潜在的収量とのギャップ : 水分や養分を過不足なく管理する”土づくり”で最小限に抑える
概要
潜在的収量とのギャップ : 水分や養分を過不足
なく管理する”土づくり”で最小限に抑える
著者
雑誌名
巻
号
ページ
発行年
URL
谷 昌幸
ニューカントリー
68
1
30-31
2021-01
http://id.nii.ac.jp/1588/00004674/
図 潜在的収量の決定因子および生産者収量を決定する収量制限
因子と収量低減因子
水分や養分を過不足なく管理する 土づくり で最小限に抑える
て きた 。 土の 中 の 水 や養 分
こ と が 重 要で あ る と 解 説 し
量 の 肥料 や資 材 を施用 する
果 を 活 用 し 、本 当に 必 要な
前 固ま で は 、 土 壌 診 断 結
者 が 数 字 だ け を 鼻 高々 に 話
かった ときは、 大 抵 の 生産
なる ことが多い。収量 が 高
か 「 馬 鈴 し ょ が 3ト半 を 超
ン
えた 」と か 、収量 が 話題 に
年 は 小 麦 が は俵 取 れ た 」 と
維に し た り 、 吸収 し た 窒 素
わ せて セ ル ロ ー ス な ど の 繊
出 し た 炭 水 化 物 を つ な ぎ合
ら で ある 。 光 合 成 で つく り
り 出 す「光 合 成 」を行う か
ら 糖 な ど の 炭 水化物をつく
変 換 し て 水 と 二 酸 化 炭 素か
ル」 と 呼 ぶ ( 図)。
る い は 「 収 量 ポ テ ンシ ャ
の 収 量 を 「 潜 在 的 収量 」 あ
切な い 場 合 に 得ら れ る 最 高
ψ
が 適 正で あ る こ と が 重 要な
して く れ る 。 一 方 、収量 が
理 論 的 に は 潜 在 的 収量 が
収量を 制 限する大 きな
因子 は 。水 分 ψと 養
φ 分
の は 分か る が 、 それ が 作 物
低か った 年は 「夏 の 長雨 が
その 年 の 最 高収 量 で あ り 、
と 結 合 さ せ て タ ンパ ク 質に
の 収 量 に ど の よ う な 影 響を
し た り し 、 作物 体 の 構 成 成
ウス な ど の 施 設 栽 培の よ う
要ら な か っ た よ ね 」
と か「 春
光合成 に と って 最 も大 事
に 、 人工 光 で 日 射量 を 増 や
与え る の だ ろ う か 。 今 回は
な 因子 は 光 エ ネ ル ギ ー で 、
し た り 、 気温 を 調 整 し た り
実際 の 「 生産 者収 量 」 が そ
収 量 が 高い と き に 「7 月
太陽 か ら の 日 射量 が 多 い ほ
培で は 基本 的 に 潜 在 的 収 量
す れ ば 変 化 す る が 、 露地 栽
分を増やして 大 きく な って
の 日 照時 間 が 長 か っ た お か
ど 光 合 成 は盛 ん に 行 わ れ
先が 低 温 だ っ た か ら ね 」 と
げ だ ね 」 と か、 収 量 が 低
る 。また 、光合成 の効率 を
潜 在 的 収 量 モデ ル に 基 づ い
かった ときに 「 最 近は堆 肥
決 める の が 気温 で あ る 。 例
し か し 、 実際 の 生産 者収
れ を超 える こと は な い 。 ハ
を 入れ る の を さ ぼ っ て い た
え ば 、 馬 鈴 し ょ は 初℃ぐ ら
量 は 潜在 的収量 より 低く 、
いく 。
か ら ね 」 と か 、 逆の 説 明 を
い の 気温 が 好 き で 、 光 合 成
両者 の 問 に は 大 き な 差 が あ
か 、大 抵 の 生産 者が 恨 めし
して く れ る 生産 者は あま り
の 効 率 が 最 も 高く な る 。温
り 、こ の 差 を 「 収 量 ギ ャ ッ
て 、 士の 水 や 養 分 と 作 物 の
い な い 気が す る 。 一体 ど ち
度 が 高 過 ぎた り 、 低 過 ぎ た
が 最 高と な る 。
ら が 正し い 説 明 を し て い る
プ 」と 呼ぶ 。 収 量 を 制 限す
と
り す る と 、光 合 成 の 効 率 が
H
のだろうか。
H
水分
ん 菜 なら根 重 と 糖 量 な ど
実 、馬 鈴 しよ な ら 塊 茎 、 て
作 物 の 収 量 、 小麦 な ら 子
に な る。 水 や 養 分 の 過 不
気温 が 収 量 を 左右 す る こ と
質的 に は その 年 の 日 射量 と
的に は 変 化しな いので 、 実
る 。 二 酸 化 炭 素濃 度 は 短 期
素 濃 度 、 日 射量 、 気温 で あ
を 決 定 す る 因子 は 二 酸 化 炭
収量となる。
その 最 終 的 な 結 果 が 生産 者
を 低 下 さ せる 因子 と な り 、
どの防 除に 失敗すると収量
さ ら に 、 病害 虫 や 雑 草 な
す( 図)。
なって 収量 が下がって しま
足 が あ る と 「 制 限 因子 」 と
で 、 それ ら に 過 不
は 、 基本 的に 作付 け年の 天
足 、 病害 虫 の 影 響 な ど が 一
な か っ た ( 写真 )。 せ っ か
u
気で 大 き く 変 化 す る 。 作 物
ど に 影 響を受 けて い る 場合
く 施工した のに あまり効い
H
養分
が 生育 し て 大 き く な る の
が あ る こ と を 2018 年 日
て い な い の は 残念 と し か 言
品 種ご と の 潜 在 的 な 収 量
は 、 太陽 の 光 エ ネ ル ギ ー を
月号 で 説 明 し た 。
取れ得 る最 高の 収 量は
その 年の 天気で 決ま る
る 大 き な 因子 が
そう に 天 気の 話を す る 。
と そ が 、 収 量 ギ ャ ップ を 最
排 水 不 良の 改 善 に は
原因を 理 解 して 対処
気次 第 で 大 き く 変 わ る の
潜 在 的 収 量 は その 年 の 天
な 限り 排 水 性や 保水 性を改
や成 り立 ちを理解して 可能
ので ある 。圃場の 土の 特 性
に 、収量 が 制 限され 低下 す
どで水分が不足する場合
図の モデ ル で は 、 干ば つ な
つ 目 の 因子 が 水 分 で あ る 。
潜在 的収 量 を制 限す る 1
を行いかね な い。 地 下水が
解しな いと 、 間違 った 対 処
う な 原 因で 生 じ て い る か 理
の 圃場の 排 水 不良が 、
どの よ
簡単 で は な い 。 た だ 、 自分
土の 排水 改 良を行う の は
つ 自 の 因子 が 養 分 で あ る 。
潜在 的収 量 を制 限す る 2
いようがない。
で 、 あ る 意味 で 手 の 施 し ょ
善 し 、 土 壌 診断 を 活用 し て
る ことを想 定して いる が、
と いうとと だ。 土の 中 の 水
を行う 生産 者の 技術 が 重 要
物 理 性で 、 その 管 理 や 改 善
年 だ っ た の か取 れ な い 年
い で 、 例年と 比べ て 取 れ る
年 の 潜 在 的 収 量 が ど れ 、ぐら
合 理 的 だ 。 その た めに は 今
ま った と か で 考える こと が
え た と か 、 的% を 切 っ て し
量 が 潜在 的収 量 の 別% を超
だった と かで は な く 、 実収
何 俵取 っ た と か 、 何 ト ン
械に よ る 踏 み 固 め や 不 適 切
響を受 けて い る 場合 と 、 機
の地 形や水の動 きな ど に 影
表面 水 型 が あ り 、 も と も と
は 大 きく 分けて 地 下水型と
土 の 排 水 性 が 悪 い 原 因に
不良に よ る 湿害 で ある 。
起 こ り 得 る 。 い わ ゆる 排 水
に 収量 が 制 限され る こと も
実 際 に は 水 分 が 過 剰な た め
りする の で あれ ば 、 土が 乾
を増やして 保水力を上げた
を 促 進 し た り 、 表層 の 隙 間
破砕 を 行 い 、 下層 へ の 排 水
サ ブ ソ イ ラを 使 っ て 心 土
い な い 」と 思 って しま う 。
時 間や燃 料 を使 って もった
と 、「 あ ま り 意味 が な い の に
ラ を 使 っ て い る の を見 る
湿 っ て い る 春 先に サ ブ ソ イ
が 生 じ て い る の に、 土 が
流れ 込 み ゃ す い 圃 場 で 湿 害
る こ と が 、 実際 の 収 量 を 潜
な 養 分 だ け を 適 切に 施 肥す
期 的 に 把 握 し 、 本 当に 必 要
断 に よ っ て 養 分 の 状 態を 定
気味 な こ と が 多 い 。 土壌 診
に つい て は 、土の中 で 過 剰
特 に 窒 素 、 リン 酸 、 カリ
せる 原 因に な っ て し ま う 。
作 物 の 収 量 や 品 質を 低 下 さ
もち ろん 、 過 剰で あ っ て も
由来 す る 養 分 が 不 足 し て は
て きた よ う に 、 土や肥料 に
こ の 連 載で 繰 り 返 し 説 明 し
養 分 は 不 足 して も
過剰で も収 量低下 に
うがない。 しかし、この 連
適 切な 施 肥管 理 を 実践 す る
分や養 分を過 不足の な い 状
だった のかを把握する 必 要
な 耕起作業に よる 堅 密化な
い て い る 時 期に 、 ゆっ く り
在 的収 量 に 近づけ る た めに
(van Ittersumら2013年を 一 部改変)
が ある 。
討で は チゼ ル が 上 下 に 激 し
観察 し た と こ ろ 、 時 速 5キロ
ラを か け た 後 の 土 壌 断 面 を
で 深 さ 初 列ン
灯 ま で サブ ソ イ
卯% 以 上 を 達 成 で き た 」 と
だったけど潜在的収量の
上 で「 今 年 は こ ん な 天 気
ギ ャ ップ を 最 小限 に 抑 え た
づ く り に 取 り 組 み、 収 量
土の 中 の 水分や養 分を過
く 動 き 、 実際 に は 深 さ 初日ン
自慢 で き れ ば 格 好 い い 。 図
不 足 な い 状 態に 管 理 す る 土
れ ま で し か 亀 裂 が 入っ て い
で ある 。と ある 生産 者の 圃
し た ス ピ ー ド で 、 適切な 深
水分制限収量
収量
生育 条件
れ
れ と 5キロ
場 で 、 時 速2キロ
は 不可欠 で ある 。
L
養分
収量低 i
害虫・雑草
写真 時速5kmで、 深さ30cmまでサブソイラを
かけた断面(速いとチゼルが上下に動くため
深さ20cmまでしか亀裂が入っていない)
を 決める の は 土の 化 学 性や
と と が 大 切で あ る 。
小限 に 抑 え る 唯 一 の 方 法 な
落ち て し ま う 。
収 量 の 関 係に つ い て 説 明 す
る。
高収 量は 結 果オl ライ
低収 量は 天気の せい
生 産 者 と 話 を す る と 、「 今
たに まさゆき
1995年筑波大学大学院農学研究科
修了。 博士(農学)。 同年帯広畜
産大学畜産学部助手、 2003年同大
助教授、 15年から現職。 1968年大
阪市生まれ。
態に 管 理 す る が
土づく り耐
帯広畜産大学
グロ ー バルアグロメディシン
研究センタ ー 教授
載で 何 を 言 い た い の か と い
土を 管理 ・ 改善 する
技 術が 収 量 差 を 決 め る
昌幸
谷
”
“
え ば 、収 量 ギ ャ ップ の 大 小
収量レベル
さまで 施工する こと が重 要
収量決定品種
CO2濃度
日射量
気温
制限
因子
←一一一一水分
養分制限収量
生産者収量
30
2021. 1
ー
ニュ ー カントリ
2021. ...