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大学・研究所にある論文を検索できる 「Is cystectomy an option as conservative surgery for young patients with borderline ovarian tumor? A multi-institutional retrospective study」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Is cystectomy an option as conservative surgery for young patients with borderline ovarian tumor? A multi-institutional retrospective study

池田, 芳紀 名古屋大学

2022.07.27

概要

【緒言】
卵巣境界悪性腫瘍は、「良性腫瘍と悪性腫瘍の中間的な組織像を示し、悪性度は低いため長い経過をとって再発することはあっても腫瘍死に至ることはほとんどない」と定義される。若年卵巣腫瘍患者が妊孕性温存を希望された場合は、患側付属器(卵巣・卵管)を摘出し健側付属器と子宮は温存して妊孕性温存手術を行う。この妊孕性温存手術が臨床上直面する切実な問題は、両側性卵巣腫瘍の場合やすでに片側付属器摘出後の場合である。妊孕性温存のためにはやむを得ず腫瘍核出術で患側付属器を温存せざるを得ないが、再発の懸念がある。境界悪性腫瘍ならば予後は比較的良好であるため腫瘍核出術も許容できる可能性はあるが、データは限られている。本研究では、卵巣境界悪性腫瘍に対する腫瘍核出術が再発に与える影響を付属器摘出術と比較し後方視的に検討した。

【対象および方法】
1986 年から 2017 年までの東海卵巣腫瘍研究会の卵巣悪性腫瘍登録 4,708 例から 45歳以下の I 期境界悪性腫瘍患者 285 例を抽出した(Figure 1)。術式の内訳は腫瘍核出術群 27 例、付属器摘出術群 184 例(以上の 2 群は妊孕性温存手術)、妊孕性非温存手術群 74 例であった。統計解析には χ2 検定、Student t-検定、分散分析、Cox 比例ハザードモデル、Kaplan-Meier 法、log-rank 検定を用い、傾向スコアを用いた逆数重み付け法 (IPTW)で背景因子を調整した。P < 0.05 を統計学的に有意とし、SPSS version 26(IBM)、 JMP Pro version 10.0(SAS Institute)を使用した。

【結果】
観察期間の中央値は 62.0(1.2-270.4)か月で 3 群間に有意差はなかった。腫瘍核出術群 63.0(3.9-168.7)か月、付属器摘出術群 57.9(1.3-270.4)か月、妊孕性非温存手術群 67.9(1.9-242.3)か月(P = 0.17)であった。Table 1 に患者背景を示す。年齢を 3 群間で比較すると有意差を認めた(P < 0.001)。進行期の分布は腫瘍核出術群と付属器摘出術群との比較(P < 0.001)、および 3 群間の比較(P < 0.001)で有意差を認めた。組織型、腹水量、術前 CA125 値、化学療法の有無に関しては有意差を認めなかった。Table 2 に予後因子を検討した結果を示す。腫瘍核出術は無再発生存期間に対する有意な予後因子ではなかった(ハザード比 1.276、95%信頼区間[CI]0.150-10.864、P = 0.823)。腫瘍核出術群 1 例(3.7%)、付属器摘出術群 7 例(3.8%)、妊孕性非温存手術群 2 例(2.7%)の計 10 例(全体の 3.5%)に再発を認めた。Figure 2 に 3 群の無再発生存率を示す。3 群間の無再発生存率に有意差を認めなかった(P = 0.782)。5 年無再発生存率は腫瘍核出術群 93.8%、付属器摘出術群 96.0%、妊孕性非温存手術群 98.3%であった。Figure 3 に IPTW で調整した腫瘍核出術群と付属器摘出術群の無再発生存率を示す。調整後の腫瘍核出術群と付属器摘出術群の無再発生存率に有意差を認めなかった(P = 0.378)。5年無再発生存率は腫瘍核出術群 95.8%、付属器摘出術群 96.0%であった。

【考察】
本研究の結果から、卵巣境界悪性腫瘍の場合は妊孕性温存のために腫瘍核出術による患側付属器の温存も許容できることが示唆された。妊孕性温存手術の切実な問題である、両側性卵巣腫瘍の患者や片側付属器摘出既往の患者に直面した場合に、特に本研究の意義がある。再発を恐れ、両側性卵巣腫瘍の場合に両側付属器摘出術、すでに片側しか付属器が残っていない場合に付属器摘出術を行えば妊孕性は失われる。腫瘍核出術を治療選択肢に加えることができれば、妊孕性は温存され恩恵は大きい。卵巣境界悪性卵巣腫瘍 39 研究 5,105 例のうち妊孕性温存手術 2,752 例を解析し再発率を推定した 2015 年のメタアナリシスによると、片側性腫瘍の場合は片側腫瘍核出術(C)よりも片側付属器摘出術(USO)の再発率が低かった。C 群 817 例で再発率 25.3%、USO群 1,686 例で再発率12.5%、再発減少に対するオッズ比 2.200(95% CI 0.793-2.841, P < 0.0001)であった。両側性腫瘍の場合は両側腫瘍核出術(BC)と片側付属器摘出術+片側腫瘍核出術(CC)で再発率に有意差を認めなかった。BC 群 89 例で再発率 25.6%、CC群 118 例で再発率 26.1%、再発減少に対するオッズ比 1.569(95% CI 0.517-4.759, P = 0.426)であった。また、1997 年~2000 年にイタリアの単施設で行われた小規模ランダム化比較試験では、I 期が想定される両側卵巣腫瘍患者 80 例を 40 例ずつ 2 群に割り付け、境界悪性腫瘍であった計 32 例を解析した結果、両側腫瘍核出術群と片側付属器摘出術+片側腫瘍核出術群で再発率に有意差を認めなかった(P = 0.73)。両側腫瘍核出術群の再発率は 66.7%(10/15 例)、片側付属器摘出術+片側腫瘍核出術群の再発率は 58.8%(10/17 例)、相対リスク 1.23(95% CI 0.62-3.17, P = 0.41)であった。生産率は両側腫瘍核出術群の方が高かった(P = 0.06)。両側腫瘍核出術群の生産率は 86.7%(13/15 例)、片側付属器摘出術+片側腫瘍核出術群の生産率は 52.9%(9/17 例)、相対比 8.05(95% CI 1.20-9.66, P < 0.01)であった。これらの先行研究の結果から、両側性卵巣腫瘍に対しては両側腫瘍核出術の選択が境界悪性腫瘍の場合は妥当であるといえる。1978 年~2013年にイタリアの単施設で行われた後方視的研究では、卵巣境界悪性腫瘍 535 例(腫瘍核出術[Cy]群 264 例、付属器摘出術[SO]群 271 例)を解析し、両群間で再発率に有意差を認めなかった。10 年再発率は片側性腫瘍の場合 Cy 群 31%、SO 群 23%(P = 0.10)、両側性腫瘍の場合は両側 Cy 群 72%、片側 SO+片側 Cy 群 62%(P = 0.35)であった。ハザード比は 1.34(95% CI 0.98-1.81, P = 0.06)であった。この先行研究の結果は本研究の結果を支持するものであり、片側性卵巣腫瘍に対して患側の腫瘍核出術を選択しても境界悪性腫瘍の場合は再発率に関して付属器摘出術と差がない可能性がある。本研究の限界は、腫瘍核出術群 27 例と少数であったこと、腹腔鏡下手術の影響を検討していないこと、観察期間の長短差が大きいこと、時代や施設による治療方針の違いが含まれることである。本研究の強みは中央病理診断システムを採用していること、 IPTW による背景因子の調整を行っていることである。さらなるデータの蓄積が必要ではあるが、症例を慎重に選択し潜在するリスクについて理解が得られた卵巣境界悪性腫瘍患者に対して、妊孕性温存のため腫瘍核出術を行うことは許容されると考える。

【結論】
卵巣境界悪性腫瘍に対する腫瘍核出術は妊孕性温存手術の選択肢となり得る。

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