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大学・研究所にある論文を検索できる 「隠岐の花 トウテイラン(Veronica ornata Monjuschko)の園芸化に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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隠岐の花 トウテイラン(Veronica ornata Monjuschko)の園芸化に関する研究

加古 哲也 鳥取大学

2022.09.16

概要

島根県隠岐諸島を中心に,島根県,鳥取県,京都府の山陰海岸にのみ分布する未利用花き遺伝資源であるトウテイラン(オオバコ科クワガタソウ属,環境省絶滅危惧II類(VU))の園芸化を目的に,隠岐諸島の自生地の調査と,隠岐諸島に由来する実生個体の園芸的な価値の評価,夏秋期出荷鉢物としての摘心による開花調節方法の開発,同属の宿根草で島根県固有種であるサンイントラノオ(環境省絶滅危惧II類(VU))との種間交雑による雑種個体の育成とその形質について検討した.

1.隠岐諸島に自生するトウテイランの園芸利用を目的とした評価
トウテイランの隠岐諸島における自生状況の調査を行い,さらに自生個体に由来する実生を露地圃場において栽培し,園芸的観点から評価を行った.隠岐諸島内の調査によって,本種は海岸近傍を中心に内陸まで分布し,自生地の環境は日当たりの良い自然崖から他の草本と混生する草地まで多様であることを確認した.そのような幅広い環境に分布する本種には,草姿,花器形質,開花期に多様性が確認された.その草姿および花器形質の多様性を活用することにより,切花,鉢花,苗物など幅広い用途に利用可能であることが示唆された.花色についても,従来の青紫色に加え,白色,紫色の個体が見いだされ,育種素材として活用することで花色の幅の拡大が期待される.また,開花期間の異なる個体を利用することで最も開花の早い個体が開花する7月下旬から,全ての個体の開花が終了する11月下旬まで,長期間にわたり生産,観賞できることが示唆された.

2.トウテイランの鉢物栽培における夏秋期出荷に向けた開花調節
トウテイランの夏秋期出荷の鉢物生産における開花調節方法の開発を目的に,摘心時期,摘心節位が開花時期ならびに生育に及ぼす影響について検討した.鉢物用品種‘N G-1’を用いた実験の結果,摘心時期が遅い区ほど開花は遅くなった.一方,摘心時期が遅くなると到花までの積算温度は少なくなった.出荷期の生育は,摘心時期が遅くなると開花節位は低下し開花枝長は短くなった.高い節位で摘心を行った場合,開花は早く,到花までの積算温度は少なくなり,開花節位は低下し,開花枝長は短くなった.開花枝は,摘心時期や摘心節位にかかわらず増加した.一方,6月末の摘心,また,低節位での摘心では不開花枝も増加した.これらのことから,トウテイランの鉢物利用において,摘心時期ならびに摘心節位により鉢物生産における開花期や生育の制御が可能であることが明らかとなった.なお,5月末前後に基部から2~3節の直上で摘心することで敬老の日を目標とした9月上旬の鉢花出荷が可能であると考えられた.

3.トウテイランとサンイントラノオの種間雑種の育成とその形質
トウテイランならびに,同属で島根県固有の宿根草,サンイントラノオの遺伝資源活用と園芸化による絶滅危惧種保護を目的に,2種間で種間雑種の作出を試みた.2種間の正逆交雑において,トウテイランを種子親に,サンイントラノオを花粉親にしたときのみ交雑種子が獲得でき,得られた種子から生育した個体をSRAP法によって雑種検定したところ,両親のバンドを受けついでおり,雑種性が確認された.交雑種子の生産効率ならびに発芽率について,1交配当たりの種子獲得数の期待値は0.5粒で,発芽率は78.3%であった.2種とその種間雑種92個体の開花期における特性調査の結果,雑種個体の葉の大きさや茎,葉の毛量は両親の中間的な値を示したが,花序長や開花期間などは両親より長かった.これら観賞に関与すると考えられる形質の遺伝性は,主成分分析によっても支持される結果が得られた.以上より,観賞性に関与する形質に着目して選抜,育種を進めることで,より優れた品種の育成が可能と考えられた.

これらのことより,島根県の地域特産遺伝資源であるトウテイランは,その多様な形質を活用することで,切花,鉢花,苗物として,長期間にわたり出荷可能であることに加え,育種を進めることにより花色幅を拡大できる可能性が示され,園芸的価値を有することが示された.また,摘心時期,摘心位置を変えることにより開花時期や生育が制御でき,出荷調節が可能であることが明らかとなった.また,種内交雑だけでなく,サンイントラノオをはじめとした種間での交雑育種により開花期間の延長や開花部位の拡大による観賞価値の向上が可能であり,園芸的利用が可能であることが示された.

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