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大学・研究所にある論文を検索できる 「Distributed source analysis of magnetoencephalography using a volume head model combined with statistical methods improves focus diagnosis in epilepsy surgery」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Distributed source analysis of magnetoencephalography using a volume head model combined with statistical methods improves focus diagnosis in epilepsy surgery

Ishizaki, Tomotaka 石﨑, 友崇 名古屋大学

2020.08.19

概要

【緒言】
脳磁図はてんかん性放電を解析する有効な方法である。しかし、てんかん外科手術で対象となる症例の場合、てんかん原性領域となるのは内側側頭葉てんかんのように脳深部であったり腫瘍性病変や血管奇形のように皮質下領域であったりすることが多い。磁場は電流源と測定コイルとの距離に応じて減衰するため、これらの脳深部に存在するてんかん焦点の電流源推定はこれまで困難と考えられていた。

脳磁図による電流源推定の主な方法には等価電流双極子法(equivalent current dipole analysis[ECD 解析])と空間フィルタ法(distributed source analysis[DS 解析])がある。ECD 解析は頭蓋内の電流源を一つのベクトル(ダイポール)で評価するという手法であるが、焦点が複数の場合やてんかん性放電が急速に伝播する場合には焦点診断が困難であるとされている。また、ECD の選択に恣意性が伴うという問題点も指摘されている。DS 解析は複数のてんかん焦点や伝播経路の複雑さには強いことが知られているが、発作間欠期てんかん性放電(interictal epileptiform discharge [IED])の解析では電流分布が様々な広がりを持ち、IED ごとに異なった分布を示す場合が多いことから客観性のある解析方法の開発が必要と考えられた。

本研究ではヘッドモデルに従来の皮質モデルではなくボリュームヘッドモデルを用いることで、深部方向に弱い脳磁図による焦点診断を改善することを目的とした。さらに、従来の DS 解析に統計学的手法を組み合わせることで、客観性の高い解析手法の開発を行った。本論文ではこの新規手法を combined distributed source analysis(cDS 解析)と称し、てんかん外科症例を用いて有効性の評価を行った。

【方法】
2014 年 3 月から 2018 年 1 月の間に当施設で術前検査として脳磁図記録を行った薬剤抵抗性の難治てんかんに対するてんかん外科症例、連続 25 例を後方視的に検討した。25 例のうち、IED の不足あるいは技術的問題で解析が困難であった 6 例を除いた 19 例に対して cDS 解析および ECD 解析を行った。両解析により示されたてんかん焦点診断結果を実際に切除された解剖学的領域と比較することで一致率を算出し、さらにてんかん外科術後の発作予後とも比較を行った。発作予後はエンゲル分類(I:発作消失、II:発作稀発、:III:発作改善、IV:発作不変)を用いて評価した。

cDS 解析および ECD 解析の方法を figure 1 に示した。cDS 解析はオープンソースソフトウェアである BrainSuite および Brainstorm を用いて行った。BrainSuite を用いて MRI 画像より脳構造の抽出を行い、Brainstorm を用いてボリュームヘッドモデルを作成した。記録された MEG の波形から、てんかん診療に従事する専門家 3 人の合意のもとに IED を選択し、その起始と終止の時間を記録した。続いて、IED から前後 1 秒以上離れ、ノイズを含まない 100ms のベースラインを 100 か所記録した。DS 解析には sLORETA 法を用いて IED とベースラインの各時間窓を解析し平均電流分布を求めた。それらの IED とベースラインの平均電流分布の間で有意に電流分布の高い部分を permutation test で求めた。さらに、各ボクセル間での多重比較を行うことで部位間における有意な電流分布部位を求め、その電流分布の最強点が含まれる 1 脳回領域を焦点と診断した。ECD 解析は IED の時間窓で 5ms ごとにダイポールを計算し、goodness of fit>70% かつ Q 値が 50 から 500nAm の一般的な条件下でダイポールを選択した。選択されたダイポールが最も多く局在する 1 脳回領域を焦点と診断した。これらの焦点診断結果と切除領域との一致率を脳回レベルで計算し、深部焦点や発作予後に分けて比較検討を行った。有意水準は 0.05 とした。

【結果】
解析の対象とした 19 症例の臨床上の詳細、焦点診断結果および発作予後を table 1および 2 に示した。

全症例における cDS 解析の一致率は ECD 解析に対して有意に高かった(68.4% 対 26.3%、P=0.022)。エンゲル分類 I における cDS 解析の一致率は ECD 解析に対して有意に高かった(84.6% 対 30.8%、P=0.015)。一方、エンゲル分類 II、III における一致率に有意差は認められなかった。深部病変における一致率は cDS 解析が ECD 解析に対して有意に高かった(81.8% 対 9.1%、P=0.002)。

深部焦点のため通常の ECD 解析では診断が困難である代表的な症例(症例 1:左帯状回てんかんと症例 13:左内側側頭葉てんかん)の焦点診断結果を figure 2 および 3に示した。その他の症例の焦点診断結果を figure 4 に示した。

【考察】
深部病変より生じる IED は背景ノイズにマスクされ(シグナルノイズ比が高くなり)、さらに記録コイルまでの距離に伴い減衰するため、脳磁図による深部病変のてんかん焦点診断は困難であった。こうした脳磁図の弱点を改善するため、我々は IED とベースライン間での平均値差検定を行い、さらに部位間での多重比較を用いることで統計学的に有意な電流分布を求めた。我々の渉猟しうる限り DS 解析に統計学的手法を組み合わせた方法はこれが初めての報告である。cDS 解析により診断された焦点はてんかん外科手術により臨床的に証明されたてんかん原生領域と高い一致率を示し、発作予後とも良好な相関を示した。特に深部焦点を有する症例において cDS 解析は ECD 解析に対して有意に高い一致率を示した。これらの結果から、てんかん外科手術の焦点診断において cDS 解析は ECD 解析に対して有意に優れた診断能力を有していることが臨床的に証明された。

cDS 解析で用いたボリュームヘッドモデルは従来の皮質モデルと異なり、推定されたダイポールの空間的方向性が制約のない状態で割り当てられる。これにより深部方向の電流源推定が可能になる一方で、ダイポールの方向性が定まらないため電流源推定の精度が落ち、空間分解能が低くなることが懸念された。そこで、深部病変を有する症例に対し cDS 解析を行ったところ、焦点診断の一致率は ECD 解析に比して有意に高く、ボリュームヘッドモデルが深部病変の焦点診断に有効であることが示された。

【結論】
本研究では、ヘッドモデルとしてボリュームヘッドモデルを用い、DS 解析に平均値差検定と多重比較の統計学的手法を組み合わせた cDS 解析を用いて統計学的に有意な電流分布を推定した。こうして cDS 解析により求められた焦点は ECD 解析に比べて、てんかん外科手術により臨床的に確認されたてんかん原生領域と有意に高い一致率を示した。半球間裂、前頭-側頭底面、内側側頭葉などの深部病変を有する症例においては特に高い一致率を示した。また、一致率は発作予後ともよく相関していた。これらの結果から cDS 解析はてんかん外科手術の対象となるような深部のてんかん焦点に対してより良好な診断能力を有することが示された。

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