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大学・研究所にある論文を検索できる 「Effects of damage associated molecular patterns (DAMPs) on immune cells and a search for novel DAMPs in dogs」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Effects of damage associated molecular patterns (DAMPs) on immune cells and a search for novel DAMPs in dogs

衛藤, 翔太郎 東京大学 DOI:10.15083/0002006906

2023.03.24

概要





















衛藤

翔太郎

申請者は、がんと炎症や免疫応答との相互作用に着目し研究を重ねてきた
中で、CCL24(C-C Motif Chemokine Ligand 24)を誘導する新規ダメージ関連分
子パターン(Damage-associated molecular patterns; DAMPs)を発見した成果
をまとめ、学位論文として申請している。DAMPs とは自己の損傷組織や死滅細
胞から放出される自己由来内因性分子の総称であり、免疫応答を惹起すること
でがんや自己免疫疾患などにおける無菌性炎症の引き金になることが近年明ら
かとなっている。ヒトでは HMGB1、HSPs などが DAMPs として同定されて
いる一方、DAMPs の実体や炎症誘導メカニズムには未だ不明な点が多い。イヌ
においても DAMPs の存在や病態への関与が示唆されるものの、イヌ細胞由来
DAMPs による免疫細胞や炎症反応への関与を検討した報告はない。
そこで、イヌ細胞由来 DAMPs が免疫細胞に与える影響を解析し、DAMPs
による無菌性炎症誘導メカニズムの一端を明らかにすべく、第一章では、イヌ悪
性腫瘍細胞由来の細胞内成分を含む上清がマクロファージ細胞株の遺伝子発現
に与える影響を解析している。13 種類の細胞株からネクローシス細胞上清を作
製しマクロファージ細胞株に添加することで、そのほとんどで炎症性サイトカ
イン Tnf の発現誘導は見られず、逆に強力な免疫抑制分子である PGE2 を多量
に含有していることが明らかとなった。またインドメタシンにより PGE2 産生
を阻害したところ Tnf 発現が上昇したことから、何らかの DAMPs が存在し、
同時に放出される PGE2 がその作用に影響を与えていることが示唆された。イ
ンドメタシン処置および未処置のネクローシス細胞上清で刺激したマクロファ
ージ細胞株を RNA-seq により網羅的遺伝子発現解析したところ、PGE2 により
発現抑制される遺伝子群に多くのケモカインが含まれ、その中からこれまで
DAMPs との関連性が報告されていない CCL24 を見出した。
CCL24 は様々な炎症性疾患への関与が報告されているが、がんにおける役
割は不明であったため、第二章では CCL24 のがんにおける役割をマウスモデル
および The Cancer Genome Atlas (TCGA)患者データベースの解析によって検
討している。CCL24 を過剰発現させたマウス腫瘍細胞株を用いたシンジェニッ

クマウスモデルを作製し、CCL24 の発現が腫瘍の成長や免疫微小環境に与える
影響を解析したところ、CCL24 過剰発現細胞株移植マウスでは腫瘍内への好酸
球浸潤が有意に増加していた。ヒトの患者データベース TCGA において in silico
解析したところ、CCL24 や好酸球浸潤を示す 16 個の遺伝子群の高発現は、大
腸癌や悪性黒色腫の患者においては良好な予後と相関していた。マウスモデル
と患者データベースによる解析結果は必ずしも一致しない部分がみられたが、
CCL24 は腫瘍組織内への好酸球の浸潤を誘導することで、腫瘍抑制因子として
作用している可能性が示された。
第三章では CCL24 を誘導する新規 DAMPs およびそのシグナル伝達経路
の同定を試みている。ネクローシス細胞上清をゲルろ過クロマトグラフィーで
精製し CCL24 を誘導する分画を検索し、新規 DAMP が 1~6kDa と比較的小
さい分子であることを明らかにした。さらにペプチダーゼ処理により CCL24 の
誘導が消失したことから、CCL24 発現を誘導する新規 DAMP はペプチドであ
ることが強く示唆された。次にそのシグナル伝達経路を、DAMPs を認識する
Toll 様受容体(Toll-like receptors; TLRs)の下流のアダプター分子である
MyD88 欠損マウス、および TLR2、TLR4 欠損マクロファージを用いて検討し
た結果から、CCL24 は新規 DAMPs によって TLR2-MyD88 依存的に誘導され
ていることを明らかにした。
本論文において、いくつかの組織由来のイヌ細胞は細胞死に際して DAMPs
と PGE2 の両方を放出していることを明らかにし、PGE2 を除去することでこ
れまで報告されていない DAMPs による CCL24 の発現誘導を見出した。この
CCL24 はがんにおいて腫瘍内への好酸球浸潤を促すことで腫瘍抑制的に働いて
いる可能性が示された。さらに CCL24 を誘導する新規 DAMP は、TLR2-MyD88
によって認識されるペプチドであることが強く示唆された。この死細胞由来ペ
プチドの同定および病態における役割、および PGE2 との相互作用を明らかに
することは、DAMPs による無菌性炎症誘導メカニズムのさらなる理解につなが
ることが期待される。
審査会においては、これら研究の科学的意義、実験デザインの妥当性、解析
方法、研究結果のなどについて専門的な質疑が行われたが、申請者は研究全体の
背景から実験手技、科学的解釈に至るまで、詳細かつ明解な説明を行い、博士学
位取得に足る科学的論理性や技術的背景を有していると考えられた。
これらの研究成果は、学術上応用上寄与するところが少なくない。よって、
審査委員一同は本論文が博士(獣医学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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