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大学・研究所にある論文を検索できる 「偏微分方程式を用いたSchramm-Loewner発展の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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偏微分方程式を用いたSchramm-Loewner発展の解析

髙山 大河 中央大学

2022.09.22

概要

複素上半平面をH={z∈C:Imz>0}と書く.ただし,Cは複素平面を表す.曲線γを原点を出発点として時間t∈[0,∞)と共に単調に伸びていく単純曲線γ=γ[0,t],t∈[0,∞)とする.ただし,γ(0,∞)∈Hである.ここで,gtをH\γ(0,t]→Hの共形変換とすると,gt(z)は次のLoewner微分方程式に従う.

∂∂tgt(z)=2gt(z)−Ut,g0(z)=z.(1.1)

ただし,UtはLoewner微分方程式の駆動関数であり,Ut=gt(γ(t))である.Schrammは[1]で,Loewner微分方程式(1.1)の駆動関数をUt=√κBt,κ>0とした.ただし,Btは1次元標準ブラウン運動である.つまり,

∂∂tgt(z)=2gt(z)−√κBt,g0(z)=z,z∈H.(1.2)

この初期値問題の解として得られる共形変換の族{gt}t≥0をchordal Schramm-Loewner発展(Schramm-Loewner evolution)と呼び,パラメータκを付してSLEκと略記する.また,(1.2)を複素上半平面HでのchordalSLEκに対する前進微分方程式とする.この時,γ(0)=0とし,t>0に対してγ(t)を√κBt=gt(γ(t))によって定義する.すると,γ[0,t]は一般には単純曲線ではないが,tに関して連続曲線を与えることが証明されており,γ[0,t]をSLEκ曲線と呼ぶ.また,SLEκ曲線の振る舞いは0<κ≤4,4<κ<8,κ≥8の3相で異なる特徴を持つ.まず,0<κ≤4の時,SLEκ曲線は単純曲線となる.次に,4<κ<8の時,SLEκ曲線は自分自身や実軸と接することはあるが交わることのない曲線となる.ただし,曲線が伸びていくにつれ,曲線で囲まれた領域は複素上半平面Hを覆いつくしていくが,曲線自身でHが埋めつくされることはない.そして,κ≥8の時,複素上半平面Hを埋めつくしていく曲線となる.

また,SLEκは幾つかの2次元格子上の統計物理モデルの連続極限と対応していることが知られている[6,7].例として,κ=2,3,4,6,8において,SLEκはそれぞれloop-erased random walk,臨界Ising界面曲線,臨界4状態Potts模型,臨界浸透探索過程およびuniform spanning treeに対応する.

参考文献

[1] Schramm, Oded : Scaling limits of loop-erased random walks and uniform spanning trees. Israel J. Math. 118 (2000), 221–288, arXiv:math.PR/9904022

[2] Lyons, T. J., Margarint, V., Nejad, S. : Convergence to closed-form distribution for the backward SLEκ at some random times and the phase transition at κ = 8. arXiv:math.PR/1910.05519v1

[3] 稲見武夫 (1998) 「常微分方程式 理工系の基礎数学 3」 岩波書店

[4] 小谷眞一,俣野博 (2006) 「微分方程式と固有関数展開」 岩波書店

[5] 松本裕行 (2004) 「応用のための確率論・確率過程」 サイエンス社

[6] W. Kager and B. Nienhuis : A guide to stochastic L¨owner evolution and its application. J. Stat. Phys. 115 (2004), 1149-1229, arXiv:math-ph/0312056v3

[7] D. Chelkak, H. Duminil-Copin, C. Hongler, A. Kemppainen, and S. Smirnov : Convergence of Ising interfaces to Schramm’s SLE curves. Comptes Rendus Math´ematique. Acad´emie des Sciences. Paris, 352(2), (2014), 157–161, arXiv:1312.0533v2

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