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大学・研究所にある論文を検索できる 「敗血症性血管障害における糖尿病モデルマウスの炎症応答およびグリコカリックス障害の超微形態学的検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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敗血症性血管障害における糖尿病モデルマウスの炎症応答およびグリコカリックス障害の超微形態学的検討

三瓶 想 東北大学

2021.09.24

概要

【背景】近年、感染症や生活習慣病などの病態として、微小循環障害が注目されている。微小循環を維持する血管は内皮細胞により支持されており、血管内皮細胞はその内腔側表面をグリコカリックスと呼ばれる糖タンパクの複合体によって覆われている。血管内皮グリコカリックスは多彩な機能を有し、微小循環の恒常性を保つ。しかし、その構造は脆弱で容易に傷害される。そのため、血管内皮グリコカリックスの障害は、さまざまな疾患や病態に影響を与える可能性がある。糖尿病患者では感染症が重症化し、敗血症に陥るリスクが高い。糖尿病および敗血症のいずれも、背景に血管内皮細胞障害を伴う微小循環障害を有しており、血管内皮グリコカリックス障害が関与している可能性がある。

これまで血管内皮グリコカリックスの可視化は困難とされていたが、申請者らはオリジナリティーの高い手法を用いて超微形態学的評価を可能とした。糖尿病における易感染性、および感染症重症化に関して、血管内皮グリコカリックス傷害を直接観察し、さらに血管内皮グリコカリックス障害の視点から検討した報告はない。

【目的】糖尿病における易感染性および感染症重症化と血管内皮グリコカリックス障害の関係を検討すること。

【方法】2 型糖尿病モデルマウスを用いて、リポ多糖 (LPS)による敗血症性血管炎における血管内皮グリコカリックス障害と炎症応答を評価し、転帰との関係を検討した。実験には 9-12 週齢の雄性糖尿病マウス C57BLKS/J Iar-+leprdb/leprdb(db/db)マウスを用い、Control を同腹仔の C57BLKS/J Iar -m+/+ leprdb(db/+)マウスとした。LPS 15 mg/kg 腹腔内投与による敗血症モデルを作成し、48 時間生存率を評価した。肺障害は Hematoxylin Eosin 染色による肺切片の組織病理学的スコアリング、炎症反応は肺組織への炎症細胞遊走および炎症性サイトカインである血清 IL-1βを経時的に評価した。血管内皮グリコカリックス傷害を定量化するため、グリコカリックスのコアタンパクである血清シンデカン-1 および肺のインテンシティスコアを計測した。また血管内皮グリコカリックスの合成能を quantitative real-time polymerase chain reaction (qRT-PCR)にて評価し、肺血管内皮グリコカリックスを超微形態学的に検討した。

【結果】48 時間生存率は、Control 75% (18/24)に対し、糖尿病マウス 0% ( 0/10)と有意差を認めた (P < 0.01)。肺の組織病理学的スコアリングでは、LPS 投与 24 時間後に糖尿病マウスで好中球浸潤および肺浮腫ともに障害を強く認めた(LPS 投与 24 時間後/好中球浸潤:Control 2.0±0.2、糖尿病マウス 3.0±0.2 (P=0.021);肺浮腫:Control 1.5±0.2、糖尿病マウス 2.0±0 (P=0.049))。また炎症反応は、糖尿病マウスで血清 IL-1β高値が遷延し(LPS 投与後 24 時間/Control:30.3±6.7 ng/mL、糖尿病マウス:248.7±85.7 ng/mL (P=0.029))、好中球などの炎症細胞の遊走が遅延し遷延した。血清シンデカン-1 は、糖尿病マウスで経時的に上昇した(LPS 投与後 0, 6, 12, 24 時間/Control:3.0±0.3 ng/mL, 7.7±0.8 ng/mL, 11.2±0.9 ng/mL, 7.2±1.4 ng/mL、糖尿病マウス:2.0±0.2 ng/mL, 11.3±1.8 ng/mL, 16.5±1.1 ng/mL*, 20.0±1.9 ng/mL*;*, P < 0.01 対 Control)。また肺のインテンシティスコアは、糖尿病マウスでは LPS 投与前から低下しており、投与後さらに低下した(LPS 投与前/Control:165.7±5.9、糖尿病マウス:78.6±5.6 (P < 0.01);LPS 投与 24 時間後/Control:69.0±5.8、糖尿病マウス:44.9±4.0 (P < 0.01))。超微形態学的検討においても、血管内皮グリコカリックスが糖尿病マウスで LPS 投与前から傷害され、投与後さらに損傷を受けた。また qRT-PCR により、糖尿病マウスの血管内皮グリコカリックスの合成能低下を認めた( Vcan : 0.76 (P=0.021), EXT1 : 0.77 (P=0.032), Csgalnact1 : 0.76 (P=0.022))。

【考察】本研究では、1) 糖尿病マウスでは敗血症発症前から血管内皮グリコカリックス障害があり、2) 敗血症性血管炎によりさらに障害され、3)敗血症による生存率が低下し、4) 肺への炎症細胞集積の遅延および遷延が生じることを明らかにした。糖尿病マウスでは、血管内皮機能障害のため血管内皮グリコカリックスの合成能が低下し、LPS 投与前から菲薄していたとものと思われる。さらに、血管内皮細胞が血管内腔に露出し、炎症反応が惹起されやすい環境となっていると考えられた。そのため、敗血症において血球との相互作用による血管内皮細胞傷害が生じ、炎症が誘導され遷延したことから微小循環障害に陥り、生存率低下に影響した可能性があると考えられた。

【結論】糖尿病マウスでは血管内皮グリコカリックスが菲薄化しており、敗血症性血管炎によってさらに障害された。また炎症細胞の遊走遅延および遷延が生じるとともに、高い死亡率を認めた。糖尿病患者においては、血管内皮グリコカリックス障害が感染症の転帰に影響する可能性がある。

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