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大学・研究所にある論文を検索できる 「全身性強皮症患者に出現する硬組織代謝異常のメカニズム研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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全身性強皮症患者に出現する硬組織代謝異常のメカニズム研究

目見田 匠 広島大学

2022.03.23

概要

【背景】
全身性強皮症(以下 SSc)は、皮膚硬化、血管障害、免疫異常を特徴とする自己免疫疾患であ る。これまでに、多臓器にわたる全身症状および、口腔内症状には多様な報告があったものの、決定的な病態メカニズムの解明には至っておらず、その発症の原因は不明なままとなっている。 2017 年当院歯周診療科に歯の破折を主訴に SSc 患者が来院した。口腔内をデンタル X 線およ び CBCT で診査すると、歯根外部吸収が 28 本中 11 本に認められた。 破折した歯の一部に対 して HE 染色を行った結果、歯の内部に骨様組織の増生と破歯細胞様の細胞が認められた。本 症例の診断は多発性骨置換性歯根外部吸収(以下 Multiple External Root resorption; MERR)と した。SSc 患者における MERR は本症例の他、スペインで 1 例報告されていることから、 MERR は SSc に関連するものと考えた。そこで、本研究では SSc と MERR の関係性を、臨床 データを用いて明らかにすること、および MERR の発症メカニズムを解明することを目的と した。

【方法】
SSc と MERR の関係を調べるために、当院リウマチ膠原病科を受診した SSc 患者の口腔内の実態調査を行い、SSc患者における MERR の発症率を調査した。さらに、MERR を発症した SSc 患者(MERR-SSc)と MERR を発症していない SSc 患者(non-MERR-SSc)の保有している全身および口腔内症状について有病率を比較した。
次に、健常者由来 iPS 細胞を理化学研究所から購入し、対照群として MERR-SSc 患者から疾患特異的 iPS 細胞を樹立した。健常者由来 iPS 細胞および、MERR-SSc 由来 iPS 細胞はそれぞれ胚葉体を経て間葉系幹細胞(healthy-MSC, SSc-MSC)へと分化させた。
さらに healthy-MSC、SSc-MSC で発現している遺伝子を網羅的に調べるために、RNA シークエンスを行い、発現に差があった遺伝子に関しては gene ontology で解析し関連する遺伝子群を抽出した。また、関連する遺伝子の発現を、リアルタイム PCR 法で確認した。
続いて、healthy-MSC、SSc-MSC の骨分化能を比較するために、骨分化培地で培養し、アリザリンレッド染色で比較した。

【結果】
SSc 患者の口腔内実態調査の結果、今回の研究に参加した 41 名の SSc 患者のうち 4 名 (9.8%)の患者に MERR を認めた。
尖部潰の有病率は MERR-SSc で有意に高い値を示した。 (MERR-SSc vs. non-MERR-SSc, 75% vs. 16.2%, p < 0.05) 一方で、その他の全身症状では有意 な差は認められなかった。顔面の皮膚硬化 (100% vs. 10.8%, p < 0.01) 、顎顔面のカルシノーシス (75% vs. 0%, p < 0.01) 、開口制限 (75% vs. 18.9% p < 0.05) 、顎関節症状 (50% vs. 2.7%,p < 0.05) 、舌の固縮 (75% vs. 2.7%, p < 0.05) の有病率はそれぞれ MERR-SSc において有意に高い値を示した。
RNA シークエンスを行った結果、Healthy-MSC と比較して、SSc-MSC で発現が 2 倍以上上していた遺伝子は 1333 個、また、2以上発現が減少していた遺伝子は 3077 個であった。それらの遺伝子について gene ontology 解析を行った結果、TGFβ シグナルパスウェイに関連する遺伝子群をはじめ、いくつかの関連する遺伝子群が抽出された。
さらに、TGFβ シグナルに関連する遺伝子の発現を Healthy-MSC と SSc-MSC とで比較したところ、SSc-MSC で数の骨関連遺伝子の発現が顕著に増加していた。また、骨分化培地で培養し、アリザリンレッド染色を行ったところ、Healthy-MSC と比較して、SSc-MSC ではアリザリンレッド陽性のカルシウム沈着を多く認めた。

【考察】
多発性歯根外部吸収は世界でも孤発例として 10 例程度であり、同一の疾患患者から 10%近く認められたことは、MERR が強皮症に起因していることが強く示唆された。また、MERR- SSc の患者群では全身症状は多様であるが、顎顔面領域の症状では均一性が高く、MERR-SSc患者の病態メカニズムは似ていることが予想された。このことから、SSc のような多因子疾患で、且つ少数のサンプル数であっても、疾患特異的 iPS 細胞を使用することで、メカニズム解明が可能であると考えた。また、患者由来 MSC を用いた RNA-seq の結果から、健常者 MSCと比較して、非骨分化誘導の状態でも高い骨分化能を有することが示唆される遺伝子群が抽出された。また患者由来 MSC は骨分化誘導が早期に進むことからも、MERR-SSc では、高い骨分化能を有することが確認できた。本研究の結果から、MERR-SSc 患者では、露出した象牙質を足場に骨分化能の高い MSC が骨形成を行い、結果として外部吸収が進行していることが考察された。

【結論】
本研究の結果から、多発性骨置換性歯根外部吸収を保有している全身性強皮症患者では、骨分化能が高い MSC が存在し、そのことが MERR をはじめとした硬組織の代謝異常を引き起こしている可能性が示唆された。

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