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書き出し

2型糖尿病の日本人高齢者における脈圧と全死亡との関連

福永, 直子 名古屋大学

2023.05.16

概要

学位報告4

別紙4
報 告 番



















論文題目

2型糖尿病の日本人高齢者における
脈圧と全死亡との関連















論 文 内 容 の 要 旨
Ⅰ.背景
糖尿病患者の看護は、血糖管理に重点が置かれているが血圧管理も重要である。看護師は、日
常的に患者の血圧測定を実施し、高血圧の患者に対して、さまざまな支援を行なっている。し
か し な が ら 、 収 縮 期 血 圧 (Systolic Blood Pressure : SBP) と 拡 張 期 血 圧 (Diastolic Blood
Pressure:DBP)の引算で算出される脈圧は、あまり利用されていない。本研究の目的は、高齢
糖尿病患者の血圧管理を行う際、脈圧を用いることの根拠となる知見を提供し、看護の視点か
ら解釈し記述することである。

Ⅱ.方法
1.

調査対象者

2004 年 9 月に糖尿病を専門とする 3 医療機関の外来を受診し、日本糖尿病学会の 2 型糖尿病
診断基準を満たした 65 歳以上の外来患者。除外基準は、虚血性心疾患、脳血管疾患の既往、重
篤な心臓疾患、肝臓疾患、腎疾患、悪性腫瘍、手術予定者、予後不良の病気がある人、認知症、
要介護認定者、妊娠糖尿病、一型糖尿病、その他医師が研究に不適切と判断した人である。登
録時に、既往の確認と 12 誘導心電図による心血管疾患の評価を全員に行い、異常のある人も除
外した。
2.

データ収集

年齢、性別、血圧、血液検査値(HbA1c、空腹時血糖、総コレステロール[TC]、中性脂肪、高
密度リポ蛋白質コレステロール[HDL]、低密度リポ蛋白質コレステロール)を登録時に診療録
から収集した。各患者に対して主治医は他の患者と同様に治療を行った。血圧は、診察室で静
かに座った状態で、医師または看護師が 1〜2 分間隔で 2 回測定し、平均値を診療録に記録し

た。生死に関する情報も、診療録から取得した。
3.

フォローアップ

2004 年 9 月に 383 名を登録した。登録時血圧の記録がない人と登録後に受診がない人を除
き、357 名(平均年齢 74.9 歳、男性 175 名、女性 182 名、平均追跡期間 7.7 年)を解析対象とし、
2016 年 12 月までに 50 名の死亡を確認した。
4.

統計解析

脈圧は、SBP から DBP を引いて算出した。対象者を脈圧で4群に分類し、4 群間の性別の割合
の検定にはカイ二乗検定、年齢と血液検査値の差と傾向の検定に一元配置分散分析を用いた。
脈圧 4 群間の生存時間分析にカプランマイヤー法を用い、群間の比較にログランク検定を行な
った。Cox の比例ハザードモデルを用いて、脈圧の一番低い群を基準として、年齢と性で調整
した相対危険度(Relative Risk:RR)を算出した。さらに、調整因子として登録時 HbA1c、TC、
HDL を加えた RR を算出した。最後に、SBP を 2 群、DBP を 3 群に分類し、これらを組み合
わせで 6 群を作り、SBP と DBP の両方の値が一番低い群を基準として、Cox の比例ハザード
モデルを用いて RR を算出した。統計解析には IBM SPSS ver. 28.0 を使用した。有意水準は
両側 5%とした。
5.

倫理的配慮

本研究は、厚生労働科学研究(第 201021059B 号、第 201412012B 号)および日本医療研究
開発機構(第 16ek0210048h0002 号)が 2004 年から 2013 年に実施した研究の 2 型糖尿病
患者コホート研究の一部対象者に対して、2014 年から 2016 年の転帰を加えたものである。本
研究は、各医療機関の倫理審査委員会の承認と、名古屋大学医学系研究科生命倫理審査委員会
の承認(承認番号:2015-0283)を得ている。

Ⅲ. 結果
1.

脈圧の特性

脈圧が広いほど、平均年齢は有意に高い傾向にあった。SBP は脈圧と有意な正の関連、DBP は
有意な負の関連にあった。HDL は脈圧と有意な負の関連にあり、これらの関連は年齢と性で調
整しても観察された。
2.

脈圧の群別累積生存率

5 年経過時の累積生存率は、脈圧 55mmHg 未満、55mmHg 以上 65mmHg 未満、65mmHg 以
上 75mmHg 未満、75mmHg 以上の群順に、97.2%、92.3%、90.1%、86.9%であった。さらに、
10 年経過時の累積生存率は,同順に 94.1%,88.0%,75.6%,75.9%であった。脈圧4群間に
は有意差がみられた(p=0.012)
。また、脈圧を 65mmHg 未満と 65mmHg 以上の 2 群に分け
た場合にも、有意差がみられた(p=0.001)。年齢で調整しても同様の結果が観察された。
3.

脈圧4群における全死亡に対する相対危険度

共変量として考えた因子で調整後、脈圧 55mmHg 群を基準とした RR は、55mmHg 以上
65mmHg 未満、65mmHg 以上 75mmHg 未満、75mmHg 以上群でそれぞれ 1.77(95%信頼区

間[CI]
:0.59〜5.28)、2.66(95%CI:0.93〜7.56)
、3.23(95%CI:1.16-8.99)であった。RR
は脈圧が広くなるにつれて有意に高くなる傾向にあった。脈圧 65mmHg 未満群を基準とした
65mmHg 以上群の RR は 2.08(95%CI:1.11-3.92)であった。脈圧が 10mmHg 増加するごと
の RR は 1.19(95%CI:0.99-1.43)であり、19%のリスク上昇がみられたが、統計学的には
有意ではなかった。HbA1c の代わりに空腹時血糖で調整した場合も、脈圧と全死亡の間に有意
な正の関連がみられた。
4.

収縮期血圧と拡張期血圧、その組み合わせによる全死亡に対する相対危険度

SBP と DBP はともに単独では全死亡と有意な関連はみられなかった。SBP130mmHg 未満か
つ DBP 65mmHg 未満群を基準とした RR は、SBP130mmHg 以上かつ DBP 65mmHg 未満
群が 3.63(95%CI:1.20-11.0)と有意に高かった。統計学的には有意ではなかったが、
SBP130mmHg 未満かつ DBP80mmHg 以上群も高い RR(4.43 [95%CI:0.83-23.7])を示し
た。上記の多変量解析に調整因子として投入した HbA1c は,全死亡との間に有意な関連はみら
れなかった。また、HbA1c の代わりに空腹時血糖値を投入した場合も、空腹時血糖値と全死亡
率の間に有意な関連はみられなかった。

Ⅳ. 考察
我々の知る限り、本研究は高齢の糖尿病患者おいて脈圧と生命予後の関連を検討した初めての
研究である。高血圧ガイドラインでは、SBP と DBP の複合的な影響は考慮されていないが、
この集団において、SBP と DBP はともに単独では全死亡を予測しないが、脈圧が大きいほど
死亡リスクが高まることを明らかにした。さらに、SBP130mmHg 以上かつ DBP65mmHg 未
満の患者は、高い死亡リスクを有していた。
65 歳以上のみを対象とした先行研究においても、脈圧と全死亡の間に有意な関連が認められ、
本研究の結果は、先行研究の結果と一致していた。さらに、本研究における脈圧と全死亡との
関連は、先行研究で観察された関連よりも強かった。これは、本研究の対象者が、高齢かつ糖
尿病という脳心血管疾患のハイリスク患者であったことに起因すると思われる。
現在、脈圧を小さくすることを目的とした医学的介入方法が存在しない以上、脈圧の大きい糖
尿病高齢者に対しては、より念入りに生活習慣や生活環境の改善への支援を中心とした看護ケ
アを提供する必要がある。脈圧が 65mmHg 以上であれば、看護師は脳心血管事故を防ぐため
に、適切な生活環境を整備し、万が一に備え、本人・家族と普段から緊急時の対応についても
話し合っておくことが重要である。自覚症状がない、または認知機能が低下し、自身の体調不
良について他者に分かり易く訴えることができない糖尿病高齢者に対しても、ハイリスクアプ
ローチにより、命を救える可能性もある。
本研究には多くの限界がある。糖尿病患者の予後に影響を与える喫煙、飲酒、身体活動レベル
など生活習慣や肥満度が得られていない。また降圧剤などの使用状況や死因も把握できていな
い。対象者数も少なく、2型糖尿病の日本人高齢者人口を適切に代表していない可能性もある。
以上の限界を克服するためには、より多くの糖尿病患者、より幅広い年齢層での生活習慣や死

因の評価を含む更なる研究が求められる。
Ⅴ.結論
高齢の 2 型糖尿病患者において、脈圧が大きいほど全死亡のリスクが高かった。この知見は、
高齢の糖尿病患者のケアに携わる看護師をはじめとした医療従事者は、血糖値、SBP、DBP だ
けでなく、脈圧にも注意を払いながらケアを提供すべきことを示唆している。

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