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大学・研究所にある論文を検索できる 「支持体に着目した超高精度原子核乾板の開発」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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支持体に着目した超高精度原子核乾板の開発

眞部, 祐太 名古屋大学

2022.06.01

概要

原子核乾板とは、銀塩写真の技術を応用した、サブミクロンの臭化銀結晶を検出素子とする放射線検出器である。古くはπ中間子の発見など、多くの基礎研究に用いられてきた。近年は自動読み取り技術の発展により、宇宙線イメージングなどの全面読み取り・大統計解析を前提とした応用技術への活用も進んでいる。

原子核乾板の全面解析において、飛跡の位置の基準となる支持体層が変形することで、原理的に持つ高い位置分解能が低下してしまう。また、飛跡再構成の原理から、より厚型の支持体を用いることで角度精度が向上させられる。しかし、現在の主流である 180 ㎛ 厚のポリスチレン(PS)支持体は、厚型の製品が入手困難なことから角度精度の向上の余地を残していた。

筆者は、少変形・厚型の支持体候補を探索し、新型原子核乾板の製造方法を開発した。次に、開発した乾板の解析範囲 30×40 ㎟ 内で生じる変形を評価した。その結果、500 ㎛厚のプラスチック支持体を用いた原子核乾板の変形量は平均 1.3 ㎛以上である一方で、500 ㎛厚のガラス支持体を用いた原子核乾板の変形量は平均 0.3 ㎛と、読み取り装置の位置精度と一致した。また、垂直な飛跡に対する角度精度は 500 ㎛厚の支持体乾板では約 0.5mrad と、現行の PS 支持体乾板の 1/3 であった。さらに、支持体の屈折率による検出角度の系統誤差を補正する手法を開発した。

これらの評価の結果、少変形である 500 ㎛厚のガラス支持体を用いることで、原子核乾板が原理的に持つ、㎛・mrad 以下の分解能を発揮できることが分かった。また、生産性に優れる 500 ㎛厚のシクロオレフィンポリマー(COP)支持体を用いることで、角度精度を向上させた大面積観測ができることが分かった。これらの新型乾板について、大量生産体制を構築して内製化を実現し、年間数百㎡の生産量を要する宇宙線イメージング実験において PS 支持体乾板から COP 支持体乾板へ完全移行した。
また、支持体の屈折率に由来する検出角度の系統誤差の補正は宇宙線イメージングにおいて必須の技術であり、現在の解析の基礎となっている。

ガラス支持体乾板の応用先として、磁場による荷電粒子の位置ずれを用いた運動量測定が挙げられる。より微小な位置ずれを測定し、より高い運動量まで測定することが可能となる。運動量測定能力 をビーム実験で評価した結果、500 ㎛厚のガラス支持体乾板を用いた場合、1~10 GeV/c の運動量を誤差 30~40%で測定可能であることを実証した。その他の応用先として、多重電磁散乱を用いた運動量測定が挙げられる。筆者は、複数の飛跡の相対位置を行列計算で求め、測定精度を改善する手法を提案した。この手法において、ガラス支持体乾板の利用により、解析面積を広げた際の位置精度低下が抑えられることが期待される。

この様に、支持体に着目して開発した角度・位置精度向上型の原子核乾板は、自動読み取りによる全面解析において、原子核乾板が本来持つ高い三次元分解能を発揮可能とする。また、この結果は宇宙線イメージングなどの応用技術のみならず、原子核乾板を用いた素粒子実験など基礎研究にも波及するものである。

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