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書き出し

γδT由来iPS細胞からの特異的な遺伝子発現と細胞傷害性を有するγδT細胞の再誘導

村井, 信幸 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Re-generation of cytotoxic γδT cells with
distinctive signatures from human γδT-derived
iPSCs

村井, 信幸
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8694号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485878
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

学位論文の内容要旨

Re-generation of cytotoxic γδT cells with distinctive signatures from
human γδT-derived iPSCs

γδT由来 iPS 細胞からの特異的な遺伝子発現と細胞傷害性を有する γδT
細胞の再誘導

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
形成外科学

(指導教員:寺師 浩人教授)

村井 信幸

【背景】γδT 細胞は皮膚や腸管に分布し MHC 非拘束性にさまざまな種類の腫瘍細胞を認識して
攻撃することが知られている。体内の T 細胞における割合は数%に過ぎないため、ゾレドロン酸を
用いて体外で増幅させて本人に戻す自家 γδT 細胞療法が行われてきた。しかし患者によって増幅
率には違いがあり、要する時間やコスト等の問題もある。
そこで我々は人工多能性幹細胞(iPS 細胞)を用いた他家移植を念頭に研究を行った。αβT 細胞
から樹立した iPS 細胞を αβT 細胞に再誘導すると、もとの細胞と同一の TCR 再構成を保持するこ
とが報告されている。このことが γδT 細胞にも応用できると考え、γδT 細胞由来 iPS 細胞の作製と血
球前駆細胞への分化誘導について報告した(渡邉, 2018)。なお、2019 年に Zeng らが NK 細胞の
分化誘導法を用いて γδT 由来 iPS 細胞から”mimetic γδT 細胞”と称する細胞を作製したと報告し
たが、この細胞は体内には存在しない人工的な細胞であったと結論づけており、iPS 細胞由来 γδT
細胞の作製に関する報告はこれまでに行われてない。
【目的】我々の樹立した γδT由来 iPS 細胞から γδT 細胞が再誘導できるか、再誘導された γδT 細
胞(iγδT)が抗腫瘍性を持つか、そして末梢血由来の γδT 細胞と近い遺伝子発現型を持つかを明
らかにすることを目的に研究を行った。
【方法】既報を元に分化誘導を行い、PCR やシークエンスで遺伝子再構成の保持を確認する。フロ
ーサイトメトリーでマーカーとなる細胞表面分子の発現を評価する。標識した腫瘍細胞と共培養し
て腫瘍傷害性を検証し、末梢血由来の免疫細胞と比較する。シングルセル RNA シークエンス
(scRNAseq)で成人末梢血由来の γδT 細胞と遺伝子発現を比較する。
【結果①】既報を参考に、10 日間の Feeder free、20 日間の On feeder、その後再度 Feeder free 条
件にして HMBPP 刺激を加えることで 2 株の γδT由来 iPS 細胞から CD3(+)γδTCR(+)の細胞すな
わち γδT を誘導することができた。これを iγδT と名付けた。
【結果②】iγδT は γδTCR のみを発現し αβTCR を発現していないことが FCM で明らかになった。誘
導産物のうち iγδT の割合は 50%ほどであった。iγδT を sort して γδ ゲノム PCR を行うと iPS 細胞
の状態と同一の Vγ9δ2 遺伝子再構成を保持していた。同じく CD3 を指標に sort した iγδT の
TCRγ 鎖、δ 鎖のレパトア解析を行うと Monoclonal に増殖していることが分かった。
【結果③】標識した腫瘍細胞株と共培養を行った。非接着性の Jurkat(ATL 由来)は共培養後に
FCM で生細胞数を評価した。肝細胞がん由来 Huh-7、大腸がん由来 SW480 との共培養はタイム
ラプス撮影で測定した腫瘍細胞の面積を細胞傷害性の指標とした。
iγδT を含む誘導細胞は 3 種の腫瘍細胞株に対し再現性を持って傷害性を示した。HLA タイピ
ングの結果から、これらの細胞傷害作用は HLA 非拘束性であることが確認された。また、末梢血
由来体外増幅 γδT 細胞(PBγδT)・末梢血由来の NK 細胞と比較したところ同等の傷害性を示した。

【結果④】iγδT の細胞傷害機構を評価した。Jurkat に対する傷害性は濃度依存的・時間依存的で、
Effector:Target 比 0.5:1 の場合 1 日で約 50%の腫瘍細胞を傷害し、効果は 4 日間続いた。
γδTCR と NKG2D に対する中和抗体を添加すると、それぞれの場合で傷害性が低下した。
PBγδT と同様にグランザイム・パーフォリンを発現していたが、IFNγ の発現は低かった。T 細胞関
連マーカーの発現をフローサイトメトリーで評価すると、iγδT は CD7 の発現が高い一方で CD5 お
よび CD25(IL-2R)の発現は低く、そのほとんどが CD45RA(+)CD27(-)のエフェクターT 細胞であっ
た。
【結果⑤】未刺激の末梢血単核球を陰性対照に、iγδT と PBγδT の遺伝子発現を scRNAseq で解
析した。全体としては 6 つのクラスターに分けられた。主たるクラスターは iγδT がクラスター1、
PBγδT がクラスター2 となった。クラスター1 と 2 では CD8Aの発現に違いが見られた。αβT 細胞が
大半を占める未刺激の PBMC には、クラスター1 の細胞すなわち iγδT と同等の細胞が含まれてい
た一方で体外増幅 γδT 細胞(PBγδT)の主たる構成細胞と同等であるクラスター2 の細胞は含まれ
ていなかった。iγδT では KIT の発現が高い一方で Pan T 細胞のマーカーとして知られる CD2 や
CD5 は陰性であった。また、NK 関連マーカーを発現しており、免疫チェックポイント分子や MHC
関連遺伝子を発現する細胞は少なかった。
【考察】
αβT 細胞の分化に不可欠の BCL11b は γδT 細胞の分化には必須ではないといわれ、我々の細胞
でも陰性であった。BCL11b を発現しない γδT 細胞は CD5 陰性になるとの報告があり、この点も
我々の結果と矛盾しなかった。CD5 陰性の γδT 細胞は陽性のものより細胞傷害性が高いとの報告
がある。
iγδT のメインクラスターは未刺激の PBMC にも含まれる細胞であったが、HMBPP による刺激で
は PBMC からはあまり増幅できなかった。これまでに報告された成人の末梢血由来 γδT 細胞のサ
ブセットで完全に一致するものはなかったが、CD2 低発現 CD7 陽性で IFNγ の産生が少ないとい
う特徴は胎児胸腺由来の γδT 細胞と一致する。CD45RA と CD27 の発現から最終分化したエフェ
クターT 細胞であると考えられる。
iγδT は αβTCR が陰性であるため GVHD のリスクが低くなることが期待される。CAR-T や TCRT 細胞のキャリアとして用いることも可能と考えられる。高くない誘導効率および他種動物由来の試
薬や細胞を使用していること、正常細胞への傷害性の有無など、実際に臨床で使用するにはまだ
いくつかの課題が残るものの、本研究は iPS 細胞から機能的な γδT 細胞が再誘導可能であること
を示したものであり、iPS 細胞由来 γδT 細胞を用いた新たな免疫療法が実現に向けて一歩前進し
たと考えられる。

神戸大学大学院医学(
系)
研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
受付番号

甲 第 3296号

氏 名

村井信幸

y
oT由来 i
PS細胞からの特異的な遺伝子発現と細胞傷害性を有するy
oT
論 文 題 目 1 細胞の再誘導

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主 査
審査委員

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副 査

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副 査

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e・
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久イ←あ炒
摩下

(要旨は 1, 0 00字∼ 2, 0 00字程度)

恥ジ

【背景・目的】
裕T細胞は皮膚や腸管に分布し MHC非拘束性にさまざまな種類の腫瘍細胞を認識して攻撃するが、体内の

T細胞における割合は少なく、体外で増幅させる自家裕T細胞療法が行われてきた。しかし患者により増幅率に
差があり、増幅に要する時間やコスト等が問題となる。
8T由来人工多能性幹細胞(i
PS細胞)から”mi
me
t
icy
oT細胞”なる細
過去に NK細胞の分化誘導法を用いy

胞が作製されたが、これは体内には存在しない人工的な細胞で、iPS細胞由来裕T細胞は作製されていない。
裕T細胞由来のiPS細胞から裕T細胞を再誘導できれば免疫療法に使用できる可能性がある。本研究はiPS
細胞から裕T細胞を再誘導し、抗腫瘍性や末梢血由来裕T細胞と近似した逮伝子発現の有無を検討した。
【対象と方法】
独自に樹立した裕T細胞由来iPS細胞を、既報にならい] 0日間の F
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e、20日間の Onf
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r、その
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e条件で(
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e(HMBPP)刺激を加え分化誘導した。
後再度 F

これを、 PCRやシークエンスで遣伝子再構成の保持を確認し、フローサイトメトリーで細胞表面分子の発現を評
r
k
a
t
価した。腫瘍傷害性は標識した腫瘍細胞と共培養し検討し、末梢血由来免疫細胞と比較した。その際、Ju
(ATL由来)は共培養後に FCMで生細胞数を評価し、肝細胞がん由来 Huh-7、大腸がん由来 SW480との共培

タイピング
養ではタイムラプス撮影で腫瘍細胞の面積を測定し細胞傷害活性を評価した。 HLA拘束性はHLA
を行い検討した。遣伝子発現はシングルセル RNAシークエンス (scRNAseq)で成人末梢血由来の裕T細胞と比
較した。
【結果】
2株 の y
oT由来iPS細胞から CD3(+)
y
oTCR(+)細胞、すなわちy
oTを誘導しiyoTとしてその後の実験に用い
oTは 裕TCRのみを発現しctPTCRの発現はなかった。誘導産物のうち
た。遣伝子再構成を確認したところ、iy

咽 Tの割合は 50%ほどで、iyoTを s
o
rtして裕ゲノム PCRを行うとiPS細胞の状態と同一の Vy9
o
2遺伝子再構
ortしたiyoTの TCR
y鎖、 8鎖のレパトア解析で Monoclonal増殖を確
成を保持していた。同じく CD3を指標に s

認した。
oTを含む誘導細胞は 3種の腫瘍細胞株に傷害性を示し、 HLAタイピ
標識した腫瘍細胞株との共培養で、iy

裕T
)・末梢血由来
ングでは細胞傷害活性は HLA非拘束性であった。また、末梢血由来体外増幅裕T細胞 (PB
の NK細胞と同等の傷害活性を示した。
傷 害 活 性 は 裕TCRや NKG2D に対する中和抗体で低下し、グランザイム・パーフォリンは発現していたが、
IFN
yの発現は低かった。 T細胞関連マーカーの発現をフローサイトメトリーで評価すると、iyoTは CD7を高発現

IL-2R)は低発現で、そのほとんどが CD45RA(+)CD27(-)のエフェクターT細胞であった。
しCD5および CD25(
oTとPB
裕Tの遺伝子発現を scRNAseqで解析したところ、全体
未刺激の末梢血単核球を陰性対照として、iy
oTは別のクラスターとなり、 CD8Aの発現に
としては 6つのクラスターに分けられ、主たるクラスターはiyoT、PBy
oTと同等の細胞が含まれていた。
違いが見られた。 aPT細胞が大半を占める未刺激の PBMCにはiy
瑶 Tは KITの発現が高い一方で PanT紬胞のマーカーとして知られる CD2や CD5は陰性であった。また、

NK関連マーカーを発現しており、免疫チェックポイント分子や MHC関連追伝子の陽性細胞は少なかった。

【考察】
a~T 細胞の分化に不可欠の BCLllb は裕T 細胞の分化には必須ではないといわれ、我々の細胞でも陰性で

あった。 BCLl!bを発現しない裕T細胞は CD5陰性になると報告され、この点も我々の結果と一致した。 CD5陰
性 の 裕T細胞は陽性のものより細胞傷害活性が高いとも報告されている。

瑾 Tのメインクラスターは未刺激の PBMCにも含まれる細胞であったが、 HMBPPによる刺激では PBMCから
はあまり増幅できなかった。これまでに報告された成人の末梢血由来裕T細胞のサブセットで完全に一致するも
のはなかったが、 CD2低発現 CD7陽性で 1FNYの産生が少ないという特徴は胎児胸腺由来の裕T細胞と一致
する。 CD45RAとCD27の発現から最終分化したエフェクターT細胞であると考えられる。

咽 T は ⑲TCRが陰性であるため GVHDのリスクが低くなることが期待され、 CAR-Tや TCR-T細胞のキャリ
アとして用いる可能性も考えられる。誘導効率が高くないこと、他種動物由来の試薬や細胞を使用していること、
正常細胞への傷害活性の有無など、実際に臨床で使用するにはまだ課題は多いが、本研究はiPS細胞から機
能的な裕T細胞が再誘導可能であることを示したものであり、iPS細胞由来裕T細胞を用いた新たな免疫療法
が実現に向けて一歩前進したと考えられる。。

【結論】
本研究はiPS細胞から機能的な裕T細胞が再誘導可能であることを示したものであり、まだ課題は多いものの

PS細 胞 由 来 裕T 細胞を用いた新たな免疫療法の開発につながるものと考えられ、重要な貢献をした価値
i
ある研究であると認める。よって、本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格があると認める。

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