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書き出し

早産児においてビリルビン/アルブミン(B/A)比はアンバウンドビリルビンと相関する

Abe, Shinya 神戸大学

2021.03.25

概要

緒言
 新生児黄疽の原因物質であるビリルビンには神経毒性があることが知られており、著しい高ビリルビン血症は神経学的後遺症を招く。ビリルビンは血中では主にアルブミンと結合しており、一部は結合を受けないアンバウンドビリルビン(unbound bilirubin, UB)として存在する。UBは中枢神経系への移行性が高く、ビリルビン脳症の感度の高いバイオマーカーとして知られている。しかし、血清UB値の測定は、現在日本でしか日常的に行われていない。
 そのため、UBに代わる指標としてビリルビン結合能やビリルビン/アルブミン(bilirubin/albumin, B/A)比などが評価されてきた。B/A比は簡便に計算できることがら日常臨床に使用されており、2004年の米国小児科学会ガイドラインでも在胎35週以上の乳児における交換輸血開始の目安としてB/A比の使用が推奨されている。
 これまで我々は在胎35週以上の児においてB/A比とUBに強い相関関係があることを示してきた。早産児においては、在胎24週から33週までの乳児においてB/A比とUBの相関関係が弱くなるとする報告がある一方で、ビリルビン脳症をきたす早産児でB/A比が高くなるとする報告があるなど、研究によって結果が一致していない。
 日本では1992年以降、新生児高ビリルビン血症の管理のために生後早期の新生児のUBを日常的に測定している。そこで本研究では、在胎35週未満の早産児の高ビリルビン血症管理におけるB/A比の有用性をはかるため、B/A比とUBの相関関係を後方視的に検討した。

方法
 2014年1月から2018年12月までの間に、第三次周産期医療センターである神戸大学医学部附属病院で出生した在胎35週未満の全新生児の診療録を後方視的に検討した。対象期間中、黄疽の管理は森岡らの基準に基づいて行われていた。
 対象患者から得た血液検体は速やかに遠心分離されたのち、得られた血清を用いてUB、総ビリルビン(total serum bilirubin, TB)、直接ビリルビン(direct bilirubin, DB)、アルブミン(albumin, Alb)を測定した。日齢14までに採取したこれらの生化学データと各患者の在胎週、出生体重、アプガースコア、性別のデータを収集した。選択バイアスの影響をすくなくするため、同日に複数回血液検査が提出されている場合は最も早い時点で採血されたデータのみを対象とした。UBはUB analyzer(アローズ社)を用いて計測したが、DBが2.0mg/dLを超える検体ではUB測定が不正確となることが報告されているため、DBが2.0mg/dL以上の検体は除外した。
 光線照射下ではビリルビンは構造異性体に変化しAlbとビリルビン結合に影響を与える可能性があるため、光治療前もしくは光治療を一度も受けていない児から採取した検体の群と光治療後の児から採取した検体の群にわけて検討を行った。
 登録した381名の児から3395検体が採取され、そこから我々のcriteriaに基づいて除外し、光治療前の1250検体と光治療後の2039検体が解析の対象となった。
 B/A比の計算にあたり、TB(mg/dL)、UB(pg/dL)、Alb(g/dL)をそれぞれ0.0546、54.6、0.0066741で除してμmol/Lに変換した。ビリルビンーアルブミン結合定数(bilirubin binding constants, BBC)は、以下のように計算で算出した:BBC=TB/UBX(Alb—TB)。
 登録されたすべての新生児について、B/A比とUBの相関関係を検討した。検討に当たり、光治療の使用の有無について層別化を行ったほか、在胎週数についても層別化を行った(A;在胎22-27週、B:28-29週、C:30-31週、D:32·34週)。BBCとB/A比の関係性についても検討を行い、B/A比が0.2未満の群と0.2以上の群にわけて評価を行った。
 UB値0.6gg/dLでビリルビン脳症の発症を予測することが報告されていることから、この値に対するB/A比のカットオフ値を求めた。
B/A比とUBの相関については線形比較による回帰分析をおこなった。群間のBBCの比較についてはMann-Whitney U検定を用いた。UB値0.6pg/dLに対するカットオフ値については、ロジスティック回帰分析によるレシーバー操作特性(ROC)曲線を作成し、曲線下面積が最大となる点をカットオフ点とした。p値<0.05を統計的に有意とした。

結果
 対象となった児は、在胎週が中央値32週(範囲22-34週)、出生体重が中央値1, 604g(範囲284-2, 962g)だった。アプガースコアの中央値は1分4点、5分7点であり、49%の児がアンピシリンの投与を、19%の児がアミカシンの投与を受けていた。17%の児が動脈管開存に対してインドメタシンの投与を受けており、89%の児が光治療を受けていた。
 光治療を受けていない群において、B/A比とUBの間には非常に強い相関があった(y=1.83x-0.15, r2=0.93, p<0.0001)。
 光治療を受けた群については、B/A比とUBに相関はみられるものの、その相関は弱くなっていた(y=1.05x+0.09, r2=0.69, p<0.0001)。
 光治療を受けていない群において在胎週ごとに層別化しだところ、各群の検討でもB/A比とUBの間に非常に強い相関がみられた(A:在胎22-27週, y=1.83x-0.15, r2 =0.88、B:在胎28.29週, y=2.02x-0.18, r2=0.93、C:在胎30-31週, y=1.91x-0.16, r2=0.94、D:在胎32-34週, y=1.76x-0.14, r2=0.94)。
 BBCとB/A比の関係性について調べたところ、B/A比0.2以上の検体でBBCは類似していた。したがって、B/A比が0.2以上の検体(n=797)と0.2未満の検体(n=453)で比較検討したところ、BBCはB/A比0.2以上の検体で有意に低かった(64.2 vs 131.0 L/μmol, p<0.0001)。
 光治療を受けていない児の検体を対象としてUB0.6μg/dLを予測するためのB/A比のカットオフ値についてROC曲線を用いて算出したところ、全検体を対象としたときB/A比0.36がカットオフ値となった(感度93%、特異度88%)。在胎週数ごとに分けたところ、A:0.29(感度100%, 特異度93%)、B:0.33(感度92%, 特異度87%)、C:0.36(感度92%, 特異度91%)、D:0.39(感度90%, 特異度87%)であった。

考察
 我々は在胎35週未満の早産児であってもB/A比とUBが有意に相関していることを明らかにした。光治療を受けていない児において、UB0.6gg/dLに相当するB/A比は、全検体では0.36、在胎22-27週では0.29、在胎28.29週では0.33、在胎30-31週では0.36, 在胎32·34週では0.39であった。
 今回の検討で、在胎35週以上の乳児を対象とした先行研究と同様に、在胎35週未満の早産児でもB/A比とUBの間に強い相関があることがわかった。これまでB/A比を早産児の高ビリルビン血症の管理に使用することに臨床的な有用性はないとする報告がいくつかあるが、それらの検討の問題点として光治療による影響を考慮していないことがあった。我々の結果から、B/A比とUB値の相関は光照射の有無により左右されることがわかる。既報でも光照射により生じるビリルビンの異性体はアルブミンとの結合能が弱いことが報告されており、また早産児を対象とした臨床研究においてもTBとUBの相関が光治療により弱くなることが報告されている。
 本研究では、超早産児においてもB/A比がUBと高い相関関係にあることを明らかにした。早産児は未熟な中枢神経系がビリルビン毒性を受けやすく、神経機能障害をきたしやすいことが知られている。本検討では、これまでの報告より多い検体数を検討できたため、在胎週数ごとに層別化したB/A比とUBの相関関係を十分に検討することができた。
 それに加え、我々はB/A比が0.2以上の場合には、BBCが一定となることを示した。これまでの結果からB/A比が0.2未満の検体ではすべてTB値が6.0mg/dL未満(中央値2.6mg/dL、範囲0.9-5.7mg/dL)であり、B/A比はTB値が6.0mg/dL以上の場合のUB値の指標として使用できると考えられた。このことは、治療を要する高ビリルビン血症を呈するほとんどの早産児において、B/A比がUBの良好な予測因子であることを示している。一方で、出生直後などの非常に低いTBを呈する検体においては、B/A比はUBを予測するうえであまり役に立たないかもしれない。
 我々の研究にはいくつかの限界がある。第一に、BBCを直接測定せず計算で求めていることである。BBCを計算するにあたって用いたUBはGOD-POD(glucose oxidase-peroxidase)法を用いて測定しているが、これはヘモグロビンやビタミンなどの科酸化反応に競合する物質の影響が懸念されている。これらの物質は結合親和性に影響を与えないとする報告もあるが、BBCを直接測定することでより正確なUBとB/A比の関係を得ることができる。第二に、これは後方視的研究であるため、対象児ごとに検体採取数が異なることが相関の解析においてバイアスを生んでいる可能性がある。また、光治療前の検体には、光治療を全く受けていない児から採取した検体と、最終的に光治療を受けた児において光治療開始前に採取した検体の二種類が含まれている。光治療の影響を検討するためには光治療前後の同一児から採取した検体のB/A比とUBを比較する多施設共同研究が必要であり、現在進行中である。第三に、低酸素症やアシドーシス、敗血症、ビリルビン置換薬の使用など、ビリルビンとアルブミンの結合親和性に影響を及ぼす可能性のある臨床的因子については層別化していない。我々の新生児高ビリルビン血症の管理基準は臨床的要因による層別化を必要とせず、臨床的リスクに基づいて層別化を行う米国などで用いられている基準とは異なっている。今回我々は、在胎週に基づいて層別化を行うことで、このバイアスを軽減しようと試みた。しかし、我々の知見を臨床に適応するためには、臨床リスク因子で層別化したB/A比とUBの相関を前方視的に検討する必要がある。

結語
 今回の後方視的研究では、妊娠35週未満の早産児のUBの指標として、B/A比を用いることができることを明らかにした。このことは、特にUB測定ができない場合、早産児の高ビリルビン血症の管理に役立つ可能性がある。

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