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大学・研究所にある論文を検索できる 「Inhibition of glycolytic activator PFKFB3 suppresses tumor growth and induces tumor vessel normalization in hepatocellular carcinoma」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Inhibition of glycolytic activator PFKFB3 suppresses tumor growth and induces tumor vessel normalization in hepatocellular carcinoma

松本, 謙一 大阪大学

2021.06.30

概要

〔目的(Purpose)〕
 肝細胞癌は肝原発悪性腫瘍の一つであり、その治療法は手術、経皮的治療、肝動脈塞栓療法、化学療法に大別される。しかし、根治治療後にも50%以上の患者が再発を繰り返し、予後は依然として不良である。肝細胞癌は画像上多血性腫瘍を呈し血流の豊富な腫瘍である。腫瘍組織内の血管内皮細胞は、腫瘍血管内皮細胞(TEC:tumor endothelial cell)と呼ばれ、相対的な低酸素・低栄養、癌細胞からの各種サイトカインに曝露されており、正常血管内皮細胞(NEC:normal endothelial cell)と比較して異なる機能を有し、また腫瘍血管の不規則に拡張した血管、 脆弱な血管壁等の異常構造が癌細胞の転移に関与していると考えられている。近年、これらの疽瘍血管の異常機能・異常構造を正常化することで癌の増殖・転移を抑制する「腫瘍血管正常化」という概念が提唱された。
 われわれは、Warburg効果で知られる解糖系が、腫瘍細胞増殖のみならず腫瘍血管新生促進においても重要な役割を果たしていることに着目し、解糖系の中心的酵素 phosphofructokinase-2/fructose-2, 6-bisphosphatase 3 (PFKFB3)を抑制することで、肝細胞癌において腫瘍増殖抑制だけでなく、腫瘍血管新生を抑制的に調節し、腫瘍血管の正常化を誘導できるのでは無いかと考えた。本研究では、肝細胞癌における腫瘍細胞とTECにおけるPFKFB3発現の意義を明らかにし、またPFKFB3阻害による治療効果について検討することを目的とした。

〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
 当院にて根治切除を施行した肝細胞癌99例を用いた2重蛍光免疫組織染色により、腫瘍細胞とTECにおけるPFKFB3の発現を評価し予後との関連を検討した。TECは腫瘍組織内のCD31陽性細胞とした。腫瘍細胞とTECのいずれにおいてもPFKFB3を発現していた27例(PFKFB3共発現群)は、その他の72例と比較して、年齢・性別・肝機能・腫瘍個数・腫瘍径等に差を認めなかった。しかしPFKFB3共発現群は、その他の群と比較して予後不良であった(2年無病生存率:40% vs 79%, p<0. 001;2年金生存率:76%vs991 p=0, 026)。また単変量・多変量解析の結果、腫瘍個数、腫瘍径、PFKFB3 の共発現は、無病生存率(DFS)における独立予後不良因子であった。
 マウス肝癌細胞株(BNL1ME A. 7R.1)を用いてマウス皮下腫瘍モデルを作成し、抗CD31抗体を用いた磁気細胞分離法により、腫瘍組織からTECおよびNECを精製・培養した。PFKFB3の発現を、蛍光細胞染色およびwestern blotによ り解析した。BNLとTECは、NECと比較してPFKFB3を高発現していた。選択的PFKFB3阻害剤(PFK15)による解糖系への 影響を、細胞内Fructose 6-phosphate(F6P)a、培養上淸におけるATP ・乳酸産生量にて評価した。また細胞増殖への効果を検討した。BMLとTECは、PFK15により、細胞内F6P量の増加およびATP ・乳酸産生の低下を認めた。また、BNL とTECは、より低濃度のPFK15で細胞増殖が抑制された。siRNAを用いたPFKFB3遣伝子発現抑制でも同様の結果であった。
 次に、マウスにBNLとTECを混合して皮下腫瘍を作成し、腫瘍形成率および腫瘍体積の変化を検討し、また腫瘍におけるKi67陽性細胞数を検討した。BNLとTECを混合した皮下腫瘍はBNLのみで作成した皮下脈瘍と比較して、腫瘍形成率の増加および腫瘍体積の増加を認め、またKi67陽性細胞数の有意な増加を認めた。BNLとTECを混合した皮下腫瘍モデルにおいて、PFK15腹腔内投与による抗腫瘍効果を検討した。さらに摘出した脈瘍におけるKi67陽性細胞数、アポトーシスの有無を検討した。PFK15投与により腫瘍体積の有意な縮小、およびKi67陽性細胞数の低下、アポトーシス陽性細胞数の増加を認めた。摘出した脈瘍における腫瘍血管の血管径を計測し、CD31とa-SMAの蛍光2重免疫染色によりペリサイト定着率、さらに腫瘍潅流域の検出にDyLight649標識トマトレクチン、低酸素領域の検出にピモニダゾールを用いて評価した。PFK15投与により腫瘍血管の血管径は縮小し、ペリサイト定着率が有意に増加していた。また腫瘍灌流域の増加、および腫瘍内低酸素領域の減少を認めた。

〔総括(Conclusion)〕
 肝細胞癌において腫瘍細胞および腫瘍血管内皮細胞におけるPFKFB3共発現が予後因子である可能性が示された。また解糖系酵素PFKFB3の機能抑制は、腫瘍細胞に対する増殖抑制効果および腫瘍血管正常化の誘導を介して、肝細胞癌に対する有効な治療法となりうることが示唆された。

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