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大学・研究所にある論文を検索できる 「The pathology of PD-1 signal blockade-induced psoriasis-like dermatitis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The pathology of PD-1 signal blockade-induced psoriasis-like dermatitis

田中, 亮多 筑波大学

2020.07.27

概要

目的:
 本研究では、免疫チェックポイント分子であるProgrammed cell death-1(PD-1)のシグナル阻害で誘導される乾癬様皮膚炎の病態生理を解明することを目的とした。PD-1を標的とする免疫チェックポイント阻害薬は、現在様々な癌免疫療法薬に承認されている。PD-1は腫瘍免疫のみならず、自己免疫応答の逃避にも重要な因子であるとされる。PD-1阻害薬による免疫関連副作用(irAE)の皮膚疾患の一つとして、乾癬様皮膚炎が報告されているが、その発症機序は明らかでなく、したがって特異的治療法も存在しない。

対象と方法:
 PD-1阻害薬治療を行った悪性黒色腫患者で乾癬様皮膚炎発症例とirAE未発症例の治療前後の血清を用い乾癬関連サイトカインをマルチプレックス解析した。また、乾癬様皮膚炎または特発性の乾癬の皮疹部生検標本をCD8およびCD4で免疫組織染色した。
 C57BL/6系統の野生型、PD-1欠損マウス、CD8T細胞上のPD-1発現を特異的に欠損させたマウス(PD-1cKOマウス)へ、Toll-likereceptor7受容体作動薬であるイミキモドを連日塗布して乾癬様皮膚炎を惹起させ、皮膚炎の重症度、組織学的検討およびmRNA発現解析を行った。
 イミキモド誘導性乾癬様皮膚炎を惹起した野生型およびPD-1欠損マウスに対し、抗IL-6受容体抗体を用いて治療実験を実施した。

結果:
 PD-1阻害薬投与下の乾癬様皮膚炎発症例では、irAEが生じなかった症例と比較して統計学的有意に治療後の血清IL-6値が上昇していた(P=0.024)が、他の炎症性サイトカインの血清濃度上昇は認められなかった。また、特発性の乾癬と比較して表皮内浸潤リンパ球のCD8/CD4比が有意に上昇した(3.48±1.0, vs 1.06±0.19, P=0.008)。
 イミキモド誘導乾癬様皮膚炎モデルマウスでは、PD-1欠損群は野生型群よりも、強い耳介腫脹を認め、皮膚炎重症度評価基準PASIスコアは統計学的有意に高値を示した(5.6±0.24 v.s. 2.6±0.24, P<0.01)。また、表皮肥厚および表皮内好中球性微小膿瘍数と浸潤CD8T細胞数、耳介皮膚でのIL6, Il17aおよびIL23amRNA発現はいずれも統計学的有意に増強していた。更に、表皮CD45陽性細胞のIFNγおよび表皮角化細胞のCXCL9mRNA発現も統計学的有意に上昇していた。PD-1cKOマウスでも同様の結果であった。
 PD-1欠損マウスの抗IL-6受容体抗体治療群では、対照群(IsotypeIgG)よりもイミキモド誘導性乾癬様皮膚炎が有意に改善し(PASI;4.3 ± 0.29 vs 7.3±0.31, P<0.01)、野生型マウスの対照群(PASI; 3.5±0.27)と同等であった。PD-1欠損マウス治療群ではPD-1欠損マウス対照群よりも表皮内浸潤好中球性微小膿瘍数は減少し、耳介皮膚のmRNAおよび血清中の乾癬関連サイトカイン(IL-17AおよびIL-23)も有意に低値を示し、それぞれ野生型マウス対照群と同等にまで改善した。

考察:
 ヒトサンプルにおいて、CD8T細胞の表皮内浸潤がPD-1阻害により亢進し乾癬様皮膚炎の増悪に関与していることが示唆された。実際に、PD-1cKOマウスを用いた実験によりCD8T細胞上のPD-1シグナル阻害がこの皮膚炎の病態形成に重要であることが示された。そして、PD-1阻害により活性化したCD8T細胞のIFNγ産生亢進により刺激された角化細胞が、IFNγ誘導性ケモカインであるCXCL9の産生を亢進することで、活性化CD8T細胞の局所への遊走を促進する機序を介して、PD-1阻害誘導性乾癬様皮疹の増悪に関与している可能性が示唆された。
 同様にヒトサンプルの解析から、乾癬においてTh17細胞の分化誘導や好中球の遊走を促進するとされるIL-6が、PD-1シグナル阻害誘導性乾癬様皮膚炎の有望な治療標的と考えられ、PD-1シグナル阻害下乾癬様皮膚炎マウスへの抗IL-6受容体抗体投与にて、Th17細胞関連サイトカイン産生および局所への好中球浸潤が抑制されたことにより、その妥当性が示された。

結論:
 ヒト検体とマウス実験を用いた橋渡し研究である本研究の成果により、PD-1シグナル阻害誘導性乾癬様皮膚炎においてCD8T細胞の表皮内浸潤およびIL-6産生上昇が病態形成に重要であることが示された。また、IL-6標的治療はPD-1阻害誘導性乾癬様皮膚炎を制御する可能性が示唆された。

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