リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「圏論的アプローチによる階層体の研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

圏論的アプローチによる階層体の研究

栗林, 勝彦 信州大学

2021.03.01

概要

2版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
令和

元 年

6 月 11 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 挑戦的萌芽研究
研究期間: 2016 ∼ 2018
課題番号: 16K13753
研究課題名(和文)圏論的アプローチによる階層体の研究

研究課題名(英文)Studies on stratifolds by a categorical approach

研究代表者
栗林 勝彦(KURIBAYASHI, Katsuhiko)
信州大学・学術研究院理学系・教授

研究者番号:40249751
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

2,400,000 円

研究成果の概要(和文):Kreck により導入された、階層体は多様体の一般化概念である。本研究の目的は、階
層体の圏論的な性質を、多様体や他の一般化された概念であるディフェオロジカル空間との比較により明確にす
ることである。結果として、(I)階層体のつくる圏のR-代数の圏へのうめ込み定理を完成させ、また(II)階層体
の圏における射を適切な関手を用いて、ディフェオロジカル空間の圏内で特徴づけた。さらに(I)を用いて、
(III) 階層体をR-代数上のアフィン・スキームの引き戻しにより表示する方法を確立し、 (IV)階層体上のベク
トル束とある有限型射影的対象の等価性を保証するSerre-Swanの定理を証明した。

研究成果の学術的意義や社会的意義
球面のように、局所的にユークリッド空間と同一視できる幾何学的対象は多様体と呼ばれ、その豊かな構造から
微分幾何学やトポロジーにおける重要な研究対象となっている。次元の異なる幾つかの多様体を接着することで
得られる対象が、階層体である。本研究では、階層体のつくる圏のR-代数の圏へのうめ込み定理や、階層体のR代数上のアフィン・スキームの引き戻しにより表示する方法を確立した。さらに、多様体の概念の一般化である
ディフェオロジカル空間がつくる圏の中で、階層体の間の射の特徴づけを与えた。階層体の圏論的立場から研究
することで、階層体および多様体に潜む幾何学的な本質があぶり出されることになる。
研究成果の概要(英文):The notion of a stratifold introduced by Kreck is a generalization of that
of a smooth manifold. The aim of this research is to clarify categorical properties of stratifolds
by comparing them with those of diffeological spaces whose notion also contains all smooth
manifolds. As consequence, we have obtained a result (I) which asserts that the category of
stratifolds fully and faithfully embeds into the category of R-algebras as does the category of
smooth manifolds. (II) We also characterize morphisms of stratifolds in the category of
diffeological spaces with an appropriate functor. The result (I) yields that (III) a stratifold
recovers from the pullback along the inclusion from the real spectrum associated with the stratifold
to the affine scheme as a ringed space. Moreover, we have proved the equivalence between vector
bundles over a stratifold and finitely generated projective modules over the global sections; that
is, (IV) the Serre-Swan theorem holds for stratifolds.

研究分野: 幾何学
キーワード: 階層体 ディフェオロジカル空間 Serre-Swanの定理 実スペクトラム

様 式 C-19、F-19-1、Z-19、CK-19(共通)
1.研究開始当初の背景
位相空間 X の整数係数ホモロジー群の元が X 上の可微分多様体の基本類で表示できるかという
Steenrod による問題は、Thom により否定的に解決されている。しかし 90 年代後半、Jakob は
基本類以外に多様体の適切なホモロジー類を置くことで、ボルディズムによる同値類がつくる
群とホモロジー群との同型を与えた。すなわち幾何学的サイクルの存在が明らかになった。一
方、Kreck によるホモロジー群の幾何学的解釈はボルディズム類によるものであるが、多様体
の一般化である階層体を用いており、新しい幾何学的サイクルとして注目されている。また、
多様体上で展開される Chas-Sullivan によるストリングトポロジーは、近年 Poincaré 双対空間
を含む Gorenstein 空間にまで拡張され、多様体の一般化である対象が具体的に活躍する場面
が多く現れている。ディフェオロジカル空間と呼ばれる幾何学的対象は、多様体の枠組みから
飛び出てしまう構成・操作もその範疇にいれ、特に写像空間を自然に持つ、カルテシアン閉圏
をつくる。Joyce による C♾-環をもとに層理論から立ち上がる導来微分幾何の研究も多様体の
一般化という見地からは見逃せない。
2.研究の目的
研究代表者はディフェオロジーや階層体について基礎研究を行ってきた。しかし上述のように
様々な多様体の一般化があり、概念に現れる共通の性質や立ち位置をそれらの比較の中で正確
に理解し、その後、各論を展開する必要があると考えるようになった。実際、共通の性質から
各々が繋がり、より系統的な考察が可能になる。そこで、本研究は多様体やその一般化概念で
あるディフェオロジカル空間と階層体の性質を比較することにより、階層体の圏論的な位置づ
けを行い、共通点・相違点を明確にすることを目的とする。具体的には、(I) 階層体のつくる
圏の R-代数の圏へのうめ込み定理の考察と、(II) ディフェオロジカル空間のつくる圏への関
手の構成とその性質の考察、(III)階層体と適切な R-代数上のアフィン・スキームの引き戻し
との関連性の解明、さらに(IV)多様体上のベクトル束とある有限型射影的対象の等価性を保証
する Serre-Swan の定理の階層体への一般化を目標に掲げ研究を遂行する。
3.研究の方法
階層体とは,第二可算公理をみたす Hausdorff 空間 S と、S 上の実数値連続写像がつくる R-代
数のある性質を持つ部分環 C との対(S,C)のことである。特に,部分環 C の n 個の写像と Rn 上
の任意の微分可能関数との合成がまた部分環 C の元であることを要求する。Sikorski の意味の
微分空間の概念に加え、バンプ関数の存在と、全体が多様体の直和で表されることを要求して
いる。階層体は、一般には次元の異なる有限個の多様体が階層をなして接着されている空間と
考えられる。
Pursell による多様体の圏 Mfd の圏から実数体 R 上の代数がつくる圏 R-Alg へのうめ込み定
理は、多様体 M に微分可能関数のつくる環 C♾(M)を当てるという関手で実現される。階層体
(S,C)から階層体の構造 C を取り出す関手が,研究目標(I)で言う、うめ込み関手を与えること
をまず証明する。ここで得られる階層体の基本性質が、(II)-(IV)の考察上で有効に機能すると
考えている。幾何学的実現関手 | | : R-Alg → Top は R-代数 F に対して、F から R への準
同型写像全体|F |に Gelfant 位相を入れて定義される。問題は、この実現関手により階層体構
造 C の像が同型を除いてもとの階層体に戻るかどうかである。多様体の場合、この問題は肯定
的に解決される。その事実に関する Nestruev の考察によれば鍵となるのは、
「単位の分割」で
ある。階層体の場合もバンプ関数の利用により単位の分割の存在が保証される。この性質を最
大限利用し(I)の研究を完成させる。
(II)に関しては、階層体からその構造を可能な限り復元できるプロット、すなわちディフェ
オロジーをどのように定義するかが問題となる。階層体の圏 Stfd からディフェオロジカル空
間のつくる圏 Diff への関手の候補に対して、それが埋め込み関手になる可能性を探る。
研究(III)を進める上で鍵となるのは、階層体(S,C)における実スペクトラム RSpec C (自然
な写像 R → C/I が同型射となる C の極大イデアル I 全体)の考察である。すなわち、R-代数 C
の幾何学的実現|C|上の Gelfant 位相とスペクトラム Spec C の Zariski 位相から入る RSpec C
の位相が一致していることを示すことが鍵となる。さらに、環 C のアフィンスキームを包含写
像 i : RSpec C → Spec C で引き戻して、もとの階層体が復元できるかを判定しなければなら
ない。これらの問題を考察する。逐語的にうまくいくとは考えていない。やはり階層体の言葉
で置き換えるために、
「局所レトラクション」の性質を有効に利用する必要がある。
目的(III)を達成した後、目的(IV)の研究に進む。すなわちベクトル束と有限型射影的対象の
等価性を保証する、Serre-Swan の定理の定式化とその証明を与える。まず、階層体の圏におけ
るベクトル束の概念を定式化することから始める。階層体上の束の切断の「有限性」が問題に
なるがその考察には、多様体の圏でいうトートロジカル束に類似した概念が必要になると考え

ている。また、与えるベクトル束の定義の妥当性を示すために,Sikorski の意味の微分空間の
圏で定義されるベクトル束において、底空間が階層体である場合、その構造が全空間に遺伝す
るかと言う問題の考察も必要になる。
研究期間の3年で着実に上記の研究を遂行するために、勉強会および研究集会を開催し、また
国内外の研究者との交流を積極的に進める。
4.研究成果
研究協力者の青木稔樹氏(信州大学)と共に研究(I),(II),(III),(IV)を押し進め、幾つかの結果
を得た。(I)に関しては、階層体(S,C)の構造層の大域切断すなわち、S から R への階層体の意
味で滑らかな写像全体が作る R-代数(C 自身)を対応させることで、この埋め込みが得られるこ
とを示した。予想通り、R-代数から位相空間への Gelfand 位相による幾何学的実現関手と階層
体の持つバンプ関数の存在、さらには、階層体構造 C の実スペクトラムが C の幾何学的実現と
同相であることが、埋め込み定理の証明の鍵となった。
階層体構造 C の環付き空間の一般論を整備することで目的(III)の研究を進めた。結果とし
て、R-代数である階層体構造 C のアフィン・スキームの実スキームへの引き戻しにより、もと
の階層体とその構造層が復元できることになる。これはバンプ関数を用いて、それぞれの芽が
同型であることを示すことで証明される。研究(IV)に関しては、位相空間の次元に関する議論
を通して、Serre-Swan の定理に関する Morye の一般論が適用できることがわかった。階層体上
のベクトルバンドルの概念をまず、Sikorski の意味の微分空間の圏で導入し結果として、底空
間の階層体構造が、全空間に遺伝することを示した。最終的に、研究目的(IV)で掲げた、SwanSerre の定理の階層体版が完成した。ここではトートロジカル束の概念の導入に行き詰まった
が、環付き空間の理論を用いることで,問題を回避することになる。(III)の結果から、階層体
(S,C)を環付き空間として考える場合は,(S,C)は実スキームを経由して、C 上のアフィン・ス
キームの部分層とみなせる。これにより、元来の Swan-Serre の定理と(IV)の結果を合わせれ
ば、階層体上の有限階数のベルトル束がつくる圏と階層体構造 C の素スペクトラム上のそれら
の圏が同値という結論を得る。S がコンパクトでない場合,例えば開錐のような階層体である
時は、階層体の実スキームは同伴しているアフィン・スキームより真に小さい。しかしなが
ら、それらの上のベクトル束が作る圏は同値になるのである。
(II)に関しては、与えられた階層体から適切なプロットを定義することで、Stfd から Diff
への関手を構成した。その関数は埋め込みにはならないが、Diff の中で、階層体から得られる
射を局所レトラクションの言葉で記述し特徴づけた。多様体の局所レトラクションは恒等射で
あることから、定義域が多様体である場合は、ディフェオロジカル空間の圏の Hom 集合が階層
体の圏の Hom 集合と同じであることが、(II)の特徴づけから従う。また,階層体をディフェオ
ロジカル空間と考えるときのプロットは、階層体のスムース写像であることがわかった。この
事実は、ディフェオロジカル空間の内部的および外部的接空間が階層体の時は一致するという
予想の肯定的解決に役立つはずである。以上(I)-(IV)の結果は①論文としてまとめられた。
研究期間の最終年の後半は、ディフェオロジカル空間および階層体における、de Rham の定
理の定式化とその証明を目標に掲げ、研究をさらに推進させた。まず、ディフェオロジーの圏
で de Rham の定理を定式化するために、標準的単体にアフィン空間から部分ディフェオロジー
を入れ、
「特異」チェイン複体をつくる。またアフィン空間から単体的微分複体を用いて de
Rham 複体 Ω を定義し、そこからの上述の特異チェイン複体へ積分写像を構成した。これが、
一般のディフェオロジカル空間に対してはコホモロジー上で同型を導くと予想している。予想
を肯定的に解決するため、非輪状モデルの方法や単体的微分代数から得られる擬同型を生む判
定法等を駆使するというアイディアを得た。これがディフェオロジーにおける de Rham の定理
となる。
一方、Souriau の de Rham 複体 A に関して言えば、既にファイバー束上の接続や多様体の微
分形式の一般化として様々な結果が生まれている。しかし例えば、無理数トーラスに関しては
この de Rham 複体で de Rham の定理が成立しない。したがって de Rham 複体 A と上述の新しい
de Rham 複体 Ω の関係を明らかにすることがディフェオロジーの de Rham 理論の構築におい
て重要になる。階層体に関してはこの2つが擬同型になることが予想される。予想の肯定的解
決に向けては、本研究で得られた階層体の圏論的特徴づけが役立つであろう。このように、本
研究がディフェオロジーおける de Rham 理論の複線化を後押しすることが期待される。
研究を推進するために必要な研究交流や研究集会の開催も積極的に行った。2018 年 5 月には
コペンハーゲン大学に滞在し、 Anssi Lahtinen 氏とストリングトポロジーに関する議論を重
ねた。その中で、こうしたループ空間のホモロジー理論、位相的場の理論のディフェオロジカ
ル版構築へ向けて研究を進める強い動機づけを得た。2018 年 6 月にはイズミル(トルコ)で開催
されたディフェオロジー勉強会に参加し、Patric Iglesias-Zemmour 氏の連続講義を聞くとと
もに、de Rham 計算につて議論を行った。また、その勉強会の主催者で,ディフェオロジーお

よび階層づけられた空間を研究する Serap Gürer 氏と階層体の de Rham の定理についての議論
を進めた。2018 年 8 月には Stephen Theriault 氏 (Southampton)と研究分担者の岸本大祐氏
(京都大学)とともに、京都大学で国際研究集会 Mapping Spaces in Algebraic Topology を共同
開催した。2019 年 3 月には岩瀬則夫氏(九州大学)とともに、研究集会兼勉強会 Building-up
Differentiable Homotopy Theory を九州大学で共同開催した。Iglesias-Zemmour 氏の連続講義
を含む研究集会であり、Iglesias-Zemmour 氏と参加者との議論により、階層体をディフェオロ
ジー研究における例として上手く利用するということの重要性を再認識した。上述の研究集会
等の企画により、本研究のさらなる発展・展開を確信すると共に、国内研究者、若手研究者に
ディフェオロジーの汎用性・重要性に触れていただく重要な機会を提供できたと考えている。
5.主な発表論文等
〔雑誌論文〕
(計 2 件)(査読あり)
① K. Kuribayashi and L. Menichi, The BV-algebra in string topology of classifying
spaces, to appear in Canadian Journal of Math.(2019) DOI: 10.4153/CJM-2018-021-9
② T. Aoki and K. Kuribayashi, On the category of stratifolds, Cahiers de Topologie
et Géométrie Différentielle Catégoriques, 58 (2017), 131–160.
https://ehres.pagesperso-orange.fr/Cahiers/CTGDC_58_2017/CTGDC_58-2.pdf
〔学会発表〕
(計 4 件)
① 栗林 勝彦: On the BV operator and the whistle cobordism operator in string topology
of classifying spaces, 有限群のコホモロジー論とその周辺 京都大学数理 解析研究所
420 室, 2019 年 2 月 14 日
② Katsuhiko Kuribayashi, Eilenberg-Moore spectral sequence calculations in string
topology of classifying spaces, Algebra/Topology seminar, Copenhagen, Denmark, 28
May, 2018.
③ 栗林 勝彦: 階層体の圏と Serre-Swan の定理, 2018 年度 日本数学会年会 2018 年 3 月
18 日(日) 於 東京大学
④ 栗林 勝彦: On the category of stratifolds - The Serre-Swan Theorem -, 2017 年度
ホモトピー論シンポジウム 高松市生涯学習センター (まなび CAN) (香川県高松 市),
2017 年 11 月 25 日

〔その他〕
ホームページ等
http://marine.shinshu-u.ac.jp/~kuri/home.html
6.研究組織
(1)研究分担者
研究分担者氏名:岸本 大祐
ローマ字氏名:(KISHIMOTO, Daisuke)
所属研究機関名:京都大学
部局名:理学研究科
職名:准教授
研究者番号(8 桁)
:60402765

(2)研究協力者
研究協力者氏名:青木 稔樹
ローマ字氏名:(AOKI, Toshiki)

※科研費による研究は、研究者の自覚と責任において実施するものです。そのため、研究の実施や研究成果の公表等に
ついては、国の要請等に基づくものではなく、その研究成果に関する見解や責任は、研究者個人に帰属されます。 ...

この論文で使われている画像

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る