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書き出し

離散モース理論の精密化による配置空間のモデルの構築

玉木, 大 信州大学

2021.03.01

概要

1版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
令和

元 年

6 月 12 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 基盤研究(C)(一般)
研究期間: 2015 ∼ 2018
課題番号: 15K04870
研究課題名(和文)離散モース理論の精密化による配置空間のモデルの構築

研究課題名(英文)Construction of models for configurations spaces by refinements of discrete
Morse theory
研究代表者
玉木 大(Tamaki, Dai)
信州大学・学術研究院理学系・教授

研究者番号:10252058
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

3,500,000 円

研究成果の概要(和文):有限正則CW複体に対しては, 離散モース理論というモース理論の類似が成り立つこと
が1990年代から知られていたが, 本研究では, まずその理論を小圏の分類空間を用いて精密化した。具体的に
は, まず有限正則CW複体 X 上の離散モース関数fに対し, Formanによる離散勾配ベクトル場の概念を一般化する
f のflow pathという概念を導入した。そして f の臨界胞体を対象とし, flow pathを射とする小圏 C(f) を構
成した。この小圏の射の集合には順序関係が定義され, それによって C(f) は2圏になる。主結果は, 元の X が
その分類空間として復元できることである。

研究成果の学術的意義や社会的意義
本研究は, 連続あるいは滑らかな対象を離散的対象で置き換えることにより, 組み合せ論的手法を適用できるよ
うにする, という大きな研究の流れの一部と考えることができる。本研究の主結果は, Morse理論の離散化に関
することであるが, 元になったMorse理論として, Cohen-Jones-SegalによるFloer理論への応用を念頭に置いて
導入されたものを用いている。その完全な離散化が得られると同時に, 勾配ベクトル場の離散化としてFormanが
提案したものよりずっと精密なものが得られた。この手法は, 今後, 様々な離散化に応用できることが期待され
る。
研究成果の概要(英文):A discrete version of Morse theory, called discrete Morse theory, has been
developed for finite regular CW complexes since 1990's. We extend and refine discrete Morse theory
by using classifying spaces of small categories. More concretely, we first introduced the notion of
flow path for a discrete Morse function f on a finite regular CW complex X, which generalizes that
of gradient vector field due to Forman. And then we constructed a category C(f) whose objects are
critical cells of f and whose morphisms are flow paths. The set of flow paths can be made into a
partially ordered set in such a way that C(f) becomes a category enriched over the category of
posets. The main result is that the original space X can be recovered from the discrete Morse
function f as the classifying space of this category C(f).

研究分野: 位相幾何学
キーワード: 小圏 分類空間 Morse理論



式 C−19、F−19−1、Z−19、CK−19(共通)

1.研究開始当初の背景
本研究の動機は, 配置空間の組み合せ論的モデルとして, 従来知られているものより効率の
良いものを見付けることだった。位相空間 X の n 点配置空間とは, 互いに異なる X の n 個の点
の集合を, Xn の部分空間と考えたものである。X がユークリッド空間の場合は, Salvetti 複体
と呼ばれる組み合わせ論的に構成された単体的複体により配置空間のホモトピー型が表される
ことが知られている。これらの手法をユークリッド空間以外の空間の配置空間に一般化するた
めに, 本研究開始前に以下の研究を行なった:
(1) グラフ, すなわち 1 次元 CW 複体の配置空間の組み合せ論的モデルの構築
(2) 球面の配置空間のホモトピー型の研究
(3) 重心超平面配置 (center of mass hyperplane arrangement) の Salvetti 複体の構造の研

(4) 実超平面配置から得られる複素超平面配置の補集合の分割と CW 複体の共通の一般化で
ある cellular stratified space の概念の導入と, Salvetti 複体の構成の cellular stratified
space への一般化
一方, Salvetti 複体を研究する手法として離散モース理論が有効であることが, Salvetti 氏や
その共同研究者の研究により知られている。Salvetti 複体の配置空間への一般化である組み合
せ論的モデルが構成されたら, それに対し離散モース理論を適用することにより, 配置空間の
情報が得られることが期待される。離散モース理論について, 従来知られていたことは以下の
通りである:
(5) 正則有限 CW 複体 X 上の離散モース関数 f から, その臨界胞体のみを胞体として持つ CW
複体 Xf で X とホモトピー同値であるものの構成
(6) 離散モース関数を用いた勾配ベクトル場の定義
(7) Xf の胞体的鎖複体の境界準同型の, 離散勾配ベクトル場を用いた記述
このように Xf のホモロジーは離散モース関数の情報による記述が知られていた, そのホモトピ
ー型の離散モース関数による直接的な記述は知られていなかった。
2.研究の目的
研究開始当初の目的は次の 2 つであった:
高次元の CW 複体 X に対し, その配置空間の組合せ論的モデルを cellular stratified
space の理論を用いて構成する。その際に, 既に知られている超平面配置の Salvetti 複体
の構成と 1 次元 CW 複体に対する構成の一般化になるようなモデルを構成する。
(2) 離散モース理論における Xf の構成は, 次元が低い胞体から順番に臨界胞体を貼り付けて
いくものであり, f から直接構成するものではなかった。Xf のホモロジーは f の組み合せ論
的情報を用いた離散勾配ベクトル場を用いて記述されているが, そのホモトピー型を f か
ら直接構成する方法は知られていなかった。そこで, Xf の構成を見直し, f から直接構成す
る。
(1)

その後, 研究の過程で離散モース理論の精密化は様々な他の分野と関連があることが分か
ってきた。また, cellular stratified space の理論もより精密化する必要が出てきた。そこで次
の 2 つを新たに目的として追加した:
(3) 離散モース理論で構成された CW 複体 Xf の上に cellular stratified space の構造を構成す
る。そのために cellular stratified space の理論を精密化する。
(4) 一般の stratified space に対し定義される exit-path category の構造を cellular stratified
space の場合に調べる。特に離散モース理論から得られる cellular stratified space に対
し, その構造を調べる。
3.研究の方法
本研究は, 当初配置空間のモデルを構成するグループと離散モース理論の精密化を行なう
2 つのグループにより行なうことが計画された。その後 cellular stratified space 理論の精
密化を行なうグループができ, 3 つのグループによる研究となった。それぞれのグループで行
なった研究の方法は以下の通りである:
(1) 配置空間グループでは, 主に具体的な CW 複体の cellular stratification を構成し, そ
の構造を調べることを行なった。最も基本的なものは 2 次元球面であり, その極小胞体分
割と極小正則胞体分割, そして立方体による胞体分割について, cylindrically normal
cellular stratified space になるかどうか, そしてなる場合はその face category が
何か, を調べた。
(2) 離散モース理論グループでは, Cohen-Jones-Segal の Morse 理論の類似がどの程度成り立
つかを調べた。そのために, 以下を考察した:
① 離散モース関数 f からの勾配ベクトル場の離散的類似の定義

② 臨界胞体を対象とし勾配ベクトル場におけるフローを射とする位相圏 C(f)の定義
③ C(f) の分類空間と元の CW 複体 X のホモトピー型の比較
(3) cellular stratified space グループでは,cylindrically normal cellular stratified
space X の face category C(X)と stratified space としての exit-path category Exit(X)
の比較を行なった。そのために, まず Exit(X)が∞圏になるための条件を調べた。
4.研究成果
研究の方法で述べた 3 つのグループそれぞれについて得られた研究成果は以下の通りであ
る:
(1) 一般に CW 複体 X に対し, その胞体分割により Xn の胞体分割, よって cellular
stratification が得られる。k 次元胞体 e について en をユークリッド空間 Rnk と同一視す
ると, そこにユークリッド空間の配置空間 Confn(Rk)を stratified subspace として含む
stratification が入る。これを用いて Xn に配置空間 Confn(X)を stratified subspace と
し て 含 む stratification を 定 義 す る こ と が で き る 。 よ っ て 配 置 空 間 Confn(X) の
stratification が得られる。これは cellular stratification である。問題は, これが
face category を 定 義 で き る よ う な 良 い cellular stratification, す な わ ち
cylindrically normal cellular stratification であるかである。配置空間グループで
は, ユークリッド空間の次に単純な球面の配置空間について, 球面の極小胞体分割の場
合にその構造を調べた。その結果,既に 2 次元球面の場合で n=3 のときに, この
stratification が cylindrically normal ではないことが分かった。これにより, 配置空
間の場合には, face category の分類空間としてホモトピー型を捉えるのではなく, 別の
方法でホモトピー型を復元する必要があることが分かった。
(2) 離散モース理論グループでは, Cohen-Jones-Segal のモース理論の離散版を完成させるこ
とに成功した。具体的に得られたことは以下の通りである:
① 有限正則 CW 複体 X 上 の離散モース関数に対し, 忠実性 (faithful) の概念を導入
し, 任意の離散モース関数が忠実なものに取り替えられることを示した。
② 忠実な離散モース関数に付随する reduced flow path の概念を導入し, 臨界胞体を
対象とし reduced flow path を射とする小圏 C(f) を構成した。
③ reduced flow path の集合 FP(f) に順序を定義し, FP(f) が順序集合となることを
示した。
④ その順序を 用い C(f) が 2 圏になることを示した。
⑤ FP(f) を 2 次の射が自明なものからなる 2 圏とみなし, FP(f) から C(f) へ colax
functor τ を構成した。
⑥ τが分類空間の間のホモトピー同値を誘導することを示した。
⑦ FP(f) を用いて stable subdivision と呼ばれる X の胞体分割の細分 Sd(f) を構成
した。
⑧ F(Sd(f)) と FP(f) が poset として同型になることを示した。以上のことを合せる
ことにより, X と C(f)の 2 圏としての分類空間 B2C(f)がホモトピー同値であること
が示された。
⑨ 最 後 に , B2C(f) に f の 臨 界 胞 体 に 1 対 1 に 対 応 す る 分 割 を 定 義 し , そ れ が
cylindrically normal stellar stratified space になることを示した。従来のモ
ース理論では, 胞体による分割を用いたが, ここでは星状体による分割 (stellar
stratification) が本質であることが重要である。
以 上 の 結 果 は , Vidit Nanda 氏 と 田 中 康 平 氏 と の 共 同 研 究 で あ り , Advances in
Mathematics に論文として発表された。
(3) Cellular stratified space グループでは, cellular stratified space やその元になっ
ている stratified space の性質を調べた。得られた結果は以下の通りである:
① Stratification, すなわち空間の分割は古くから特異点の理論の研究者により研究
されていた。一方で, 単体的複体や CW 複体も重要な分割の例である。この 2 種類の
分割を統一して扱うためには, 特異点の理論で stratification に対して仮定され
ている様々な条件をできる限り排除する必要がある。そこで, 位相空間 X 上の
stratification を poset P への写像π:X → P として定義し, この写像に対する次
の条件の間の関係を考察した:
(ア) π が連続
(イ) π が開写像
(ウ) 任意の μ,λ∈P に対し, π-1(μ)⊂π-1(λ)とμ≤
λが同値
(エ) 任意の μ,λ∈P に対し, π-1(μ)とπ-1(λ)の閉包が交わるならば, π-1(μ)
⊂π-1(λ)
(オ) 任意の P の閉部分集合 C に対し, π-1(λ) の閉包のλ∈C に関する和集合は閉
集合
これらについて以下のことを証明した:

(ア)の条件の下で, (イ)と(ウ)は同値である。


(ア)と(ウ)から(エ)が従う。

(ウ), (エ), (オ)から(ア)が従う。
② 次に cylindrically normal cellular stratified space X に付随する 2 種類の圏, face
category C(X) と exit-path category Exit(X) を比較するために, Exit(X)が何時
∞圏になるかを調べた。一般に Exit(X)は X の特異単体的集合 S(X) の単体的部分
集合として定義されるが, それを圏として扱うためには, 弱 Kan 拡大の条件をみた
すことを示す必要がある。そこで, cyclindrically normal cellular stratified
space X に対し, X と stratified space としてホモトピー同値な BC(X)について, そ
の Exit(BC(X))が弱 Kan 拡大の条件をみたすこと, よって∞圏になることを示した。
③ 上の結果は, より一般の非輪状位相圏 C の分類空間 BC に対して証明された。その仮
定 で , 非 輪 状 位 相 圏 の 分 類 空 間 に 対 し て は cylindrically normal stellar
stratified space の構造が付随し, その face category が元の圏 C と同型になるこ
とが分かった。これにより, 良く知られている CW poset と呼ばれる種類の poset と
正則 CW 複体の対応が非輪状位相圏と cylindrically normal stellar complex の間
の対応に拡張されたことになる。
5.主な発表論文等
〔雑誌論文〕
(計 3 件)





Dai Tamaki and Hiro Lee Tanaka, Stellar stratifications on classifying spaces. In:
Singh M., Song Y., Wu J. (eds) Algebraic Topology and Related Topics. Trends in
Mathematics.
Birkhauser,
Singapore,
pp.287-313,
2019.
査 読 有 .
DOI:10.1007/978-981-13-5742-8_15
Vidit Nanda, Dai Tamaki, and Kohei Tanaka, Discrete Morse theory and classifying
spaces. Adv. Math. 340 (2018), 723-790, 2018. 査読有 DOI:10.1016/j.aim.2018.10.016
Dai Tamaki. Cellular stratified spaces, Combinatorial and Toric Homotopy:
Introductory Lectures, vol.35, Lecure Notes Series, Institute for Mathematical
Sciences, National University of Singapore, pp.305-435, 2018. 査 読 有
DOI:10.1142/9789813226579_0006

〔学会発表〕
(計 11 件)














Dai Tamaki, Stratifications on classifying spaces of acyclic categories, Mapping
Spaces in Algebraic Topology (京都大学理学研究科, 2018 年 8 月 30 日).
Dai Tamaki, Functorial discrete Morse theory, Braid Groups, Configuration Spaces,
and Homotopy Theory (Federal University of Bahia, Salvador, Brazil, 2018 年 7 月
25 日).
Dai Tamaki, Stratifications on classifying spaces of categories, 7th East Asian
Conference on Algebraic Topology (IISER, Mohali, India, 2017 年 12 月 3 日)
Dai Tamaki, Combinatorial gradient flows on cell complexes, 第 12 回 鹿児島 代数・
解析・幾何学セミナー (鹿児島大学理学部, 2017 年 2 月 15 日)
Dai Tamaki, A combinatorial model for graph braid groups, The 2nd Mini Workshop on
Knot Theory (IBS Center for Geometry and Physics, Pohang, 韓国, 2016 年 12 月 16
日).
Dai Tamaki, Cellular stratified spaces I, II, III, (IBS Center for Geometry and
Physics, Pohang, 韓国, 2016 年 12 月 13, 14, 15 日)
Dai Tamaki, An introduction to directed homotopy theory, 代数, 論理, 幾何と情報
科学研究集会 (信州大学, 2016 年 8 月 28 日)
Dai Tamaki, 小圏の分類空間とその応用, 第 16 回 JMO 夏季セミナー (ヴィラ千ヶ滝, 2016
年 8 月 23 日)
Dai Tamaki, Configuration spaces and homotopy theory, 日本数学会年会特別講演 (筑
波大学, 2016 年 3 月 18 日)
Dai Tamaki, Discrete Morse Theory and classifying spaces of 2-categories, Algebraic
topology from combinatorial viewpoint (子規記念会館, 2015 年 11 月 1 日)
Dai Tamaki, Discrete Morse theory and classifying spaces, Braids, Configuration
Spaces, and Quantum Topology (Graduate School of Mathematical Sciences, The
University of Tokyo, 2015 年 9 月 10 日).

〔図書〕
(計 0 件)
〔産業財産権〕

○出願状況(計 0 件)
名称:
発明者:
権利者:
種類:
番号:
出願年:
国内外の別:
○取得状況(計 0 件)
名称:
発明者:
権利者:
種類:
番号:
取得年:
国内外の別:
〔その他〕
ホームページ等
http://pantodon.shinshu-u.ac.jp/topology/literature/
6.研究組織
(1)研究分担者 なし
※科研費による研究は、研究者の自覚と責任において実施するものです。そのため、研究の実施や研究成果の公表等に
ついては、国の要請等に基づくものではなく、その研究成果に関する見解や責任は、研究者個人に帰属されます。 ...

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