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大学・研究所にある論文を検索できる 「Ewing肉腫におけるslow-cycling cellsの同定と特徴の探索」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Ewing肉腫におけるslow-cycling cellsの同定と特徴の探索

八尋, 俊輔 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Identification and characterization of slowcycling cells in Ewing sarcoma

八尋, 俊輔
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8511号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482259
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Identification and characterization of slow-cycling cells
in Ewing sarcoma
Ewing 肉腫における slow-cycling cells の同定と特徴の探索

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
整形外科学
(指導教員: 黒田 良祐 教授)
八尋 俊輔

はじめに
Ewing 肉腫は小児から若年成人に好発する骨原発悪性腫瘍である。手術、化学療法、放射線
療法を組み合わせた集学的治療の発達により治療成績は向上し、局所発生例の5年全生存率は
65~75%まで改善してきた。しかし、適切に根治的治療を行われたとしても、再発・転移が生じた
患者では5年全生存率が25%未満と報告されており、非常に予後が悪いと考えられる。Ewing 肉
腫の再発・転移のメカニズム解明やより効果的な治療法の開発が求められる。
がん細胞の集団には表現型に不均一性があると言われており、がんの治療抵抗性の原因として
考えられている。例えば、細胞増殖速度の違いにおいてもがん細胞集団の不均一性はみられ、こ
の細胞周期が緩やかな細胞集団である slow-cycling cells(SCCs)は、悪性黒色腫、結腸癌、乳
癌、膠芽腫など様々な悪性腫瘍において再発・転移への関与が報告されている。Ewing 肉腫の
腫瘍増大・進行、抗がん剤抵抗性、再発・転移においても SCCs が重要な役割を担っている可能
性があるが、我々の渉猟しえた限りでは、未だにその報告はない。そこで、本研究の目的は
Ewing 肉腫細胞株から SCCs を同定・分離し、その特性を調べることである。
対象と方法
今回、我々はヒト Ewing 肉腫由来細胞株中の SCCs を同定するために蛍光色素である
carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester(CFSE)を使用したラベル保持システムを利
用することとした。CFSE は細胞内に取り込まれると細胞内酵素と反応して蛍光を発するようになる。
一旦 CFSE でラベルされた細胞は、その後分裂する度に細胞内の蛍光が娘細胞に分かれるため、
分裂を繰り返す細胞においては蛍光が徐々に減弱していく。一方で、細胞周期が緩やかな SCCs
は CFSE の蛍光強度が減弱することなく保持される。この CFSE の性質を用いて蛍光強度の違い
を利用することで、分裂・増殖を繰り返す細胞(non-SCCs)と SCCs とを区別することが可能になる。
まず、この CFSE でラベルした細胞を5日間培養し、細胞集団の CFSE の蛍光状態を観察した。
また、より in vivo に近い環境を再現するため、CFSE でラベルした細胞を超低接着プレート内で
スフェアとして3次元培養を行い、培養開始5日目に蛍光顕微鏡で観察を行った。同細胞における
CFSE 蛍光強度をフローサイトメトリーで解析し、蛍光強度の強い上位10%の細胞集団を細胞周
期が緩やかな SCCs、残り90%の細胞集団を non-SCCs と定義した。
SCCs の特徴を評価するために、SCCs と non-SCCs をソーティングし、別々に超低接着プレー
ト上で無血清培地を用いて6日間培養を行うスフェア形成能試験を行った。また、全細胞、SCCs、
non-SCCs の細胞周期の分布についてフローサイトメトリーを用いて解析した。SCCs の抗がん剤
抵抗性を評価するため、CFSE でラベルした細胞をスフェア培養し、培養開始3日目から5日目の2
日間、抗がん剤(ドキソルビシンとビンクリスチン)を投与した群と、コントロールとして培地交換のみ
をおこなった群を設定し、培養開始5日目のスフェアにおける CFSE 陽性領域の面積を算出し、比
較検討した。さらに、フローサイトメトリーを用いて Annexin V と Propidium Iodide の二重染色後
に全細胞、SCCs、non-SCCs のアポトーシス細胞の割合を評価し比較した。最後に、ソーティング
した SCCs と non-SCCs の mRNA を回収し、RNA シーケンスによる網羅的遺伝子解析を行い遺

伝子発現の相違を調べた。
結果
細胞を CFSE でラベル後、スフェア培養を開始して5日目に、蛍光顕微鏡で観察するとスフェア
内に少数の CFSE 陽性細胞がみられた。更に、フローサイトメトリーでも強い蛍光を保持している
細胞集団を確認することができた。スフェア形成能試験では SCCs は non-SCCs より有意に高い
スフェア形成能を示した(P<0.05)。細胞周期解析において、SCCs は non-SCCs と比較して
G0/G1期の割合が有意に高い特徴的な細胞周期の分布を示した(P<0.05)。また、ドキソルビシ
ンやビンクリスチンに曝露したスフェアでは、抗がん剤曝露を行わないコントロールのスフェアと比
較して、スフェア内での CFSE 陽性領域の面積の割合が高かった(P<0.05)。これは、抗がん剤
曝露下で、細胞周期が緩やかな細胞の方がより多く生存していることを示唆していると考えられた。
更に、抗がん剤曝露後のフローサイトメトリーによるアポトーシス試験では、SCCs でアポトーシスが
誘導された細胞の割合が有意に低く(P <0.05)、SCCs は抗がん剤抵抗性を有していると考えら
れた。RNA シーケンスによる網羅的遺伝子解析にて、SCCs で2倍以上の発現上昇を示した255
個の遺伝子と SCCs で発現量が2分の1未満であった58個の遺伝子を同定することができた。さら
に、2倍以上の発現上昇を示した255個の遺伝子を用いた Pathway 解析では、11個の Pathway
が検出され、これらのパスウェイに関わる遺伝子の中には、G1期から S 期への細胞周期の進行を
抑制する遺伝子や腫瘍の悪性度に関わる遺伝子などが含まれており、これらは本研究で同定・分
離した Ewing 肉腫細胞株中の SCCs の特徴を支持する結果であった。
考察
今回、我々は CFSE を使用したラベル保持システムを用いて、Ewing 肉腫細胞株から
SCCs を同定・分離することに初めて成功した。この SCCs は non-SCCs と比較して高いス
フェア形成能、G0/G1 期の割合が高い特徴的な細胞周期の分布、抗がん剤抵抗性を示した。
これらの特徴は、過去に他のがん種で報告されている SCCs の特徴と類似した結果であり、
本研究で用いた Ewing 肉腫の SCCs の同定手法は、他がん種の研究と同様に有用であると
考えられた。また、RNA シーケンスによる網羅的遺伝子解析では SCCs で 2 倍以上の発現
上昇を示した 255 個の遺伝子を同定することができ、その中には SCCs の特徴を支持する
遺伝子も含まれていた。以上から、本研究で同定・分離した Ewing 肉腫の SCCs は Ewing
肉腫の再発・転移に関する病態理解や新規治療法の開発に役立つ可能性があると考える。

神戸大学大学院医学(系)研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
受付番号

甲 第 3255号





八尋俊輔

1

I
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nEwingsarcoma

論文題目

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n

l
o
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l
l
sの同定と特徴の探索
Ewing肉腫における s

主 査
審査委員

Examiner

C
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fExaminer
副 査

v
1
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1
n
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副 査

v
1ce・exammer



t

\初二息

(要旨は 1
, 000字 ∼ 2
, 000字程度)
研究の背景

E
w
i
n
g肉腫は小児から若年成人に好発する骨原発悪性腫瘍である 。集学的治療の発達に
より局所発生例の 5
年全生存率は65 75
%まで改善してきた。しかし、再発・転移例は末だ
に予後が悪く、再発・転移のメカニズム解明や新規治療法の開発が求められる。近年、が
ん細胞集団内に、細胞周期が緩やかな s
l
o
w
c
y
c
l
i
n
gc
e
l
l
s(
S
C
C
s
)が存在し、がんの再発・
転移への関与が報告されている。 E
w
i
n
g肉腫の再発・転移にも s
e
c
sが関与している可能性
があるが、研究者らの渉猟しえた限り未だにその報告はない。本研究の目的は E
w
i
n
g肉 腫
細胞株から s
e
c
sを同定し、その特徴を調べることである。

方法

s
e
c
sの同定手法として細胞内で酵素と反応し蛍光を示す c
a
r
b
o
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s
u
cci
n
i
m
i
d
y
le
s
t
e
r(
C
F
S
E
) を使用したラベル保持システムを用いた。 C
F
S
Eでラベルされ

た細胞は蛍光を発するが、細胞分裂ごとにその蛍光が娘細胞に分かれるため、分裂を繰り
返す細胞は蛍光が徐々に減弱する。一方で、細胞周期が緩やかな secsでは強い蛍光が保持
されるため、蛍光強度の違いから増殖細胞と secsの区別が可能となる。本研究では CFSE
でラベルしたヒト Ewing肉腫由来細胞株 SK-ES-1を超低接着プレート内でスフェアとして 5
日間 3次元培養し、フローサイトメトリーで蛍光強度の強い上位 10
%の細胞集団を secs、残
り90%の細胞集団を Non-SCCsと定義した。まず、ソーティングした secs と Non-SCCsを無
血清培地を用いて超低接着プレート上で別々に 6日間培養し形成されたスフェア数をカウ
ントしてスフェア形成能を比較した。次に、フローサイトメトリーで PI染色を用いた細胞
周期解析を行い、全細胞、 secs、Non-SCCsの細胞周期の分布を比較した。また、スフェア
培養開始3日目から 2日間、抗がん剤(ドキソルビシン、ビンクリスチン)に曝露した群と
抗がん剤に曝露していないコントロール群において、蛍光顕微鏡でスフェア内の CFSE陽性
領域の面積を計測し、 AnnexinVとPIの二重染色後にフローサイトメトリーで全細胞、 secs、
Non-SCCs のアポトーシス細胞の割合を比較し、抗がん剤抵抗性を評価した。最後に、 RNA

シーケンスで secsと Non-SCCsの網羅的遺伝子解析を行った。統計学的解析では、 2群間の
比較を unpairedt-test、3群間の比較を ANOVAにより検定し、 P 結果
細胞を CFSEでラベリング後、 5日間培養し蛍光顕微鏡で観察すると、形成されたスフェ
ア内に少数の CFSE陽性細胞がみられた。フローサイトメトリーでも強い蛍光を保持してい
る細胞集団を確認できた。スフェア形成能試験で secsは Non-SCCsより有意に高いスフェ
ア形成能を示した (P<0
.0
5
)。細胞周期解析で secsは GO/Gl
期の割合が有意に高い特徴的
5
)。 ドキソルビシンまたはビンクリスチンに曝露する
な細胞周期の分布を示した (P<0.0

とコントロール群と比較して、 secsでは細胞周期が緩やかな細胞を反映するスフェア内の
CFSE陽性領域の面積の割合が高く (P 5
)、さらに フロ ーサイトメト リーでもアポトー

シス細胞の割合が有意に低く (P<0
.0
5
)、secs における抗がん剤抵抗性が示された
。 RNA
シーケンスでは secsで Non-SCCsと比較して 2倍以上の発現を示した 255個の遺伝子が同定
され、これらの遺伝子を用いたパスウェイ解析では Gl期から S期への細胞周期の進行を抑
制する遺伝子や腫瘍の悪性度に関わる遺伝子などが含む 1
1個のパスウェイが検出され、本
研究の secsの特徴を支持する結果であった。
考察および結論
本研究は、初めて既存の Ewing肉腫細胞株から secsを同定に成功した研究である。本研
究で同定した secsは高いスフェア形成能、 GO/Gl期の割合が高い特徴的な細胞周期の分布、

抗がん剤抵抗性を有しており、他がん種で報告されている

s
e
c
sと同様の特徴を有していた。

wing肉腫中の s
e
c
sは Ewing肉腫の病態理解や新規治療法の開発に役立
本研究で得られた E
つ可能性があると考えられ、 価値ある業績であると認める 。

【結論】
以上、同分野において重要な知見を得ることに成功し、価値のある成果を排出したものと
認める。よって、本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格があると認める。

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