わ
れている。タンパク質が注目を集めている中、
「タンパク質修飾」技術が台頭し、生命現象の理解・制御・
応用に関する研究が推進されている。タンパク質修飾技術は、目的のタンパク質を遺伝子工学的に改変し
て融合タンパク質を作製する手法(遺伝子工学的手法)、および目的のタンパク質に対して有機化学反応
により機能団を導入する手法(タンパク質化学修飾技術)に大別される。遺伝子工学的な手法は、標的タ
ンパク質とタグタンパク質の融合タンパク質を用いることで、分子レベルでの標的タンパク質の挙動を追
跡できる。一方で、タンパク質と生体分子間の相互作用によるコミュニケーションは複雑であり、網羅的
な分子ネットワークを理解する上で、タンパク質を包括的に解析するプロテオミクス技術が発展してきた。
近年、生命現象を理解する第一歩となる有用なデータの取得手法として、タンパク質化学修飾とプロテオ
ミクス解析を組み合わせる手法の開発が盛んに行われている。一方で、生命科学研究において用いられて
いる主なタンパク質化学修飾法はリジン残基やシステイン残基を標的とした手法である。筆者はタンパク
質化学修飾法を拡充すべく、リジン残基、システイン残基以外のアミノ酸残基に対する残基選択性とタン
パク質機能化の実用性の両方を満たす新規手法の開発に取り組んだ。
第 1 章 1-3 節では、タンパク質化学修飾技術における「化学選択性」および「空間選択性」の観点から、
タンパク質修飾反応について体系的に論じた。「化学選択性」はタンパク質構造中の特定の官能基を選択
的に化学修飾する特徴であり、現状では求核性の高いリジン残基およびシステイン残基を標的とする手法
が多数報告されている。そのような背景の中、タンパク質修飾法を拡充すべく、従来法のリジン残基、シ
ステイン残基以外のアミノ酸残基に対する残基選択性とタンパク質機能化の実用性の両方を満たす新規
手法開発の必要性を述べた。「空間選択性」は特定空間を選択的に化学修飾する特徴であり、タンパク質
の部位選択的な機能化やプロテオミクス解析に応用されていることを述べた。1-4 節では、タンパク質修
飾反応を応用した創薬研究について概説した。1-5 節では、生命現象解明におけるタンパク質-生体分子
間相互作用解析の重要性について述べ、相互作用解析手法であるアフィニティークロマトグラフィーにつ
いて説明した。1-6 節ではタンパク質化学修飾技術を用いたタンパク質-生体分子間相互作用の解析手法

について概説した。

第 2 章では、一電子酸化触媒である laccase を用いたラジカル的チロシン残基修飾法の開発について述
べている。2-1 節ではチロシン残基の特徴について概説した。また、これまでに報告されているチロシン
残基修飾反応について体系的に説明し、それらが有する諸課題を指摘することで、本研究の意義を明らか
にした。2-2 節では、酸化酵素 laccase を一電子酸化触媒として用いた修飾剤選択的な一電子酸化により生
じるラジカル種を活用することで、温和な条件下で進行するラジカル的チロシン残基修飾反応の開発を行
った。修飾剤として N-Me luminol を選択し、チロシン残基を有するペプチドおよびタンパク質と laccase
共存させることで、チロシン残基修飾反応が進行することを明らかにした 1。2-3 節では、修飾剤構造の検
討を行うことで、最適な修飾剤を見出し、修飾反応の高効率化に成功した。本研究で見出した laccase を
用いたチロシン残基修飾反応は、これまでに報告されているチロシン残基修飾反応と比較して、温和な条
件下で、副反応を抑制しつつ高効率にチロシン残基選択的な反応であることを明らかにした。一方で、
laccase を用いた高効率チロシン残基修飾反応の反応メカニズムについて考察した。2-4 節では、laccase を
用いたチロシン残基修飾反応を生物活性ペプチドやタンパク質に適用し、本来の機能を損なわずに化学修
飾することに成功した。よって、本反応は副反応を抑制しつつ、チロシン残基を高効率に修飾することが
可能であり、ペプチドやタンパク質の機能化に有用な技術であることを示した。2-5 節では、タンパク質
夾雑試料である細胞破砕物に対して、laccase を用いたチロシン残基修飾反応を適用することで、表面露出
度の高いチロシン残基が選択的に修飾されることを明らかにした。

第 3 章では、一重項酸素(1O2)によるヒチジン残基の酸化を利用したヒスチジン残基の極性転換に基づ
く、ヒスチジン残基修飾反応法の開発について述べている。3-1 節では、従来のヒスチジン残基の化学修
飾においては、求電子剤を作用させることでヒスチジン残基の求核性を利用した手法が汎用されているこ
とを述べた。また、タンパク質中にはヒスチジン残基より求核性の高いアミノ酸残基が存在しているため、
求電子剤を活用するヒスチジン残基選択的な化学修飾は困難であることを指摘し、新たなヒスチジン残基
修飾戦略を研究する意義について述べた。3-2 節では、ヒスチジン残基を求電子的に活性化する極性転換
戦略を着想し、高反応性化学種である 1O2 を用いたヒスチジン残基の求電子的な活性化、および求核剤に
よる捕捉により新規ヒスチジン残基修飾反応の開発を行った。反応系中で 1O2 を発生させる光増感剤、求
核剤 1-methyl-4-arylrazole(MAUra)およびヒスチジン残基を有するペプチドの混合液に対して可視光照射
することで、ヒスチジン残基を化学修飾することに成功した 2。一方で、1O2 は生理条件下において、拡散
距離は~10 nm ともいわれている短寿命な高反応性化学種であることから、本研究で開発したヒスチジン
残基修飾反応の空間的な制御を着想した。光増感剤を用いた 1O2 の触媒的かつ局所的な発生制御により、
開発したヒスチジン残基修飾反応が光増感剤近傍 10 nm 以内で反応制御が可能であるか検証した。標的タ
ンパク質として GST-HaloTag を設定し、
HaloTag リガンドを連結した光増感剤、
および求核剤である MAUra
共存下で可視光照射することで、GST-HaloTag 中の HaloTag 部位が選択的に修飾されることを明らかにし
た。第 3 章 3-3 節では、光増感剤によるヒスチジン残基近接修飾反応を活用し、抗体構造中の Fc 領域選
択的な機能技術の開発に応用した。光増感剤である Ru 錯体と Fc 領域に結合するリガンドを同一固相上
に担持した反応場を用いることで、Fc 領域中のヒスチジン残基選択的な化学修飾に成功した。さらに、光

増感剤である Ru 錯体と Fc 領域に結合するリガンドを担持する固相としてアフィニティー担体を用いる
ことで、タンパク質夾雑試料に含まれる抗体を選択的に化学修飾することにも成功した。3-4 節では、近
赤外光で励起する光増感剤をアフィニティービーズに内封することで、近赤外光の照射で駆動するタンパ
ク質近接修飾反応を実現した。現在近赤外領域の波長を利用した触媒的タンパク質修飾技術の報告例はな
く、本論文においてはじめて実証した。また、光増感剤を内封したアフィニティービーズを利用したヒス
チジン残基近接修飾反応を活用し、低分子-タンパク質の相互作用解析手法に応用した。3-5 節では、光
増感剤に用いる分子の検討を行い、本研究で開発したヒスチジン残基修飾反応を選択的に触媒し、かつ分
子変換が容易な有機光触媒である BODIPY を見出した 3。3-6 節では、1O2 による酸化反応に立脚したヒス
チジン残基近接修飾反応を生細胞内で制御することを試みた。細胞透過性が高く、分子変換が容易な有機
光触媒である BODIPY を光触媒とすることで、ヒスチジン残基近接修飾反応を細胞内で実施した。核選択
的に修飾反応が進行するか検証するため、ヒストン H2B に HaloTag を融合したタンパク質を HaLa 細胞に
強制発現させた。その後、標的タンパク質近傍に BODIPY を配置するために、HaloTag リガンドを連結し
た BODIPY を処理することで、細胞内における特定空間においてヒスチジン残基近接修飾反応を制御す
ることにも成功した 4。

第 4 章では本論文を総括した。

【参考文献】

[1] Shinichi Sato, Keita Nakane, Hiroyuki Nakamura, “Laccase-Catalysed Tyrosine Click Reaction”, Org.
Biomol. Chem. 2020, 18, 3664.
[2] Keita Nakane, Shinichi Sato, Tatsuya Niwa, Michihiko Tsushima, Shusuke Tomoshige, Hideki Taguchi,
Minoru Ishikawa, Hiroyuki Nakamura, “Proximity Histidine Labeling by Umpolung Strategy Using Singlet
Oxygen”, J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 7726.
[3] Keita Nakane, Tatsuya Niwa, Michihiko Tsushima, Shusuke Tomoshige, Hideki Taguchi, Hiroyuki
Nakamura, Minoru Ishikawa, Shinichi Sato, “Proximity-Dependent Histidine Labelling Using BODIPY”,
ChemCatChem. 2022, 14, e202200077.
[4] Keita Nakane, Haruto Nagasawa, Chizu Fujimura, Eri Koyanagi, Shusuke Tomoshige, Minoru Ishikawa,
Shinichi Sato, “Switching of Photocatalytic Tyrosine/Histidine Labeling and Application to Photocatalytic
Proximity Labeling”, Int. J. Mol. Sci. 2022, 23, 11622. ...

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る