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大学・研究所にある論文を検索できる 「Blowing ratioとHigh-resolution manometryによる口腔咽頭癌患者の嚥下機能評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Blowing ratioとHigh-resolution manometryによる口腔咽頭癌患者の嚥下機能評価

小松, 弘和 神戸大学

2022.03.25

概要

【背 景】
この 30 年間、血管吻合を伴う有利組織移植による再建術や導入化学療法、化学放射線療法(CRT)、強度変調放射線療法(IMRT)など、口腔癌および咽頭癌の治療は著明な進歩を遂げ、従来に比較し良好な生命予後が期待できるようになった。しかし、長期生存者が増えるにつけ、治療後の嚥下障害により、生活の質(QOL)や栄養失調、抑鬱状態などが生じ大きな問題となっている。

現在、嚥下機能検査は一般に、嚥下内視鏡検査(VE)やビデオ透視検査(VF)が行われている。これらの検査は造影剤や食物の誤嚥や通過、咽頭残留の評価には優れているものの、主観的かつ質的な評価であり、客観的または量的な評価は困難である。高感度マノメトリー(HRM)は嚥下時の咽頭圧・食道内圧を測定する検査法で、同時に上咽頭、中咽頭、食道入口部の嚥下圧や食道入口部開大時間の測定が可能である。HRM は放射線暴露もなく客観的、量的な評価をすることができ極めて有用ではあるが、専用の検査器材を必要とし現状では検査可能な施設は限られる。

Blowing ratio は、1978 年に相野田らが、口蓋裂患者の鼻咽腔閉鎖機能を簡易的かつ定量的に評価する検査法として開発したもので、1回の呼気量を呼気時間として計測する。すなわち、前鼻孔を開けた状態で水に入ったストローを吹いた時間を分子とし、閉鎖して吹いた時間を分母とした値をblowing ratio として定義している。特別な検査器械を必要とせず、安全に検査できるため、ベッドサイドや自宅でも検査が可能である。我々は、これまでの研究で、blowing ratio が口腔癌および咽頭癌術後の会話機能ばかりでなく、嚥下機能も反映することを報告した。

本研究では、HRM の客観的・定量性を利用して、口腔癌および咽頭癌の治療を受けた患者の嚥下機能を評価するスクリーニングツールとして blowing ratio の有用性をさらに評価することを目的とした予備的研究として行った。

【対 象】
神戸大学医学部附属病院で口腔癌または咽頭癌の治療を受けた症例を対象とし、以下の基準に当てはまる症例は除外した。

1)20 歳未満
2) 高度の認知障害を伴う
3) 神経血管性および/または神経筋疾患を有する
4) キシロカインに対するアレルギーを有する
5) 妊娠中または授乳栄養中
6) 口腔癌・咽頭癌の治療前に明らかな嚥下機能障害を認める
7) 再発性および/または転移を認める

最終的に 10 例の症例が本研究で登録した(男性:9 例、女性:1 例)。平均年齢は 63 歳で、35 歳から 78 歳の範囲であった。原発部位は 4 例が中咽頭癌、6 例が口腔癌であった。また3例の健常ボランティアが、健常対照者として本研究に参加した。全例参加者から書面でのインフォームドコンセントを得た後に行われた。

【方 法】
Blowing ratio はプラスチック瓶(500mL)とストロー(直径 4mm)を使用して測定した。ストローの末端部を水面 5cm 下に配置し、数回の深呼吸の後、患者にはストローに柔らかく吹くように依頼した。その後、前鼻孔を閉鎖して同様に測定した。それぞれの吹く時間を測定し、前鼻孔を開けて吹いた時間を閉鎖して吹いた時間で割った値をblowing ratio とした。

HRM はStarlet Stealth (ST4000/20K12, スターメディカル社製)を使用した。検査は座位で行った。両側鼻腔に綿棒で 4%のキシロカインで表面麻酔を行い、カテーテルを鼻孔から挿入した。また、喉頭ファイバースコープを対側の鼻孔を通して同時に挿入し、カテーテルの先端が頸部食道に正しく挿入されることを確認した。カテーテルの位置は、空嚥下を行い、画像の波形で確認した。患者に 3mL の水(またはトロミ水)を嚥下してもらい検査を行った。嚥下圧を 5 回以上測定できた症例を統計解析に含めた。検査記録から軟口蓋、舌根と食道入口部(UES)の最大の嚥下圧(MSP)とUES の開大時間を測定した。また仕事量として収縮積分値(CI)も測定した。

スピアマンの順番相関係数を、Blowing ratio、MSP と CI 間の相関の統計解析のために使用した。危険率5%で解析し、0.6 以上の相関係数(CC)をもって有意とした。

【結 果】
Blowing ratio と舌根の CI(CC = 0.772、p = 0.009)とMSP(CC = 0.815、p = 0.004)の間に強い相関を認めた。また、blowing ratio と軟口蓋のMSP(CC = 0.657、p = 0.039)の間にも有意な相関を認めた。上咽頭の CI(CC = 0.608、p = 0.062)とblowing ratio にも相関傾向が認められたが、UES についてはMSP、開大時間ともに相関を認めなかった。

【結 論】
今回の研究により、blowing ratio が口腔癌および咽頭癌治療後の患者において、軟口蓋および舌根部嚥下圧を評価するスクリーニングツールとして有効であるが示された。この結果に基づき、現在、blowing ratio の上咽頭癌に対する化学放射線療法後の嚥下機能評価に対する有用性について多施設共同研究を行なっている。

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