書き出し
画像の“写真らしさ”に関する ある確率論的相転移現象について
概要
画像認識において,画像全体のうち意味のあるものとそうでないものの境界を見極めることは重要な問題である.本稿では準写真という「写真らしい画像」を定義することで,この問題への数学的アプローチを試みた.「写真らしさとは何か」という問いを数学的に定式化するために,depthという画像に対して実数値をとる関数を導入し,その漸近挙動を調べた.また,例において実際の写真が準写真であることを確かめた.
depth の概念は方体複体の 0 次パーシステントホモロジーの階数から着想を得ており,将来的に高次の階数を解析することでより精密な画像の分類が得られると期待できる.また,画像認識において,近年積極的に活用が進められている深層学習の学習データ選定への応用も期待できると考えている.本稿で画像認識における純粋数学の活用の 1 つのアプローチを提案したい.本稿は,[AS] の内容を証明や手法を含めてより詳しく論じたものである.