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ロジウム触媒を用いる無保護ペプチドジスルフィドの生成反応とリン酸エステル化・イオウ原子挿入反応の開発

福本, 昂平 東北大学

2023.03.24

概要

博士論文(要約)

ロジウム触媒を用いる無保護ペプチドジスルフィドの
生成反応とリン酸エステル化・イオウ原子挿入反応の開発

令和 4 年度
東北大学大学院薬学研究科
分子薬科学専攻
福本

昂平

序論
生命の維持に必要な代謝や細胞増殖などは、タンパク質が適切な形状を可逆的に形成
して機能することを基盤としている。タンパク質は特定の一次配列を持つポリアミドが
複雑に折りたたまれた構造を有しており、この高次構造を形成するにあたって、シスチ
ンジスルフィド S–S 結合とシステイン S–H 結合間の相互変換が大きな役割を担う。
従って、シスチンジスルフィド S–S 結合の生成と修飾はタンパク質の機能に大きな影
響を与え、多様な生物機能の発現に関わる。このような背景から、タンパク質ジスルフ
ィドを化学的に修飾することは新しい生物機能の開発のための重要な方法論になると
考えた。しかし、ジスルフィド S–S 結合は反応性のやや低い低極性共有結合であるた
めにタンパク質中で直接化学修飾した例はこれまでになく、新しい化学修飾法の開発が
望まれる。
近年、医農薬品および機能性材料の合成において、遷移金属触媒反応が繁用されてい
る。遷移金属触媒を利用すると、官能基・位置・立体選択的に比較的反応性の低い低極
性共有結合の活性化が行える。私は、ペプチドとタンパク質中におけるシスチンジスル
フィド S–S 結合を活性化する遷移金属触媒の開発を検討した。ここでは、1) 一般に親
水性官能基を保護して有機溶媒中で行われてきた遷移金属触媒反応を水中均一系もし
くは含水有機溶媒中で実施すること、2) 無保護のペプチドを直接利用できること、3)
化学修飾のための前処理を必要としないこと、4) 種々の官能基存在下、シスチン S–S
結合選択的に進行すること、5) 室温等の温和な条件下で速やかに反応する高い活性を
有すること、6) 酸性/塩基性条件で実施可能であることなどを満たす必要がある。本研
究では、これらの課題を解決して、ペプチドにおけるシスチンジスルフィド生成反応と
直接的な化学修飾反応を開発した。

第一章 水中均一系における無保護ペプチドチオールのロジウム触媒酸素酸化反応 1)
ペプチドチオ-ルの酸化はペプチドジスルフィドの合成に必須の変換反応である。無
保護のペプチドチオールに酸素雰囲気 (1 atm) 下、水中均一系で RhCl3・3H2O 触媒を
40 ℃ で作用させると、官能基を損なうことなく収率よく対応するペプチドジスルフィ
ドを与えた (Scheme 1)。本反応は RhCl3・3H2O 触媒の添加が必須である。多様なアミ
ノ酸残基 Gly、Ala、Val、Len、Ile、Phe、Ser、Tyr、Lys、Asp、Gln、His、Trp、および

Met を含むペプチドチオールに適用可能で、システインのみを選択的に酸化できる。
Scheme 1

本反応の反応機構は以下のように推定した
(Figure 1)。 RhCl3・3H2O 錯体と水からヘキサ
アクアロジウム錯体 [Rh(H2O)6]3+ が生じた後、
水 が 解 離 し て 錯 体 [Rh(H2O)5]3+ を 与 え る 。
[Rh(H2O)5]3+ に酸素及びプロトンが配位しハイ
ドロパーオキソロジウム種 Rh(H2O)5(OOH) を
与える。Rh(H2O)5(OOH) に二分子のチオールが
反応し、ペプチドスルフェン酸を与えると同時
にロジウム錯体 [Rh(H2O)5]3+ が再生する。スル
フェン酸は不安定な化合物であり、ペプチドチオールと速やかに反応してペプチドジス
ルフィドと水に変換される。なお、Rh(H2O)5(OOH) の生成は MALDI-TOF-MS 分析、
スルフェン酸の生成は 1,3-シクロヘキサンジオンを用いる捕捉実験で確認した。これま
でにチオールと酸素からスルフェン酸を生成する例は知られていない。
本反応は、1) 入手容易な RhCl3・3H2O 触媒の利用、2) 水中均一系、3) 酸化剤とし
て常圧の酸素を用いるため、酸化剤由来の副生成物の除去が不要、4) 多様なアミノ酸
残基が共存可能、6) 定量的な反応収率、7) 広範な液性 (pH 1~10) に適用可能などの特
徴を有する。ここで得られたペプチドジスルフィド類の多くは新規化合物である。加え
て、水中で反応する (H2O)5RhOOH の化学的性質にも興味が持たれる。RhCl3・3H2O か
ら水中で生じる活性種 Rh(H2O)6 (III) が水均一中系で無保護ペプチドジスルフィド類
の触媒合成反応に利用できることを示した。

第二章 水中均一系における無保護ペプチドジスルフィドのロジウム触媒的リン酸エス
テル化反応 2)
タンパク質は生体内でポリアミド構造を構築した後に、様々な翻訳後修飾を受けるこ
とで機能を発現する。例えば、セリン、チロシン、スレオニンの水酸基の可逆的なリン
酸化/脱リン酸化は細胞内シグナル伝達に関与しており、多くの疾病の発現に関与する。
このような背景から、ペプチドやタンパク質中のシスチンジスルフィド S–S 結合をチ
オリン酸化できれば、新規な機能発現を期待できると考えた。しかし、このような反応
例はなかった。私はテトラアルキルハイポジホスフェートを用いてチオリン酸エステル
化する触媒反応を開発した。
RhCl3・3H2O 触媒存在下、無保護の酸化型グルタチオンと水溶性テトラアルキルハイ
ポジホスフェート誘導体を反応させると、水中均一系でジスルフィドを効率的にチオリ
ン酸エステル化できた (Scheme 2)。本反応には RhCl3・3H2O 触媒の添加が必須である。
本反応には、1) 室温条件、2) 多様なアミノ酸残基の共存可能、3) 水中均一系反応、4)
水溶性テトラアルキルハイポジホスフェートの水中リン酸エステル化剤としての利用、
5) 低極性 S–S 結合と P–P 結合間の触媒的な切断交換反応などの特徴がある。
Scheme 2

第三章 無保護ペプチドジスルフィドのロジウム触媒的イオウ原子挿入反応 3)
イオウ原子が複数連結したペプチドポリスルフィド類は、シグナル伝達機能や抗酸化
機能を有する超イオウ化学種として近年注目されている。安定な有機ジスルフィドとは
異なり、有機ポリスルフィド (RSSnSR) は生細胞中で比較的不安定で、共存する求核試
薬、求電子試薬および還元/酸化剤と反応して、転移、組換え、伸長、 酸化・還元、分
解等を起こすことが知られている。従って、多様なペプチドポリスルフィド誘導体を合
成して化学的および生物学的特性を調べることは、生体内機能を明らかにする重要な方
法である。有機合成により、機能性ポリスルフィド化合物を大量かつ系統的に供給でき

ると考えられるが、効率的な合成法は知られていない。本研究で多様なペプチドポリス
ルフィド化合物群を触媒的に化学合成する効率的な方法を開発した。
RhH(PPh3)4 触媒と dppv 配位子存在下、無保護ペプチドジスルフィドと単体イオウを
含水溶媒中で反応させると、S–S 結合間にイオウ原子が挿入してポリスルフィド化合物
を効率的に与えることを見出した (Scheme 3)。本反応は、入手および取扱い容易な単体
イオウを利用できる利点がある。ペプチドトリスルフィドとテトラスルフィドは、逆相
カラムクロマトグラフィーによって容易に単離できた。ペプチド中のフェノール基、ヒ
ドロキシル基、スルフィド基、カルボキシ基、アミド基およびアミノ基の影響を受けず
に反応させることができる。本法は、様々なアミノ酸残基を含む鎖状および vasopressin
のような環状ペプチドに適用できた。ポリスルフィド化合物の化学的および生物学的研
究のために、多様なペプチドトリスルフィドとテトラスルフィド誘導体を提供できると
期待される。
Scheme 3

以上、本研究では水中均一系または含水溶媒系におけるペプチドジスルフィドのロジ
ウム触媒反応を検討した。その結果、酸素を用いる無保護ペプチド中におけるシスチン
ジスルフィド生成反応およびジスルフィドのチオリン酸エステル化反応とイオウ原子
挿入によるポリスルフィド化反応を開発した。多様な新規化学修飾ペプチド群の提供が
可能となった。

References
1) Arisawa, M.; Fukumoto, K.; Yamaguchi, M. ACS Catal. 2020, 10, 15060–15064.
2) Arisawa, M.; Fukumoto, K.; Yamaguchi, M. RSC Adv. 2020, 10, 13820–13823.
3) Fukumoto, K.; Yazaki, M.; Arisawa, M. Org. Lett. 2022, 24, 8176–8179. ...

参考文献

1) Arisawa, M.; Fukumoto, K.; Yamaguchi, M. ACS Catal. 2020, 10, 15060–15064.

2) Arisawa, M.; Fukumoto, K.; Yamaguchi, M. RSC Adv. 2020, 10, 13820–13823.

3) Fukumoto, K.; Yazaki, M.; Arisawa, M. Org. Lett. 2022, 24, 8176–8179.

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