リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Early Blood Pressure Reduction by Intravenous Vasodilators Is Associated With Acute Kidney Injury in Patients With Hypertensive Acute Decompensated Heart」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Early Blood Pressure Reduction by Intravenous Vasodilators Is Associated With Acute Kidney Injury in Patients With Hypertensive Acute Decompensated Heart

荒尾, 嘉人 名古屋大学

2023.04.26

概要

主論文の要旨

Early Blood Pressure Reduction by Intravenous
Vasodilators Is Associated With Acute Kidney Injury in
Patients With Hypertensive Acute Decompensated Heart
高血圧性急性非代償性心不全における血管拡張薬による
早期の血圧低下と急性腎臓障害との関連性

名古屋大学大学院医学系研究科 総合医学専攻
病態内科学講座 循環器内科学分野
(指導:室原 豊明 教授)
荒尾

嘉人

【緒言】
高血圧性急性非代償性心不全(Acute decompensated heart failure: ADHF)の診療では、
急性期の症状改善のために血管拡張薬の静脈内投与による降圧が行われる。 一方で
過度な降圧は、腎血流量低下から急性腎障害(Acute kidney injury: AKI)を誘発するおそ
れがある。 従って ADHF 診療においては、降圧によって ADHF の症状を改善しつつ
も、過度な降圧による AKI を回避する必要がある。しかし、そのための最適な血圧管
理 方 法 は 分 か っ て い な い 。 本 研 究 の 目 的 は 、 高 血 圧 性 ADHF に お け る 収 縮 期 血 圧
(Systolic blood pressure: SBP)の変化と AKI 発生率との関連を明らかにすることである。
【対象および方法】
2012 年 1 月~2018 年 1 月に当院に入院した高血圧性 ADHF 症例 245 例を対象とし
た。ADHF の診断はフラミンガム基準に基づき行い、高血圧性 ADHF は入院時 SBP
>140mmHg の ADHF と定義した。
除外基準として、末期腎不全: Estimated glomerular filtration rate: eGFR<15mL/min/1.73m2、
急性冠症候群、入院時に機械的循環補助を要した症例、 孤立性右室不全を定めた。さ
らに本研究は治療介入による血圧低下と早期 AKI 発生率との関連に着目したため、病
院到着後 6 時間以内に静脈内投与を受けなかった症例も除外した。
AKI は、血清 Creatinine: Cr ≥0.3 mg/dL あるいは、 尿量 <0.5 mL/kg/時間と定義し
た。血清 Cr 値は到着時、24 時間後、48 時間後のデータを解析した。予後指標として、
院内死亡、入院期間、1年以内の全死亡、心血管死、予定されていない心不全入院を
調査した。
SBP 値は病院到着時(0 時間)、1.5 時間後、6 時間後、12 時間後、24 時間後、48 時
間後のデータを解析した。本研究では、到着後 6 時間以内における SBP の最大低下率
を SBP-fall として以下のように定義した。
SBP-fall(%)=[(0 時間後の SBP)-(6 時間以内の最低 SBP)]/(0 時間後の SBP)×100]
静注薬剤として、ループ利尿薬、硝酸薬、カルペリチド、カルシウム拮抗薬の使用
有無を調査した。
【結果】
高血圧性 ADHF 245 例の背景は、平均年齢 76 歳、女性 40%、来院時の平均 SBP
180mmHg、平均血清 Cr 値 1.21mg/dL だった。AKI 群(n=66)と Non-AKI 群(n=179)の
比較において New York Heart Association: NYHA 心機能分類、入院時 SBP 値、血清 Cr
値に統計学的な有意差は認めなかった。一方で AKI 群の SBP-fall は非 AKI 群のそれ
に比べて有意に大きかった(Table 1)。
最初の 6 時間以内に静脈内投与された血管拡張薬の比較では、AKI 群でカルペリチ
ドの使用割合が有意に高かった。(Table 2)
入院後 24 時間以内の SBP 値の変化率について、AKI 群の SBP は Non-AKI 群に比べ
有意に大きく低下していた(Figure 1)。

-1-

AKI の発生と関連する因子を多変量ロジスティック解析で探索したところ、SBP-fall
及 び カ ル ペ リ チ ド の 使 用 が AKI の 発 生 と 関 連 す る 独 立 し た 因 子 と し て 検 出 さ れ た
(Table 3)。SBP-fall を四分位で群分けし比較したところ、SBP-fall が大きい群ほど AKI
発生率が高いことが示された。一方で SBP-fall は院内死亡や在院日数には有意差は認
めなかった(Figure 2)。退院後 1 年間の転帰では AKI 群は心血管死と心不全の再入院
率が高い傾向にあった(Table 4)。
SBP-fall 0%を基準とし、AKI 発生との関連を調べたところ、AKI 発生のオッズ比
(Odds ratio: OR)との間に正の相関を認めた(Figure 3)
血 管 拡 張 薬 を 使 用 せ ず 利 尿 剤 の み で 治 療 し た 症 例 の AKI 発 生 オ ッ ズ 比 を 基 準
(OR=1)とした場合、 血管拡張薬の併用数の増加につれて SBP-fall が大きくなり、そ
れに伴って AKI 発生オッズ比も高くなることが示された(Figure 4)。
【考察】
本研究では、 高血圧性 ADHF の SBP-fall と AKI の発生について検討し、 以下に示
す 3 つの関連を明らかにした。第一に、 SBP-fall は独立して AKI 発生に関連する因子
だった。第二に、 SBP-fall は血管拡張薬の併用数に伴って大きくなった。第三に、 SBPfall は入院期間や院内死亡と関連していなかった。
高血圧性 ADHF の初期治療では心臓の後負荷を軽減し ADHF の症状を改善する目
的で血管拡張薬が使用される。一方で、正常血圧または低血圧の ADHF では急速な血
圧低下は心臓の後負荷を低減より組織低環流を惹起し、AKI のリスクになることが危
惧される。このため、本研究では来院時 SBP >140mmHg で定義される高血圧性 ADHF
のみを対象として、適切な降圧レベルを探索することを目的とした。しかしながら、
これら高血圧性 ADHF においても SBP-fall が大きい、つまり 6 時間以内の血圧降下が
大きいほど、AKI のオッズ比が高くなることが示された(Figure 3)。SBP-fall と AKI 発
生のオッズ比の間には正の相関があり、U 字型の関連がなかったことは、少なくとも
6 時間以内の初期治療において高血圧性 ADHF の"降圧目標"は存在せず、可能な限り
血圧を低下させないことが至適な血圧管理になる可能性を示唆している。
一方で、AKI を発症する ADHF 症例はそもそも循環動態が不安定な背景があり、そ
のために治療介入によって血圧が大きく変動していたと解釈されるかもしれない。し
かしながら、我々は血管拡張薬の併用数が多いほど SBP-fall が大きいことも明らかに
した(Figure 4)。これは、臨床医がより強く降圧しようとした結果、SBP-fall が大きく
なったことを示唆している。このことから、本研究の対象者においては、治療介入に
よる要因で SBP-fall が大きくなり、その結果 AKI を起こしている可能性があることが
示唆された。一方で ADHF の症状を速やかに改善するために積極的な降圧は許容され
るとの考えもあるかもしれない。しかし、本研究においては SBP-fall が大きいことは
院内死亡の低減や入院期間の短縮に繋がっていなかった(Figure 2)。
本研究結果は、高血圧性 ADHF において高血圧は治療介入点ではなく、病態の結果
であることを示していると考えられる。実際、本研究においてループ利尿薬単独投与

-2-

においても、血管拡張薬を使用せずに SBP-fall が 27.5%に達していた。これは、利尿
によって呼吸困難などのストレス要因の軽減されたことにより、過剰に賦活化されて
いた交感神経緊張が緩和されるなどの機序により、自然と至適な血圧に至った結果な
のかもしれない。
本研究の限界としては、 第一に観察研究であり、降圧を最小化することが AKI の
減少につながるかは検証できていない。第二に静脈内血管拡張薬の総投与量や総投与
時間は調査できておらず、これらが AKI のリスクとなるかは検証できない。第三に、
AKI 発生率の重要な決定要因である有効体液量の変化を検討することはできておらず、
今後のさらなる研究が望まれる。
【結語】
高血圧 ADHF 患者の最初 6 時間の急性期治療において、血管拡張薬の併用による積
極的な降圧は AKI の発生に関与していた。さらに、大幅な SBP 低下と院内転帰は関
連しなかった。高血圧性 ADHF 患者では、血圧降下のリスクとベネフィットを考慮す
る必要がある。

-3-

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る