早産予防ペッサリーについて
概要
1960年ごろより頸管縫縮術に代わる低侵襲な方法として、早産予防を日的とした子宮脱用のペッサリーの使用が報告されるようになり、その後、早産予防用として子宮頸管にフィットする専用のペッサリーが開発されました.わが国では、ドクターアラビンペッサリーが臓器脱用ペッサリーとして医療機器承認されています.
材質はシリコン製ドーム型で、小さい開口部の(内径)は17,21,25,30mm,大きい開口部の径(外径)は65,70mm,ドーム部分の高さは32,35mmとさまざまなサイズがあり、母体の体型や子宮頸管の所見,胎児数等に応じて適切なサイズを選択します。
内径を上、外径を下にして膣内へ挿入することにより内径部分が子宮頸管を取り巻き、ドーム状部分が腟円蓋に位置するよう留置され、内径部分は子宮頸管を支持し外径部分は骨盤底により支持されます。頸管ペッサリーを挿入後も経腟超音波を用いて子宮頸管長を測定することが可能であり、柔らかいので挿入や抜去は比較的簡単で外来での管理が可能であり、患者の違和感は挿入・抜去時以外はほとんどありません。
頸管ペッサリーの作用機序についてはいくつかの報告があります。頸管ペッサリーを装着することで子宮頸管へかかる圧力を分散させて負荷を減弱させる、子宮頸管の軸と子宮体部の軸のなす角度を変えることにより内子宮口への圧力を減じるという力学的機序の可能性や、子宮頸管ペッサリーにより子宮頸管粘液が保持され上行感染を予防する可能性が示唆されています.
頸管ペッサリーの主な副作用は、帯下の増量で重篤な副作用では分娩進行中にペッサリーを使用して子宮部壊死に至った症例や、絨毛膜羊膜炎の可能性のある妊婦で使用し母体敗血症に至った報告もあります。頸管ペッサリー装着後に違和感や不正性器出血,子宮口変化を伴う子宮収縮などが生じた場合には、子宮内感染の有無を確認しながら頸管ペッサリー抜去やサイズ変更を考慮することが重要です。
早産ハイリスク単胎に対するペッサリーの有効性については、現在までに2つのmeta-analysisが行われており、2019年に発表された最新のmeta-analysisでは、妊娠34週未満の早産率は有意差を認めませんでしたが、妊娠37週未満の早産率についてデータは少ないものの,ペッサリ一使用群の方が有意に減少しています2,3).わが国では名古屋大学を中心として臨床研究が行われており、今後の報告が待たれます。
現時点ではアラビンペッサリーは早産治療・予防については適応外使用となるため、院内の倫理委員会の承認。患者からの同意書が必要となります。