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大学・研究所にある論文を検索できる 「炭化ケイ素由来多孔質炭素のナノ構造評価とキャパシタ電極材への応用」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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炭化ケイ素由来多孔質炭素のナノ構造評価とキャパシタ電極材への応用

斎藤, 崇広 サイトウ, タカヒロ Saito, Takahiro 群馬大学

2020.03.24

概要

環境負荷の低減や、エネルギーの効率的な利用のため、電気二重層キャパシタ(EDLC: Electric double layer capacitor)やリチウムイオン電池等の蓄電デバイスの需要が高まっている。EDLC は二次電池と比べ、優れた出力特性を有しており長寿命である一方、容量特性に課題がある。これら EDLC の特性は、電極材である多孔質炭素材料のナノ構造に大きく依存する。近年、Chmiola らは炭化物由来多孔質炭素(CDC: Carbide derived porous carbon)と呼ばれる平均細孔幅が 1 nm 以下の多孔質炭素材料を EDLC の電極材へ適用することで、表面積当たりの容量(面積比容量)が特異的に増加する現象を報告した(Chmiola et al., Science 2006)。従来から使われている活性炭やナノカーボンを用いる EDLC ではここまでの面積比容量を実現することはできないため、高い面積比容量は CDC の優れた特徴と言える。しかしながら、得られる蓄電性能に対して製造コストが見合わない等の理由から、CDC は商業ベースで広く使用されるに至っておらず、工業化に向けていまだに多くの課題が残されている。そこで本研究では、CDC を用いる EDLC の高性能化と、CDC の安価な製造方法の確立を目的とした。

本論文は全 7 章で構成される。
第 1 章では、序論として背景、EDLC や CDC の概要、および EDLC 電極材としての CDC の課題と、本研究の目的に関して記載した。

第 2 章では、各種 CDC のナノ構造について評価した。炭化チタンや炭化アルミニウム由来の多孔質炭素では、塩素処理温度が 1000℃から 1400℃へ上昇するにつれて細孔構造や結晶構造が変化した。一方、炭化ケイ素由来の多孔質炭素(SiC-CDC)では、塩素処理温度 1000~1400℃の範囲において細孔構造や結晶構造がほとんど変化せず、熱的な安定性が高いことを確認した。

第 3 章では、構造の熱的安定性が高く、原料が比較的安価かつ入手が容易な SiC-CDC に対して水蒸気賦活を実施し、賦活後の細孔構造の変化について検討した。水蒸気賦活により、比表面積は 1300 m2 g-1 程度から最大で 2000 m2 g-1 程度まで増加した。また、SiC- CDC の塩素処理温度を変えることで、その後の賦活処理で形成されるミクロ孔とメソ孔の割合を制御できることを見出した。特に、1100℃の低温で塩素処理を施した SiC-CDC は、より高温で塩素処理を施した SiC-CDC や市販の EDLC 用電極材と比べ、ミクロ孔の割合が多く、平均細孔幅が狭くなる傾向にあることを確認した。このように、製造条件によって SiC-CDC の特徴である平均細孔幅の狭さを維持したまま比表面積を増加させることが可能であることを明らかにした。

第 4 章では、第 3 章で得られた SiC-CDC の EDLC 用電極材としての特性を評価した。賦活処理により比表面積を 1900 m2g-1 まで拡大したSiC-CDC をEDLC 電極材へ適用することで、市販の EDLC 用活性炭に匹敵する出力特性を維持しつつ、容量特性、長期信頼性に優れる EDLC が実現可能であることを見出した。

第 5 章では、キャパシタの更なる高容量化を図るべく、SiC-CDC をリチウムイオンキャパシタ(LIC)の電極材へ適用した。加えて、SiC-CDC を事前に熱処理することで表面官能基を除去し、高電圧印加時の耐久性向上も検討した。水蒸気賦活を施した SiC-CDC を 1400℃で熱処理することで、表面官能基量は 0.26 mmol g-1 から 0.01 mmol g-1 へ低減した。この場合の比表面積減少率は約 10%で YP50F の 20%より小さく、SiC-CDC の細孔が収縮し難いことを確認した。続いて、1400℃で熱処理した SiC-CDC を LIC の正極材に適用し、温度 60℃、セル電圧 4.0 V のフロート耐久試験を実施した。1400℃で熱処理した SiC-CDC のフロート試験前の直流抵抗は 2.1 Ωであり、熱処理なしの SiC-CDC と同程度であった。一方、1000 時間のフロート試験を実施した後の直流抵抗は、熱処理なしの SiC- CDC は 10.8 Ωであったが、1400℃で熱処理した SiC-CDC は 5.8 Ωであり、抵抗増加が抑制されていることを確認した。表面官能基を除去した効果と推察され、熱処理を施した SiC-CDC は高電圧な LIC の正極材として有望と言える。

第 6 章では、CDC の製造コストを低減する手法の一つとして、農業廃棄物であるもみ殻を原料に SiC-CDC を調製した。もみ殻炭を 1500℃以上のヘリウム雰囲気中で熱処理して SiC を調製した後、1100℃で塩素処理を行いもみ殻系の SiC-CDC を得た。得られた SiC- CDC の比表面積は 1060 m2 g-1 で、第 3 章で調製した賦活なしの α 型の SiC-CDC の比表面積である 1330 m2 g-1 より 20%程度小さいことを確認した。これらの SiC-CDC の EDLC電極材としての特性を評価した。その結果、どちらの SiC-CDC も表面積比容量は 2.0 μF cm-2 程度であり、市販の EDLC 電極材である YP50F の 1.7 μF cm-2 より高いことを確認した。これらの SiC-CDC は賦活処理を実施していないが、もみ殻系の SiC-CDC は α-SiC- CDC より出力特性が格段に改善しており、水蒸気賦活された YP50F に匹敵する特性を示した。最後に、もみ殻系の SiC-CDC と既報のプロセスを組み合わせた循環型の製造プロセスについて提案した。本手法を用いることで、低コストで環境負荷が小さく、出力特性に優れるキャパシタ電極用の SiC-CDC が製造可能と考えられる。

第 7 章にはまとめと今後の展開について記載し、本研究を総括した。

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