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大学・研究所にある論文を検索できる 「マウス乾癬モデルにおけるTLR2の役割についての検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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マウス乾癬モデルにおけるTLR2の役割についての検討

中尾, 桃子 東京大学 DOI:10.15083/0002001492

2021.09.08

概要

乾癬は、自然免疫と獲得免疫の協調の異常によって生じると考えられているが、まだ十分には解明されていない。近年、細菌感染や環境変化による自己免疫疾患の発症が自然免疫の作用から解明されつつあり、自己免疫疾患における自然免疫の役割は注目を集めている。

TLR は、病原体のタイプを区別して認識するシグナル伝達レセプターである。近年、TLRは微生物由来の因子だけでなく、自己由来の内在性の因子も認識することが明らかとなり、自然免疫を制御する TLR を介したシグナル伝達が自己免疫疾患に関与していると考えられている。

今回、TLR2 を介したシグナル伝達に注目し、TLR2 ノックアウトマウス(TLR2KO-マウス)を用いて、マウス乾癬モデルを作成し、乾癬におけるTLR2 の役割に関する検討を行った。 TLR2 シグナルは炎症性サイトカインや免疫応答を引き起こすことがしられているが、予想に反してTLR2 の欠損はマウス乾癬モデルにおいて皮膚炎を悪化させていた。野生型マウスと TLR2KO マウスの皮膚においてIL-17A、IL-17F や IL-22 といった Th17 サイトカインは 差がなかったが、IFN-γや CXCL9, CXCL10, IL-27p28, and IL-27EBI3 といったTh1 サイトカインやTNFαはTLR2KO マウスにおいて有意に上昇していた。さらに重要なことにFoxp3 やIL-10 の発現がTLR2KO マウスで低下しており、これらの結果から IL-10 や制御性T 細胞に注目した。

フローサイトメトリーによる解析では、TLR2KO マウスでは、CD4 陽性細胞中の制御性T細胞の割合は低下していた。さらに制御性T 細胞は Pam3CSK4 (TLR2/1 のリガンド)で選択的に刺激すると増殖したが、Pam2CSK4 (TLR2/6 のリガンド)では増殖しなかった。一方で 制御性 T 細胞や樹状細胞からの IL-10 の産生は、Pam3CSK4 と Pam2CSK4 のいずれの刺激 でも増加した。以上の結果から TLR2/1 を介したシグナルが制御性 T 細胞には重要で、IL-10の産生にはTLR2/1, TLR2/6 を介したシグナルのいずれも重要であるということが示唆された。最後に野生型マウスの制御性T 細胞をTLR2KO マウスへ養子移入を行い、乾癬様皮膚炎が減弱し、病変部の皮膚組織での IFN mRNA の発現が低下していることを示した。これらの結果から乾癬様皮膚炎において制御性T 細胞が重要な役割を果たしていて、TLR2 が乾癬の病態において重要な役割を果たしていることが示された。TLR2 を介するシグナルは樹状細胞や制御性T 細胞からの IL-10 の産生や制御性 T 細胞の増殖を促進し、結果として、 炎症性サイトカインの産生は低下し、イミキモド誘発乾癬様皮膚炎は減弱した。今回の実 験結果からTLR2 を介したシグナル伝達を高めることが乾癬の新規治療になりうる可能性 が考えられた。皮疹の程度が軽い乾癬患者に対してはステロイド外用が第一選択であるが、長期ステロイド外用による皮膚の菲薄化や皮膚萎縮が見られるなどの副作用が見られる。 皮疹が中等度から重度の乾癬患者に対しては生物学的製剤による一定の効果が得られているが、二次無効の問題や感染症のリスク上昇、生物学的製剤自体のコストなど課題はまだ多く残っている。乾癬の合併症として、関節炎やブドウ膜炎などがあるが、特に関節炎は疼痛を伴い、不可逆的な関節変形、破壊を起こすことがあり、患者のQOL を著しく低下させる。その他の併存疾患として心血管障害やメタボリックシンドロームや炎症性腸疾患、うつ病などがしられている。近年では、乾癬は全身性炎症性疾患と考えられ、最近の報告では重症乾癬は心血管イベントの独立した危険因子として報告されている。乾癬は、これらの併存疾患の予防のためにも早期治療が重要であり、新規治療の開発が望まれている。 TLR2 をターゲットとするような新規治療の開発により乾癬患者に対して今以上の選択肢を呈することができれば、患者の年齢や ADL、生活環境に合わせた治療法を選択することができ、患者ケアの質もより一層高まると期待される。

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