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書き出し

ゴレンシュタイン空間上で展開される導来ストリングトポロジーの研究

栗林, 勝彦 信州大学

2020.03.05

概要

1版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
平成 30 年

6 月 22 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 基盤研究(B)(一般)
研究期間: 2013 ∼ 2017
課題番号: 25287008
研究課題名(和文)ゴレンシュタイン空間上で展開される導来ストリングトポロジーの研究

研究課題名(英文)Studies on derived string topology developed on Gorenstein spaces

研究代表者
栗林 勝彦(Kuribayashi, Katsuhiko)
信州大学・学術研究院理学系・教授

研究者番号:40249751
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

4,300,000 円

研究成果の概要(和文):本研究の目的は,Chas-Sullivan によるストリングトポロジーを導来圏の観点から考
察し,同伴する2次元位相的場の理論に現れる作用素の性質の解明と,具体的計算を進めることである。研究成
果として,ある Gorenstein 空間のループコホモロジー上の双対ループ(余)積を,シフト型 Eilenberg-Moore
スペクトル系列を用いて決定した。また,Chataur-Menichi により導入された分類空間のループホモロジーの
Batalin-Vilkovisky 代数構造を,ホモロジー的共形場理論に現れるプロップの「符号問題」を解くことで,次
数付きの理論として決定し完成させた。

研究成果の概要(英文):We have investigated string topology initiated by Chas and Sullivan from a
derived categorical point of view. In particular, the duals to the loop (co)products on the loop
cohomology of Gorenstein spaces have been considered by using the torsion functor in appropriate
derived categories on singular cochain algebras. We see that the Eilenberg-Moore spectral sequence
converging to the relative loop homology works well in determining explicitly the loop homology of a
homogeneous space. The second result concerns with string topology on classifying spaces in the
sense of Chataur and Menichi. The Batalin-Vilkovisky algebra structure on the loop cohomology of the
space is determined provided the cohomology of the given classifying space is isomorphic to a
polynomial algebra. Surprisingly, in a more general case, the computation allows us to solve
so-called the ``sign issue" on the prop which gives rise to homological conformal field theory on
the loop homology on classifying spaces.

研究分野: 幾何学
キーワード: ストリングトポロジー ループ空間 位相的場の理論 分類空間 Eilenberg-Moore スペクトル系列 
加群微分子

様 式 C−19、F−19−1、Z−19、CK−19(共通)
1.研究開始当初の背景
1990 年代後半,Chas-Sullivan により創
始されたストリングトポロジーは, 多様体の
ループ空間のホモロジー (以下,ループホモ
ロジー) に様々な代数構造をもたらした。今
日,そのホモロジー上には2次元位相的量子
場理論 (TQFT) やホモロジー的共形場理論
(HCFT) 構造が見出され,ループホモロジー
の持つ豊かな情報に多くの研究者は魅了さ
れている。その創成期においては,向きづけ
られた閉多様体 M に対して, 自由ループ空
間 LM (一次元球面から M への連続写像がつ
くる位相空間) のホモロジー上に可換な結合
的積, Chas-Sullivan ループ積が定義された。
この積を定置ループに制限する場合は,M の
ホモロジー上の交叉積を与え,また基点付き
ループ空間への制限によりそのホロジー上
の Pontryagin 積が得られる。したがって,
ループ積は交叉積と Pontryagin 積の融合で
あるといえる。さらに,この積は TQFT の立
場からは,ペア・オブ・パンツ・コボルディ
ズムから得られる作用素として解釈される,
TQFT に組み込まれる。
2000 年 代 初 頭 , Cohen-Jones に よ り
Thom 複体と潰し写像を用いたループ積の
ホモトピー論的解釈が与えられた。これによ
り向き付けられた閉多様体や Borel 空間上
での Thom 理論によるループ積の系統的構
成方法が明確になった。また同時期,Félix,
Thomas は上述のストリングトポロジーの
適用範囲を向き付けられた閉多様体の世界
から Gorenstein 空間の世界へと広げた。位
相空間 X の Gorenstein 性は,X の体 K 係
数の特異コチェイン代数上の導来圏におい
て,K から X のコチェイン複体への
Home-set が一次元ベクトル空間となること
で定義される。向き付けられた閉多様体はそ
の Poincaré 双対性により Gorenstein 空間
となる。また,連結 Lie 群の分類空間や Lie
群作用を持つ可微分多様体の Borel 構成も
Gorenstein 性を持つ。
2010 年代前半には,Chataur-Menichi に
より,分類空間のストリングトポロジーが
HCFT 構造を持つ形で,整備された。このよ
うに本研究開始当初において,ストリングト
ポロジーは多くの研究対象を巻き込みなが
ら,その発展期に入っていた。一方,計算手
法の開発に関しては,Cohen-Jones-Yan によ
る Lerry-Serre 型スペクトル系列があるの
みで,一般理論の発展を支える計算理論の未
発達部分が指摘されつつあった。そこで,研
究代表者は,Luc Menichi 氏(Angers 大 (フ
ランス))と内藤 貴仁 (東大数理)と共に,従来
の Eilenberg-Moore ス ペ ク ト ル 系 列
(EMSS)に改良を加え,ストリングトポロジ
ー版の構成を進めていた。
2.研究の目的
Gorenstein 空間に対して定義されるルー
プ積とループ余積を導来ストリングトポロ

ジーの枠組みで考察し, 次の目標をもって本
研究を遂行した。(I) 相対ループホモロジー
に収束するシフト型 EMSS の一般的な性質
の解明,特に拡張問題の解決方法の確立と具
体的な計算の手法を考察し,等質空間上の2
次元位相的場の理論構造を決定する。(II) Lie
群の分類空間のループコホモロジーにおけ
る次数付き Batalin-Vilkovisky (B-V) 代数
構造の決定,そして (III) ループコホモロジ
ーが持つ D-ブレーン付き開閉2次元ホモロ
ジー的共形場理論の具体的計算とその非自
明性を検証する。
3.研究の方法
ストリングトポロジーにおける計算の難
しさは,ループホモロジーの関手性の欠如が
もたらす。そのため,2 つのループホモロジ
ーを比較考察するために,双対版を考え,仲
介者として,比較を行う方法を導入した。さ
らに上述の EMSS のストリング版を導入し,
具体的計算を進めるという戦略を立てた。ま
た,研究代表者が 10 年ほど前,ループ空間
のコホモロジー研究のため導入した 加群微
分子が, Lie 群の分類空間のストリングトポ
ロジーの研究に役立つことが分った。 この
道具と HCFT 構造,特に Lantern 関係式を
用いて,分類空間のループ(余)積さらには
B-V 代数構造の解明を進めた。ストリング作
用素をカップ積の言葉に翻訳するという考
え方が基になり,具体的な計算を遂行出来る
ことになる。実際,B-V 作用素はカップ積に
関して Leibniz 則をみたすので,カップ積と
ループ(余)積の間の関係式の解明が同時に,
ループコホモロジーの B-V 代数構造を決定
する。
こうした研究を着実に遂行するため,研究
協力者の招聘,研究集会「空間の代数的・幾
何的モデルとその周辺」および「(非)可換代
数とトポロジー」を各年開催し,研究交流を
行なうと共に,本研究に必要な情報収集にも
努めた。
4.研究成果
研究目的(I)について: Gorenstein 空間 X
のループホモロジー上で定義されるループ
(余)積を直積空間 X×X の特異コチェイン代
数上の導来圏で考察することで,それら(余)
積を完全に捩じれ群関手の言葉で記述する
ことに成功した。この解釈を用いて,ループ
ホモロジーに収束するシフト型 EMSS を構
成した。具体的計算に関しては,ある等質空
間のループコホモロジー上の双対ループ
(余)積を完全に決定した。まず,第一空間内
を基点が動き、全体は第二空間内を移動する
そのようなループからなる相対ループ空間
を考える。この空間のホモロジーは,第一空
間が Poincaré 双対空間である場合,ChasSullivan ループ積を一般化した積構造を持
ち,相対ループホモロジーと呼ばれる。まず
この積を相対ループホモロジーに収束する

シフト型 EMSS に導入し, その第二項が第
一, 第二空間のコホモロジーの Hochschild
コホモロジーで記述できることを示した。一
般のループホモロジーでは期待できない関
手性を相対ループホモロジーは許容してい
る。この性質をさらに圏論的に整理した。特
に相対ループホモロジーは第二空間 M を固
定することで, その上の Poincaré 双対空間
がつくる圏から M の基点付きループホモロ
ジー上の代数がつくる圏への関手を与える
ことを示した。また第一空間 N を固定するこ
とで, N を上空間にもつ空間の圏から N のル
ープホモロジー上の代数がつくる圏への関
手になる。
さらに,コホモロジー環が単生成である空
間および低次元の Stiefel 多様体に応用し,
それらのループホモロジーを完全に決定し
た。この結果は R.L. Cohen, J.D.S. Jones, J.
Yan や D. Chataur, J.-F. Le Borgne による
Leray-Serre 型スペクトル系列を用いた計算
の再確認であるばかりでなく,Hochschild
コホモロジーによるより一般的な代数計算
がループホモロジーの計算に適用可能であ
ることも示したことになる。また EMSS の比
較により G/SU(2)型の等質空間の双対ループ
ホモロジーを完全に決定することにも成功
した。上述の計算において,シフト型 EMSS
の境界準同型写像の考察から, スペクトル
系列の拡張問題を解く一つの方法を与えた
ことは特筆される。以上の結果はすべて論文
[2][3]としてまとめられた。
研究目的(II)について:正の次元を持つ
Gorenstein 空間に対して,上述のスペクト
ル系列は上手く機能する。しかし,0 または
負の次元を持つ Gorenstein 空間に適用する
場合,系列の各項で全ての作用素が自明にな
ってしまう。特に連結 Lie 群 G の分類空間
BG は次元 − dim G の Gorenstein 空間で
あり,BG 上のストリング作用素の計算にシ
フト型 EMSS は適用できない。そこで,ルー
プコホモロジーに現れるストリング類の研
究で,研究代表者が導入した加群微分子を応
用して,分類空間上のストリングトポロジー
の研究を進めた。共同研究者 Menichi 氏と
内藤氏とは連絡を密に取り合い着実にこの
方 面 の 研 究 を 遂 行 し た 。 特 に 2016 年 に
Menichi 氏を信州大学に招聘し,集中的セミ
ナー行なった。結果,ファイーバーに沿う積
分写像の次数を考慮した Koszul サインに基
づき,一般論の構築を進めることができた。
これにより,シフト型 EMSS による計算では
捉えられなかった現象を考察する方法およ
び計算手法を得たことになる。さらに分類空
間上のストリングトポロジーの HQFT 構造
から得られる,ループコホモロジーの次数付
き B-V 代数構造を明らかにした。実際,加群
微分子を応用した分類空間のストリングト
ポロジーの具体的計算により,そのモデルケ
ースの B-V 代数構造を明らかにしている。具
体的には,(*)連結 Lie 群 G の分類空間 BG

の体 K 係数コホモロジーが多項式環になっ
ているという仮定のもと,
1) 分類空間 BG の体係数ループホモロジー
のループ積は自明であるが,ループ余積は単
射であり,したがって十分に非自明であるこ
とがわかった。
2) 分類空間 BG の体係数の双対ループ余積
から定義される B-V 代数構造をそのモデル
ケースで明らかにした。
3) 回転群 SO(3),およびランク 2 の単連結
コンパクト単純例外 Lie の分類空間のコホモ
ロジー上定義される B-V 代数構造を完全に
決定した。
また,上述の 2)の結果を用いてプロップ作
用素上の「符号問題」を解決した。モデルケ
ースを考えることで仮定(*)をおくことなし
に,Chataur-Menichi により導入された分類
空間のループコホモロジーの B-V 構造を次
数付き理論として完成させたことになる。以
上の結果を Menichi 氏との共同研究として
まとめ Canadian Journal of Mathematics
に投稿,改訂中である。(6月現在,受理)
与えられた空間が Gorenstein 空間にな
るための条件を考察することは導来ストリ
ングトポロジーを豊かにするという意味に
お い て も 重 要 で あ る 。 Hopf 空 間 に
Gorenstein 性質の認識原理を適用し, 単連
結 Hopf 空間 G が Gorenstein 空間であるた
めの必要十分条件は G のコホモロジー環が
ネーター的であるという結果を得た。
さらに Hopf 空間に対するループ積の公式
も確立した。結果,ループ積は Pontryagin
積と交叉積のテンソル積で記述できること
になる。こうしてネーター的 Hopf 空間のコ
ホモロジー環が有限次元でない場合, ルー
プ余積は全て自明であることが判明した。特
に単連結 Lie 群の2重ループ空間の有理係数
上のループ積は自明となる。
無限次元の Hopf
空間に対するループ積の挙動をはじめて捉
えた結果といえる。これらの結果はプレプリ
ントとしてまとめられている。
次数付き微分代数上の加群がつくる導来圏
は三角圏になる。研究代表者は,三角圏の対
象に関して,Avramov-Buchweitz-IyengarMiller が導入したレベルの概念を用いて,位
相空間の新しいホモトピー不変量 空間のレ
ベル を導入した。このレベルの下からの評
価は,ゴーストと呼ばれる写像の列の長さに
より与えられる。分類空間のストリング作用
素を誘導する Gysin 写像はこのゴースト写像
になっており,そのゴースト長の評価を与え
ることで分類空間のレベルの下からの評価
式を得ている。このように,導来ストリング
トポロジーとの思わぬ繋がりが,本研究で明
らかになった。これらの結果は論文[1]とし
てまとめられている。
研究目的(III)について:研究の 4 年目後半
から最終年度においては,Guldberg による
Lie 群の分類空間のストリングトポロジーが
ラベル付き(D-ブレーン)2次元開閉位相的

場の理論構造を持つという結果を,導来スト
リングトポロジーの枠組みから再考し具体
的計算の可能性を探った。開弦に対応する部
分には,Lie 群の2重コセットも現れ,閉弦
理論をさらに豊かにする。閉弦に対応する分
類空間のループホモロジーとこれら空間の
ホモロジーが,どのように融合しラベル付き
場の理論の代数構造を決めているかを明確
にすることが重要である。すなわち非自明な
拡張になるかどうかの検証が必要である。そ
こで,特に開弦理論と閉弦理論を結ぶホイッ
スル・コボディズムが誘導するストリング作
用素の計算方法の考察を進めた。
Lie の分類空間,Borel 構成,オービフォ
ールドを統一的に扱える位相的スタックの
研究が活発になっている。この中,BehrendGinot-Noohi-Xu により,位相的スタック上
のストリングトポロジーが構築された。本研
究においては,この理論における作用素の計
算および,特性の解明にも力を注いだ。位相
的スタックを具体的に扱うためには,そのコ
ホモロジーの計算が重要であり,そのために
はスタックに同伴する位相亜群の脈帯コホ
モロジーに収束するスペクトル系列の構築
が最重要課題であることまで突き止めた。
このように研究最終年度は,この5年間の
まとめとなる研究の年であると同時に,導来
ストリングトポロジーの拡張可能性を検討
する研究も遂行した。
5.主な発表論文等
(研究代表者、研究分担者及び連携研究者に
は下線)
〔雑誌論文〕
(計 3 件)
[1] K. Kuribayashi, The ghost length and
duality between chain and cochain type
levels,
Homology,
Homotopy
and
Applications, 18 (2016), 107-132.
http://dx.doi.org/10.4310/HHA.2016.v18.
n2.a6
[2] K. Kuribayashi, L. Menichi and T. Naito,
Derived
string
topology
and
the
Eilenberg-Moore spectral sequence, Israel
Journal of Mathematics, 209 (2015),
745-802.
https://doi.org/10.1007/s11856-015-1236
-y
[3] K. Kuribayashi, L. Menichi and T. Naito,
Behavior of the Eilenberg-Moore spectral
sequence in derived string topology,
Topology and its Applications, 164 (2014),
24-44. ...

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