Late preterm PROMの待機的管理における母児の予後についての検討
概要
背 景
Late pretermにおけるpremature rupture of the membranes(以下late preterm PROM; 妊娠34週から37週未満の前期破水)の管理は,感染リスクを考慮し,従来早期の分娩誘発が勧められていたが,分娩を待機しても児の敗血症は増加しないという報告1-4)や即時介入により児の新生児呼吸窮迫症候群(RDS)やNICU管理が増加するという報告1,4)も増えてきており,その管理に施設間の差があるのが現状である.
当院では,従来Late preterm PROMに対して即時介入の方針としていたが,2017年度より待機的管理に変更した.そこで,管理方針の変更が母児の予後に与える影響を評価することとした.
方法
当院に入院したlate preterm PROMの患者50名(双胎,円錐切除術後を除外)を対象とした.2015年4月から2017年3月に入院した患者23名は,破水直後より抗菌薬投与を行い,24時間以内に分娩誘発を開始しており,即時介入群とした.2017年4月から2019年3月に入院した患者27名は,破水直後より抗菌薬投与を1週間行いつつ陣痛発来を待機するが,臨床的絨毛膜羊膜炎(clinical chorioamnionitis ; cCAM)を確認,あるいは妊娠37週を迎えた時点で分娩誘発を行う方針としており待機群とした.両群間における母児の予後について, 本学の倫理審査委員会の承認を得て後方視的検討を行った(承認番号:R2019-167).
得られたデータは,正規性の検討(Kolmogorov-Smirnov検定)の結果,正規性を認めなければMann-Whitney U検定を行い,2値変数はFisherの正確確率検定を行い,p<0.05を有意差ありと判定することとした.
結果
即時介入群と待機群で破水時の週数,破水から分娩に至るまでの日数に有意な差は認めなかった.母体については,cCAM,産褥熱の発症例数に有意な差は認めなかった(表1).児については,待機群で児の感染を2例認めたが,CRP上昇のみ,あるいは先天性小腸閉鎖に伴う小腸穿孔の2例であり,PROMに伴う敗血症と診断された症例はなかった.NICU入室の有無・日数,新生児一過性多呼吸・人工呼吸管理の有無,児の出生時体重に,明らかな差は認めなかった.
考察
即時介入群,待機群における母児の予後については明らかな差は認めなかった.しかし,破水から分娩に至る日数は両群間で差がなく,即時介入群では15例,待機群では25例が自然陣痛発来により分娩に至った.待機的管理の方針としていても,破水により早期に陣痛発来に至る症例が多かったため,本検討では破水から娩出までの時間が伸びることによる母児への影響を評価することはできない.
既報では,待機的管理でcCAMが増加する可能性が指摘されている3)が,児の敗血症は増加しないこと1,4)またRDSやNICU管理を減らすこと1,4)が指摘されている.本検討ではこのリスクについても結論づけることはできないが,文献考察を加味しても,待機的管理を否定する結果は示されていない.そのため児の予後を考慮し,late preterm PROMに対して待機的管理をすることも1つの選択肢であると考えられるが,実際には早期に陣痛発来してしまう症例も多く,待機的管理の方法については検討の余地があるかも知れない.
結 語
Late preterm PROMに対し待機的管理をした場合も,児の感染の明らかな増加は認めなかった.しかしながら,待機的管理を行う方針としていても,実際は破水後早期に陣痛発来に至る症例が多いことが明らかとなった.