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書き出し

保護膜付き多層膜ミラーの水素ブリスタ耐性評価

戸室, 啓明 TOMURO, Hiroaki トムロ, ヒロアキ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

保護膜付き多層膜ミラーの水素ブリスタ耐性評価
戸室, 啓明

https://hdl.handle.net/2324/6787636
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(工学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(様式3) Form 3





:戸室 啓明

Name

論 文 名

:保護膜付き多層膜ミラーの水素ブリスタ耐性評価

Title





:甲

Category



文 内 容 の 要
Thesis Summary



EUV リソグラフィは 2019 年に実用化された最先端の半導体製造技術であり,5G や AI 技術の普
及などを追い風にニーズが高まっている.しかしながら,EUV リソグラフィに要求される技術レベ
ルは非常に高く,依然として研究開発の余地が残されているものとなっている.EUV リソグラフィ
用光源には,EUV 光の反射,集光のために Mo/Si 多層膜ミラーが用いられる.そのミラーは,高
エネルギーなスズプラズマの近傍という過酷な環境下で使用されるため,複数の要因により劣化す
る.ミラーの劣化を防ぎ,長寿命化および高効率化させることは,EUV リソグラフィの性能向上や
普及にとって重要な課題である.その劣化要因の一つが,水素ブリスタである.ブリスタは,材料
表面が水ぶくれのように膨張,変形することである.スズプラズマから飛散するスズのイオンや中
性粒子は,ミラー上に付着してその反射率を低下させるため,水素ガスを流すことによりミラー上
のスズをエッチングさせて,クリーニングをする必要がある.その際に水素ガスがイオン化もしく
は原子化してミラー内部に侵入し,水素原子同士が膜境界にある欠陥にトラップされ,再度結合し
て分子になることで水素ブリスタを形成する.水素ブリスタが発生することによりミラー表面が荒
れ,EUV 反射率が低下してしまう.
以上のような問題点を解決するため,本研究は高周波プラズマにより発生させた水素イオンを用
いて,TiO2 と SiO2 で構成される保護膜付き Mo/Si 多層膜ミラーのブリスタ耐性の評価と形成条件
の調査,さらに,中間層膜を付与することによるブリスタ耐性の改善を目的とした.中間層は Si3N4,
SiC, B 4C, C, SiON の 5 種類評価した.本論文は,5 つの章から構成される.各章の概要を以下に
示す.
1 章では,本研究の主題である EUV リソグラフィとそれに用いられる EUV 多層膜ミラーの特徴,
さらにそれらの問題点などの研究背景と本論文の目的を示した.
2 章では,本研究の実験装置および評価方法について説明した.評価に使用した保護膜付き多層
膜ミラーサンプルおよび保護膜に加えて中間層膜を付与した多層膜ミラーサンプルの概略,サンプ
ルに水素イオンを照射するための水素 CCP プラズマシステムの原理と概略,サンプルに照射され
る水素イオンフラックスとエネルギー評価方法,水素イオンフラックス評価に必要なシングルプロ
ーブ測定方法,水素イオンの膜中の挙動を評価するための TRIM 計算方法,サンプルに発生したブ
リスタの評価に用いた SEM,TEM,SIMS 分析について記述した.
3 章では,水素 CCP プラズマシステムによる保護膜付き Mo/Si 多層膜ミラーサンプルに発生す
る水素ブリスタの評価結果について記述した. サンプルに発生したブリスタの SEM 観察結果やモ
ンテカルロシミュレーションによる水素イオンエネルギー分布評価,TRIM を用いたスパッタ評価

によって, VHF 放電水素プラズマを用いることで,ブリスタ耐性の評価が正しくできることを示
した.VHF 放電水素プラズマにより保護膜付きサンプルではブリスタが発生したが,保護膜のない
サンプルでは,過去の文献よりも高いドーズで暴露したにも関わらず,ブリスタ発生が無かったこ
とから,本研究の多層膜は過去の文献の多層膜と比べ,成膜技術の進歩により欠陥が少なかったと
推定され,同じ Mo/Si 多層膜でも成膜条件の影響により,ブリスタ耐性は異なることを示した.ま
たこのことから,スズデブリのミラー表面への堆積やミラー表面の酸化によるミラー反射率低下の
対策として,保護膜をミラー表面に形成することが,むしろ Mo/Si 多層膜のブリスタ耐性を低下さ
せていることを示した.加えて,低イオンエネルギーの水素イオン照射によるブリスタ形成におい
ては,加熱温度が高いほど,同じ暴露時間でもブリスタ面積割合が増加し,加熱温度に対してブリ
スタが形成されるイオンドーズ量をアレニウスプロットすることにより,ブリスタ発生時間が予想
できることを示した.さらに,サンプルの断面 TEM 観察結果から,高イオンエネルギーで暴露し
た場合は保護膜の下にブリスタが形成されていたのに対し,低イオンエネルギーで暴露した場合は
Mo/Si 多層膜内の最初の Mo 層の下にブリスタが形成されていたことから,水素の侵入イオンエネ
ルギーに依存して,ブリスタの形成過程が異なることを明らかにした.これらの一連の評価を通じ
て,CCP プラズマシステムが,EUV ミラー用保護膜付き多層膜サンプルのブリスタ耐性の評価に
利用できることを示した.
4 章では,中間層膜付き Mo/Si 多層膜ミラーサンプルの水素ブリスタ耐性の評価結果について記
述した.3 章の評価から,保護膜と Mo/Si 多層膜の間に欠陥が少なくなるような別材質の層を設け
ることにより,ブリスタ耐性が改善できると推定したため,1nm の薄さの 5 種類の材料の中間層を
設けた Mo / Si 多層ミラーサンプルを用意し,同様の方法でブリスタ耐性を評価した.その結果,
Si3N4, SiC, SiON の三種類の中間層がブリスタ形成を抑制していることが観察され,推定通りブリ
スタ耐性を向上させられることを示した.また,中間層 B4C ではブリスタ形成の増加が観察され,
適格な材質でない場合,ブリスタ耐性はむしろ低下してしまいうことを示すと共に,ブリスタ耐性
は多層界面の特性に大きく影響されることを示した.加えて,水素プラズマ暴露後の中間層がある
サンプルとないサンプルの水素深さ分布を SIMS 分析により比較した結果,中間層がないサンプル
ではより深い位置で水素が検出されていたことから,中間層がある場合では,保護膜と多層膜の間
の欠陥が無いため,水素は蓄積されることなく多層膜や基板を通り,表面から抜け,ブリスタは形
成されなかったと考えられ,中間層の有無により,侵入した水素の挙動に違いがあることを示した.
加えて,簡単な水素拡散計算により,水素は最表面の保護膜を通り抜け,膜中に容易に侵入するこ
とを確認した.Si3N4,SiC,SiON 中間層によりブリスタ発生が抑制された理由は,保護膜の機械
的強度の改善,Si と SiO2 界面での水素解離の防止,Si と SiO2 間のエネルギーバリアの解消などが
考えられることを示した.これらの一連の結果から,EUV リソグラフィシステムの保護膜は本研究
のようなブリスタ耐性評価により,反射率も含め,適格なものを選択することが必要であることを
示した.
5章では,総括として本研究で得られた成果と,今後の展望について述べた.本研究の成果を実
際の装置にさらに定量的に適用するためには,リソグラフィ装置内で発生する水素プラズマのパラ
メータを定量評価する必要があり,その水素プラズマパラメータと本研究のパラメータを比較する
ことによって,実用的なブリスタ形成評価システムを構築していくことが期待される.その上で,
今後様々な種類の保護膜や成膜方法の膜に対して,本研究で用いた手法がブリスタ耐性の評価に使
われ,最適な保護膜が開発されることが期待される.

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