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大学・研究所にある論文を検索できる 「BRD4/CHD4複合体による遺伝子発現制御機構の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

BRD4/CHD4複合体による遺伝子発現制御機構の解析

坂内, 千尋 東京大学 DOI:10.15083/0002007099

2023.03.24

概要

審 査 の 結 果 の 要 旨

氏 名

坂内 千尋

ヒストンアセチル化は遺伝子発現を制御する重要な機構の 1 つであり、アセチル基を導入する
ライター、消去するイレイサー、認識するリーダーによって制御されている。これらの機能の破
綻によりがんをはじめとする様々な疾患が引き起こされる。
アセチル化リーダータンパク質の 1 つである Bromodomain-containing protein 4 (BRD4)は
アセチル化リシンを認識するブロモドメイン及びタンパク質間相互作用を担う extra-terminal
(ET)ドメイン、転写伸長に関与する C 末端モチーフを含み、主に転写を正に制御する。複数のが
ん種で BRD4 が過剰発現しており、さらにその下流でがんドライバーである c-Myc の発現を上
昇させることでがんを促進することが知られている。BRD4 の欠損により腫瘍が縮小するという
報告などから BRD4 はがんの治療標的として注目されるようになり、BRD4 阻害剤の開発が行
われた結果、JQ1 をはじめとして、ブロモドメインを競合的に阻害するアセチル化リシン模倣型
阻害剤が合成された。これらは現在のところ様々ながんに対する臨床試験に進んでいるが、近年
になってアセチル化リシン模倣型阻害剤に抵抗性を示すがん細胞が存在することが見出された。
しかしながら、その詳細な分子メカニズムについては未だに不明であった。
以上の背景に基づき、本研究では BRD4 による転写制御機構の詳細を解明することにより
BRD4 阻害剤抵抗性の分子機構を解明することを試みた。申請者は BRD4 のドメインのうち詳
細な解析が進んでいなかった ET ドメインに注目し、質量分析法による解析から同定された結合
因子である chromodomain helicase DNA binding protein 4 (CHD4)との複合体が制御する遺伝子発現
及びその BRD4 阻害剤抵抗性への寄与について解析を行った。以下に本研究によって得られた新
たな知見をまとめる。

1. BRD4 は ET ドメインを介して CHD4 N 末端領域と結合する
2. BRD4/CHD4 複合体はオートファジー・アポトーシス・細胞周期進⾏の関連遺伝⼦群を負に制
御する
3. BRD4 ET ドメインにおける結合阻害によりオートファジー・アポトーシス・細胞周期停⽌
が引き起こされる
4. BRD4 ET ドメインにおける結合阻害により JQ1 抵抗性のがん細胞の⽣存・増殖が抑制される

BRD4 及び CHD4 の欠損変異体を用い、BRD4 ET ドメインにおいて CHD4 の N 末端領域と
結合することを示した。CHD4 は負の転写制御因子であることが知られていたことから
BRD4/CHD4 複合体が転写を負に制御する可能性が考えられたが、BRD4 ET ドメインを競合的
に阻害する murine leukemia virus (MLV)インテグラーゼの部分ペプチドを用いた BRD4 ET ド
メインにおける結合の阻害により、細胞周期停止およびアポトーシス、オートファジー促進に関
与する遺伝子の発現が上昇し、これらの現象が誘導されることを示した。さらに MLV 部分ペプ
チドにより HCT116 細胞の生存または増殖が抑制されることを示した。
その一方で、
JQ1 は MLV
部分ペプチドと同様の遺伝子群の発現を上昇させ、オートファジーを促進するものの、細胞周期
の停止およびアポトーシスは誘導しないことを示した。また JQ1 は HCT116 細胞の生存または
増殖を抑制せず、過去の HCT116 細胞が JQ1 抵抗性を示すという報告と合致した。このことか
ら、MLV 部分ペプチドが JQ1 抵抗性がん細胞の生存や増殖を抑制する可能性を提示した。
以上のように申請者は BRD4 ET ドメインにおける結合の阻害により細胞周期の停止およびア
ポトーシス、オートファジーの促進を介して JQ1 抵抗性がん細胞の生存および増殖が抑制され
ることを明らかにした。これは、ET ドメインの結合阻害が既存の BRD4 阻害剤に抵抗性を示す
がん細胞の新たな治療標的となることを示唆している。
以上より本論文は博士(薬科学)の学位請求論文として合格と認められる。

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