HTR3A is correlated with unfavorable histology and promotes proliferation through ERK phosphorylation in lung adenocarcinoma

概要

〔目的(Purpose))〕
　HTR3A (5-hydroxy tryptamine receptor 3 A)は、リガンド依存性の五量体陽イオンチャネルのセロトニン受容体の1つであるHTR3を構成する主要なサブユニットである、癌との関わりも言われているが、そのメカニズムは未だ不明な部分が多い。肺腺癌では組織型と予後が相関することが知られている。しかしHTR3Aが肺腺癌における組織学的サブタイプの病理組織学的な所見との相関、単一症例内におけるHTR3Aの発現の強弱は不明である。我々は肺腺癌の予後因子を検索するため、RNA sequenceにより、HTR3Aが予後不良の肺腺癌の組織型に優勢に発現し、HTR3Aが肺腺癌の組織学的サブタイブの関連を明らかにする。

〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
　肺腺癌30症例のパラフィンプロックからlepidic, acinar, papillaryが主体の比較的予後良好な20症例群と micropapillaryやsol idを含む予後不良な10症例群の臨床検体からRNAを抽出し、RNA seauencingを行い、予後不良な方で優位に発現したniRNAを検索したところ、予後不良の組織型に優位に発現するものとして、HTR3A(5-hydroxytryptarnine receptor 3A)が同定された。免疫組織化学を行ったところ、lepidicに比較し浸潤性の商いacinar, papillary、solidなどのサブタイプでHTR3Aの発現が高く、また細胞増殖マーカーKi-67の陽性率の高い所にもHTR3Aの発現が高く、HTR3Aの染色性とKi-67の陽性率に有意な相関関係があった。単一症例内で複数のsubtypeが混在する症例においても、lepidic領域のよりもpapillary/ acinar領域でHTR3Aは有意に強い発現が見られた。イムノブロッティングでは、肺腺癌培養細胞A549と111792でHTR3A遺伝子をノックダウンすると、増殖能およびERKのリン酸化の低下が見られた。また、HTR3のアンタゴニストであるTropisetronを投与しても同様の結果が得られた。

〔総括(Conclusion)〕
　免疫組織化学によりHTR3Aの発現は肺腺癌の組織的サブタイプに関連し、ERKのリン酸化を介して増殖に関わることが示唆された。