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大学・研究所にある論文を検索できる 「Development of Tin-Based Transparent Conductive Oxides with High Carrier Mobility」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Development of Tin-Based Transparent Conductive Oxides with High Carrier Mobility

福本, 通孝 東京大学 DOI:10.15083/0002006704

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名

福本

通孝

透明導電酸化物は、太陽電池、液晶ディスプレイなどの透明電極として広く実用化され
ている。通常、高い電気伝導度はキャリア移動度とキャリア濃度を向上させることで達成
できる。しかし、キャリア濃度の増加はプラズマ吸収を引き起こし、透明性を低下させる。
したがって、透明性と導電性を両立させるためには移動度の向上が要求される。本論文で
は、高移動度スズ系透明導電酸化物薄膜の作製を行い、その結晶構造と電気・光学特性を
調べ、報告している。
本論文は以下の 8 章より構成されている。
第 1 章は序論であり、本論文の背景および目的が述べられている。この章では、まず透
明導電酸化物の物性について概略を記述している。続いて、高移動度を達成するための指
針を 3 つに分けて述べている。この指針をもとに、スズ系酸化物薄膜の物性について先行
研究を概観し、高移動度を達成するための方策を記述している。本研究では高移動度スズ
系透明導電酸化物の開発を目的として掲げており、大きく 2 つの内容から成る。1 つ目に、
n 型 SnO2 薄膜の高移動度化とその応用に向けたプロセス開発を報告している。2 つ目に、
高移動度 p 型透明導電酸化物として期待される Sn5O2(PO4)2 の高品質薄膜合成とその物性評
価を試みている。
第 2 章は実験手法とその原理の説明である。まず、薄膜試料の作製手法であるパルスレ
ーザー堆積法とスパッタ法について詳説している。続いて、薄膜結晶の構造解析手法であ
る X 線回折、透過型電子顕微鏡、蛍光 X 線ホログラフィー、薄膜の組成分析手法であるエ
ネルギー分散型 X 線分析、ラザフォード後方散乱分析について、各測定手法の原理につい
て記述している。さらに、光学・電気特性測定手法として、紫外可視近赤外分光、四端子
法を用いた抵抗測定、ホール効果測定の原理について説明している。
第 3 章は、Ta ドープ SnO2 エピタキシャル薄膜について、薄膜の配向とキャリア濃度が
キャリア移動度に及ぼす影響を調べている。薄膜のキャリア濃度は Ta 濃度に対応しており、
Ta のドーピング効率が高いことを示している。特に、高キャリア濃度領域における Ta ド
ープ SnO2 薄膜の移動度は、フォノンとイオン化不純物のみがキャリア散乱に寄与している
と仮定した場合の移動度とよく一致することを確認している。また、得られた Ta ドープ
SnO2 薄膜の移動度が、過去に報告された SnO2 薄膜の中で最も高い値である 130 cm2V−1s−1
に達することを明らかにしている。
第 4 章では W ドープ SnO2 エピタキシャル薄膜の作製とその輸送特性について議論して
いる。W ドープ SnO2 薄膜のキャリア濃度は W 量の増加に伴って単調に増加し、W5+を仮
定した場合の値と良く一致すること、並びに高キャリア濃度側の移動度がフォノンと W5+
イオン化不純物のみがキャリア散乱に寄与すると仮定した場合の値と良く一致することを
明らかにしている。また、走査透過電子顕微鏡から、W 原子が薄膜中に均一に分布してい
ること、蛍光 X 線ホログラフィーを用いた W 原子周辺環境の観察により、均一に分布し

た W 原子が Sn サイトを置換していることを実証している。以上の結果より、W は SnO2
薄膜中で移動度を損なわずにキャリア濃度を制御できる優れたドーパントであると結論し
ている。
第 5 章では、TiO2(001)基板とガラス基板上に作製した P ドープ SnO2 薄膜の輸送特性に
ついて述べている。P ドープ SnO2 薄膜中の P 量は基板温度が高くなるにつれて減少し、ド
ーピング効率は基板温度 350℃で最大となることを観測している。また、P 量の増加ととも
にキャリア濃度は系統的に増加し、1.6×1020 cm−3 に達することを明らかにしている。得ら
れた薄膜は可視光に対して透明であり、実用的な透明導電酸化物としての P ドープ SnO2
薄膜の可能性を指摘している。
第 6 章では、ボトムアップ法を用いて基板を処理し、テクスチャ表面を有する SnO2 透明
導電膜を作製する新しい方法を提案している。走査電子顕微鏡により、SnO2 ナノ粒子テン
プレート上に作製した SnO2 薄膜の表面にテクスチャ構造が作製されたことを実証してい
る。紫外可視近赤外分光法により、得られた薄膜における高い透明性とヘイズ値の向上を
確認し、さらに、テンプレートが結晶粒成長を促進することで SnO2 薄膜の導電性が向上す
ることを明らかにしている。これらの結果に基づき、本手法が金属ターゲットを用いた反
応性スパッタにおいて生産性の高い手法となりうると結論している。
第 7 章では高移動度 p 型透明導電酸化物として有望な Sn5O2(PO4)2 の高品質薄膜の作製に
ついて述べている。ガラス基板上に Y2O3(111)層を堆積し、基板温度を最適化することで
Sn5O2(PO4)2(001)薄膜の作製に成功している。組成分析により、得られた膜の組成が量論組
成に近いことを確認している。紫外可視近赤外分光法により、得られた膜のバンドギャッ
プが 3.87 eV と大きく、可視・近赤外領域で高い透明性を示すことを明らかにしている。
最後に、異価不純物による正孔ドープの可能性を指摘している。
第 8 章は結論と総括である。
以上のように、本論文では高移動度スズ系酸化物薄膜の作製とその輸送特性に関して詳
細に報告しており、無機固体化学における物質探索に大きく貢献する。これらの研究は理
学の展開に大きく寄与する成果であり、博士(理学)に値する。なお本論文は複数の研究
者との共同研究であるが、論文提出者が主体となって行ったものであり、論文提出者の寄
与は十分であると判断する。
したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

この論文で使われている画像

参考文献

[154] L. Yan, H. Cao, and D. Viehland, Appl. Phys. Lett 94, 132901 (2009).

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