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Physiological performance of sago palm (Metroxylon sagu Rottb.) under different environmental conditions

Azhar, Aidil アズハール, アイディル 名古屋大学

2020.10.19

概要

サゴヤシ(Metroxylon sagu Rottb.)は1本の幹に200〜300kgもの澱粉を蓄積する資源植物であり、低湿地の酸性土壌、汽水域などにも良く適応することから、東南アジアの泥炭湿地の環境保全や、問題土壌での経済植物の生産に向けた栽培振興に期待が寄せられている。泥炭湿地での栽培には地下水位の適切な制御が必要であるが、土壌水分に対するサゴヤシの生育反応に関する情報は極めて限られている。そこで本研究では、土壌水分など環境が異なる条件に対する、サゴヤシの成長と生理反応を明らかにしようとした。最初にサゴヤシの物質生産能の基本特性を理解するために、気温25℃と29℃に設定したファイトトロン内で、サゴヤシ実生の光合成速度とその関連形質の日変化などを調査した(測定中の気温は25〜29℃、29〜33℃で推移)。29℃設定では、光合成速度が9時に最大のに達して12時まで高く維持、その後、低下したのに対し、25℃設定では終始29℃設定の50%程度で推移し、最大に達するのに11時までかかり、そこから急に低下した。このように、サゴヤシの光合成活性にはそれほど高い光強度は要さず、十分な高温条件では午前中の比較的早い時間帯に光合成能は高まるものの、正午を過ぎると低下すること、気温がやや低い条件では光合成能が高まるのに時間を要し、さらに正午には低下が始まることが明らかになった。これらのことから、サゴヤシは気温25〜33℃の範囲で敏感に反応し、29℃を超えるような条件が好適で、気温よって必要とされる光条件も異なるが、他の熱帯性の澱粉・糖料作物に比べて比較的低い光条件で光合成能は飽和に達するものと考えられた。

 次に、土壌水分条件が少ない条件への反応を調査した。サゴヤシは一般に多湿条件を好むと考えられているものの、厳しい乾季を有する地域へ導入されて定着した例もみられる。そこで、比較的乾燥した条件への反応を明らかにするため、土壌の水分条件を圃場容水量から-5、-40、-70KPaと低下させた場合の生理反応を調査した。その結果、-5KPa程度で光化学系の電子伝達速度が有意に低下し、-70KPa程度で光合成速度が低下した。この結果から、サゴヤシでは土壌の乾燥が始まると、比較的短時間で光化学系にまず影響が現れ、数日後に気孔コンダクタンスの低下に伴ってCO2吸収に影響が生じるものと理解された。

 そこで次には、土壌水分の多い条件に対する反応について検討するため、圃場容水量程度の対照区と湛水区を設けた。3週間程度は光合成速度に有意な差はみられなかったが、1ヶ月後に湛水区が高い値を示し、2ヶ月後までその傾向が続いた。しかし、その後は傾向が逆転して70日後頃からは湛水区で有意に低い値となり、その後は実験を終了するまでの40日間ほど同様の傾向であった。光化学系に対する長期間の湛水の影響は、処理から2ヶ月程度はみられず、70日後頃から顕著に量子収率に影響が生じた。なお、実験期間中に葉の形態形成には影響はみられなかったものの、上位葉の小葉面積当たり窒素含量やクロロフィル含量などは湛水区で低くなった。サゴヤシは過湿の条件に適応するが、湛水が長くなると小葉の機能形成や光合成能に負の影響が現れることが明らかになった。

 さらに、地下水位が異なる条件への反応を調査するため、ポットの土耕栽培で土壌水分を圃場容水量とした対照区に対して、根圏の50%の深さまで水位を上げた50%区、80%の深さまで水位を上げた80%区を設けた。結果としては、新鮮重や乾物成長と葉面成長において、有意差はないものの50%区が大きく、次で80%区、対照区という傾向であった。地上部の伸長成長には50%区と80%区には顕著は差はみなれず、対照区で低い傾向にあった。光合成速度と気孔コンダクタンスでも50%区でわずかに高い傾向がみられたが、光合成、光化学系の各形質に有意な差は認められなかった。しかしながら、部位別の炭水化物の蓄積をみると、葉柄においては80%区でデンプンや非構造性炭水化物の濃度が対照区や50%区に比べてそれぞれ約34%、10%ほど低い傾向がみられた。このことは、地下水位が高い条件で生育するサゴヤシについては、伸長成長に対して炭水化物の蓄積が少なく、同様の環境での成長が長く続くと、幹の髄乾物密度が低くなり、植物体サイズに対してバイオマス収量、デンプン収量が低収となるものと考えられた。

 以上、サゴヤシは熱帯の多湿条件に適応するものの、気温や土壌水分に敏感に反応することが明らかになり、畑状態で十分な水分が得られる条件から、地下水位が根圏の半分程度以下の条件で物質生産、伸長成長、乾物成長のバランスがよいものと推察された。サゴヤシの成木では土壌表面から約30cmまでの深さに根系の約半分が分布することを考慮すると、湿地の地下水位を30cmより低くする管理が、また、2ヶ月を超えて湛水しないように排水路を設けるなどの対応が望ましいものと考えられた。

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