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大学・研究所にある論文を検索できる 「マクロファージとの相互作用により誘導されるYKL-40/osteopontin-integrin β4-p70S6K経路の早期食道扁平上皮癌における生物学的・臨床的な意義」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

マクロファージとの相互作用により誘導されるYKL-40/osteopontin-integrin β4-p70S6K経路の早期食道扁平上皮癌における生物学的・臨床的な意義

浦上, 聡 神戸大学

2023.09.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Biological and clinical significance of the
YKL-40/osteopontin-integrin β4-p70S6K axis
induced by macrophages in early oesophageal
squamous cell carcinoma

浦上, 聡
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-09-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8728号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485912
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)


学位論文の内容要旨

Biological and clinical significance of the YKL-40/osteopontin-integrin β4-p70S6K axis
induced by macrophages in early oesophageal squamous cell carcinoma

マクロファージとの相互作用により誘導される YKL-40/osteopontin-integrin β4-p70S6K 経路の
早期食道扁平上皮癌における生物学的・臨床的な意義

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
消化器内科学
(指導教員:横崎 宏 教授, 児玉 裕三 教授)

浦上 聡

【背景・目的】
癌微小環境は、食道扁平上皮癌(ESCC)を含む多くの癌の進展に深く寄与し、その主な構成
細胞であるマクロファージは腫瘍進展を抑制する M1 マクロファージと促進する M2 マクロファ
ージ(M2)に大別される。申請者の研究室では、M2 が ESCC の進展に寄与することを報告して
きたが、発癌初期段階における M2 の役割に関しては未解明である。内視鏡的粘膜下層剥離
術(ESD)による ESCC 切除検体にて、M2 マーカーである CD163 と CD204 陽性炎症細胞の浸
潤数が、非腫瘍領域と比べ腫瘍領域で、上皮・間質において有意に増加している事がわかり、
M2 が発癌初期段階でも腫瘍進展に寄与する可能性が示唆された。そこで、上皮内腫瘍モデ
ルであるヒト食道扁平上皮細胞株(Het-1A)と、末梢血由来マクロファージとの間接共培養系を
確立し、共培養後の Het-1A の悪性形質、シグナル伝達、遺伝子発現の変化を解析した。
【材料と方法】
ヒト末梢血から CD14 陽性単球を自動磁気細胞分離装置により選択的に回収した。さらにサ
イトカインを用いて種々のマクロファージへ分化誘導させ、Het-1A と間接共培養を行い、シグ
ナル伝達、増殖能・運動能を解析した。細胞内のシグナル伝達はウエスタンブロット、増殖能
は MTS 試薬を用いた 492nm の吸光度の測定、運動能は transwell migration assay で評価し
た。共培養後のリン酸化シグナル変化はホスホキナーゼアレイ、サイトカイン分泌の変化は培
養上清を用いたサイトカインアレイと ELISA で測定した。さらに、Het-1A に p70S6K 阻害剤、
recombinant human YKL-40 (rhYKL-40)、recombinant human osteopontin (rhOPN)を作用さ
せ、シグナル伝達、増殖能・運動能の変化を検討した。Binding assay に関しては、Het-1A か
ら抽出した蛋白質に抗 integrin β4(β4)抗体を混合して免疫沈降させ、その沈殿物に
rhYKL-40 と rhOPN を添加してβ4 と結合しているかをウエスタンブロットで確かめた。β4 のノ
ックダウンは、siRNA(siITGB4)と Lipofectamine RNAiMAX を用いて行った。ESCC に対する
ESD 切除標本 83 例での CD68、CD163、CD204、β4 の免疫組織化学は Leica Bond-Max
automation と Leica Refine detection kit を用いた。Carcinoma in situ (CIS)領域の上皮・間質の
炎症細胞浸潤数、及び腫瘍細胞の発現強度をそれぞれ low 群と high 群に分けて臨床病理学
因子との関連を検討した。また Kaplan-Meier 法を用いて、累積の ESD 後再発率との関連を検
討した。
【結果】
サイトカインで誘導した種々のマクロファージと Het-1A を共培養すると、M2 と共培養した

Het-1A で運動能・増殖能が最も亢進していた。ホスホキナーゼアレイを用いてリン酸化シグナ
ルの変化を網羅的に検索すると、M2 と共培養した Het-1A においてリン酸化 p70S6K の亢進
がみられ、ウエスタンブロットでも mTOR-p70S6K 経路の活性化を確認した。また、M2 と
Het-1A との相互作用を介在する液性因子を検索するため、培養液の上清を用いたサイトカイ
ンアレイ及び ELISA を行い、Het-1A と M2 の単独培養と比較して Het-1A/M2 の共培養の培
養液において YKL-40 と OPN の分泌が有意に上昇していた。さらに rhYKL-40 と rhOPN を
Het-1A に作用させると、mTOR-p70S6K 経路を介して運動能・増殖能が亢進した。続いて
Het-1A における YKL-40 と OPN の受容体の検索を行った。両者に共通する有名な受容体は
インテグリン・ファミリーであり、integrin sampler kit を用いた網羅的な発現解析をウエスタンブ
ロットで行ったところ、種々のマクロファージと共培養した Het-1A における活性化 p70S6K シグ
ナル伝達分子と同様の発現パターンを示したβ4 に注目した。免疫沈降を用いた binding
assay にて、YKL-40 と OPN がβ4 に結合する事が示された。また、2 重蛍光免疫染色では、
Het-1A において YKL-40 又は OPN がβ4 と共局在することがわかった。これらから、YKL-40
と OPN はβ4 と複合体を形成して p70S6K 経路を活性化する可能性が示唆された。この仮説
の検証のため、siITGB4 を用いたノックダウン実験を行なった。β4 をノックダウンした Het-1A
に rhYKL-40 と rhOPN を作用させると、いずれのリコンビナント蛋白による p70S6K 経路の活性
化もβ4 のノックダウンによりキャンセルされた。以上より食道扁平上皮発癌初期段階において
YKL-40 と OPN がβ4 を介して p70S6K 経路を活性化させると考えた。
ESCC の ESD 切除標本の免疫組織化学において、YKL-40 及び OPN 陽性炎症細胞の浸
潤数は、非腫瘍領域と比較して CIS 領域で有意に増加した。そこで、浸潤数を中央値により
low 群と high 群に分けて解析すると、ESD 後再発の有無と有意な相関を示した。また、腫瘍細
胞におけるβ4 の発現強度を low 群と high 群に分けて解析すると、ESCC 発生のリスク因子と
して知られている多発ヨード不染域(まだら食道)や ESD 後再発の有無と有意な相関を示した。
さらに、Kaplan—Meier 法の解析では、YKL-40/OPN 陽性炎症細胞の高い浸潤数、及びβ4
の高発現とまだら食道を組み合わせると、より明瞭に ESD 後再発の有無を見出せた。
【考察】
本研究では、サイトカインで誘導した M2 と上皮内腫瘍モデルとしての Het-1A を間接共培
養することで、マクロファージとの相互作用により誘導される YKL-40/OPN-β4-p70S6K 経路
が食道扁平上皮の発癌初期段階で重要な役割を果たしている可能性を見出した。また、早期

ESCC 切除検体の免疫組織化学により、実際の癌組織においても、その経路の活性化を確認
できた。
YKL-40、OPN ともにマクロファージから分泌され、様々な癌種の進展に寄与する事が知られ
ている。また、β4 は生理学的には基底細胞と基底膜に存在し、腫瘍の進展に伴い発現が亢
進するとされる。申請者らは、YKL-40 と OPN が β4 に結合することを binding assay と蛍光 2
重免染で確かめた。食道上皮内腫瘍〜早期食道癌において、YKL-40 と OPN が β4 に結合
して癌進展に寄与する報告はなく、本研究が初の報告になる。
ESD 後のサーベイランスにおいて、厳重なモニタリングが必要な患者を抽出するためのバイ
オマーカーは、まだら食道以外にほとんど報告はない。本研究において、YKL-40/OPN 陽性
炎症細胞の浸潤数と腫瘍細胞における β4 の発現強度が、ESD 後の再発率と有意な相関が
示された。これらが、ESD 後のサーベイランスを決定する上で、有用な指標となり得る可能性が
示唆された。
本研究の limitation は、不死化したヒト食道扁平上皮細胞株である Het-1A を上皮内腫瘍モ
デルとして扱ったこと、YKL-40/OPN-β4-p70S6K 経路に対する阻害剤や遺伝子改変マウス
を用いた in vivo 実験を行なっていないことが挙げられる。
【結論】
ヒト食道扁平上皮細胞株 Het-1A とサイトカインで誘導したマクロファージとの間接共培養に
より、YKL-40/OPN-β4-p70S6K 経路が食道扁平上皮の発癌初期段階で重要な役割を果た
す可能性を見出した。また、YKL-40/OPN 陽性炎症細胞の浸潤数と腫瘍細胞における β4 の
発現強度は、ESD 後再発を予測する新たなバイオマーカーとなる可能性が示唆された。

神戸大学大学院医学(
系)
研究科(博土課程)
言合
ぅ 二之望昔斧ゴ記 クつ 糸吉 長艮 ク> 亘巨信舌

甲 第 3317号





受付番号

浦上聡

マクロファ ージとの相互作用により誘導される YKL・40/

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・p7086K経路の早期食道扁平上皮癌に
論文題 目
おける生物学的 ・臨床的な意義
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審査委員

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副 査

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e・
e
xam
i
ner

移卜泣召れ、

詞才し犀--

叶昴 心叫

(要旨は 1, 000字∼ 2
, 000字程度)


背景 ・
目 的】申請者の研究室では、 M2マクロファージ(
M
2
) が ESCCの進展に寄与す
ることを報告してきたが、発癌初期段階における M2の役割に関しては未解明である。上
皮内腫瘍モデルであるヒト食道扁平上皮細胞株 (
He
t

l
A
)と、末梢血由来マクロファージと
の間接共培養系を確立し 、共培養後の He
t
・lAの悪性形質、シグナル伝達、遺伝子発現の
変化を解析した。

材料と方法】ヒト末梢血から CD14陽性単球を自動磁気細胞分離装置により選択的に回
t
・lA と
収した。さらにサイトカインを用いて種々のマクロファージヘ分化誘導させ、 He
間接共培養を行い、シグナル伝達、増殖能・運動能を解析した。さらに、 He
t

l
A に p70S6K

recomb
i
nan
thumanYKL-40(
r
h
Y
K
L
4
0
)、recombi
nan
thumano
s
t
e
o
pon
t
i
n
(rhOPN)を作用させ、シグナル伝達、増殖能・運動能の変化を検討した。B4のノックダウ
ンは、 s
i
RNA(s
i
ITGB4)と Li
po
f
e
c
t
ami
neRNA
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M心く を用いて行った。 ESCCに対する ESD
切除標本 8
3例での CD68、CD163、CD204、B4の免疫組織化学は Lei
c
aB
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n
d
・ Max
au
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oma
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onと Lei
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aRef
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e
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onkitを用いた。 Carc
i
nomai
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tu(
C
I
S
)領域の上皮・
間質の炎症細胞浸潤数、及び腫瘍細胞の発現強度をそれぞれ l
ow群と hi
g
h群に分けて臨
床病理学因子との関連を検討した。また Ka
pl
a
n
・Me
i
e
r法を用いて、累積の ESD後再発率
阻害剤、

との関連を検討した。
t
・lAを共培養すると、 M2

結果】サイトカインで誘導した種々のマクロファージと He
と共培養した He
t
・lAで運動能 ・増殖能が最も冗進していた。ホスホキナーゼアレイを用
t
・lAにおいてリ
いてリン酸化シグナルの変化を網羅的に検索すると、 M2と共培養した He
ン酸化 p70S6Kの充進がみられ、ウエスタンブロットでも m
TOR・p70S6K経路の活性化
を確認した。また、 M2と He
t

lAとの相互作用を介在する液性因子を検索するため、培養
液の上清を用いたサイトカインアレイ及び ELISAを行い 、He
t
・lAと M2の単独培養と比
較して He
t

1
A/
M2の共培養の培養液において YKL-40と OPNの分泌が有意に上昇してい
た。さらに rhYKL-40と r
hOPN を Het・
lAに作用させると 、mTOR・
p70S6K経路を介し
て運動能・増殖能が充進した。続いて He
t
・lAにおける YKL-40と OPNの受容体の検索
を行った。両者に共通する有名な受容体はインテグリン ・ファミリーであり、 i
nt
egr
i
n

s
a
mpl
e
rki
tを用いた網羅的な発現解析をウエスタンブロットで行ったところ、種々のマク
ロファージと共培養した He
t
・lAにおける活性化 p70S6Kシグナル伝達分子と同様の発
現パターンを示した B
4 に注目した。免疫沈降を用いた bi
nd
i
nga
s
s
a
yにて、 YKL-40 と
OPNがf34 に結合する事が示された。 また、 2重蛍光免疫染色では、 He
t
・lAにおいて
YKL-40又は OPNがf34 と共局在することがわかった。 これらから 、YKL-40と OPN
はf34 と複合体を形成し て p70S6K経路を活性化する可能性が示唆された。 この仮説の
検証のため、 s
i
ITGB4を用いたノックダウン実験を行なった。 B4 をノックダウンした
Het

lAに rhYKL-40 と rhOPNを作用させると、 いずれのリコンビナント蛋白による
p70S6K経路の活性化も B
4のノックダウンによりキャンセルされた。

以上より食道扁平上皮発癌初期段階において YKL-40 と OPNがf34 を介して p70S6K
経路を活性化させると考えた。

ESCCの ESD切除標本の免疫組織化学において 、YKL40及び OPN陽性炎症細胞の浸
潤数は、非腫瘍領域と比較して CIS領域で有意に増加した。そこで 、浸潤数を中央値によ
ow群と hi
g
h群に分けて解析すると、 ESD後再発の有無と有意な相関を示した。また 、
りl
4の発現強度を l
ow群と hi
g
h群に分けて解析すると、 ESCC発生のリ
腫瘍細胞における 6
スク因子として知られている多発ヨード不染域(
まだら食道)
や ESD後再発の有無と有意な
pl
a
n
Me
i
e
r法の解析では、 YKL40/0PN陽性炎症細胞の高い
相関を示した。さらに 、Ka
4の高発現とまだら食道を組み合わせると、より明瞭に ESD後再発の有無
浸潤数、及 び 6
を見出せた。

t
・lA

考察 】本研究では、サイト カイ ンで誘導した M2と上皮内腫瘍モデルとしての He
を間接共培養することで、マクロファージとの相互作用により誘導される YKL-40/0PN
-

8
4
・p70S6K経路が食道扁平上皮の発癌初期段階で重要な役割を果たしている可能性を見
出した。また、早期 ESCC切除検体の免疫組織化学により、実際の癌組織においても、そ
の経路の活性化を確認できた。YKL-40、OPNともにマクロファージから分泌され、様々
4は生理学的には基底細胞と基底膜に
な癌種の進展に寄与する事が知られている。また、 6
4
存在し 、腫瘍の進展に伴い発現が冗進するとされる 。 申請者らは、 YKL-40と OPNが B
に結合することを bi
nd
i
nga
s
s
a
yと蛍光 2重免染で確かめた。食道上皮内腫瘍∼早期食道
4に結合して癌進展に寄与する報告はなく 、本研究が初
癌において、 YKL-40と OPNが 6
の報告になる。 ESD後のサーベイランスにおいて、厳重なモニタリングが必要な患者を抽
出するためのバイオマーカーは、まだら食道以外にほとんど報告はない。本研究において、

YKL-40/0PN陽性炎症細胞の浸潤数と腫瘍細胞における B4の発現強度が、 ESD後の再発
率と有意な相関が示された。これらが、 ESD後のサーベイランスを決定する上で、有用な
指標となり得る可能性が示唆された。

t
・lA とサイトカインで誘導したマクロファージとの

結論 】 ヒト食道扁平上皮細胞株 He
40/0PN-B4p70S6K経路が食道扁平上皮の発癌初期段階で重要
間接共培養により、 YKL
な役割を果たす可能性を見出した。また、 YKL-40/0PN陽性炎症細胞の浸潤数と腫瘍細胞

4の発現強度は、 ESD後再発を予測する新たなバイオマーカーとなる可能性が
における B
示唆された。
以上、本研究は、ヒト食道扁平上皮細胞とマクロファージとの相互作用により誘導される

YKL-40/0PN-84・
p7
0S6K経路が食道扁平上皮の発癌初期段階で重要な役割を果たしてい
4の発
ることを明らかにした。YKL-40/0PN陽性炎症細胞の浸潤数と腫瘍細胞における B
現強度が、 ESD後再発を 予測する新たなバイオマーカーとなる可能性など重要な知見を得
ており、本研究者は博士(医学)の学位を得る資格があると認める 。

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