SSEに伴う海面地殻変動の推定

概要

令和 4 年度

京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
SSE に伴う海面地殻変動の推定
An estimation of seafloor crustal deformation with SSE

京都大学理学研究科地球惑星科学専攻

地球物理学分野 伊藤喜宏研究室
博士 3 年 井上智裕

研究成果概要
本研究では、京都大学化学研究所スーパーコンピュータシステムを利用し、海面気圧、海
上風ベクトルを駆動力とした全球の順圧海洋モデル(Inazu et al., 2012)から全球の海洋速度
場を計算し、海底圧力計に含まれる海洋起源の非潮汐成分を計算した。本研究では、海底圧
力計に含まれる地殻変動（SSE）成分と海洋起源成分（潮汐＋非潮汐）を分離することで、地
殻変動成分を精度よく推定することを目的としている。分離するための手法として、(i) 順圧海
洋モデルの計算結果から得られる非潮汐成分を除去する、(ii)海底圧力の観測点間の差分を
とる、が提案されている。特に(ii)の手法では、観測点間の非潮汐成分を共通として仮定し差
分を計算するが、しばしばその仮定が問題視されてきた。本研究では、ニュージーランドヒクラ
ンギ沖に設置された全ての海底圧力計の記録の相関を計算し、等水深方向に海底圧力の類
似性が存在することを示した(Inoue et al., 2021)。また、Inazu et al. (2012)の海洋モデルを用い
ても同様の傾向が見られた。これらの圧力値に含まれる非潮汐成分の水深依存性は、南海ト
ラフに設置された海底圧力計においても、同様に観測された。特に、南海トラフにおいて、こ
の観測値に見られる非潮汐成分の相関を利用して、相対変動を計算し、断層モデルを推定し
た。

参考文献
Inazu, D., Hino, R., & Fujimoto, H. (2012). A global barotropic ocean model driven by synoptic
atmospheric disturbances for detecting seafloor vertical displacements from in situ ocean
bottom pressure measurements. Marine Geophysical Research, 33(2), 127–148.
https://doi.org/10.1007/s11001-012-9151-7
発表論文（謝辞なし）
Inoue, T., Ito, Y., Wallace, L. M., Yoshikawa, Y., Inazu, D., Garcia, E. S. M., et al. (2021).
Water Depth Dependence of Long‐Range Correlation in Nontidal Variations in Seafloor
Pressure. Geophysical Research Letters, 48(8). ...