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皮膚発癌と皮膚炎におけるリンパ浮腫の影響

坊木, ひかり 東京大学 DOI:10.15083/0002007079

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名

坊木

ひかり

本研究は皮膚発がんと皮膚炎におけるリンパ浮腫の影響について、リンパ浮腫の病態を
呈する k-cyclin トランスジェニック(kCYC+/−)マウスを用いて実験、解析したものであり、
下記の結果を得ている。
1. DMBA/TPA 誘発性皮膚発癌モデルにおける皮膚腫瘍の大きさが、WT マウスと比較
し kCYC+/−マウスで有意に増大することを示した。また、腫瘍の悪性度が細胞分裂と壊
死細胞の数と共に kCYC+/−マウスで有意に増した。その一方で、腫瘍の数は kCYC+/−マ
ウスと WT マウスで差がなかった。kCYC+/−マウスは DMBA/TPA による新規腫瘍発生
でなく、TPA 誘発性腫瘍促進に高い感受性を有することが示唆された。
2. 皮膚発癌モデルにおいて CD4+ T 細胞数やマクロファージ数は炎症を反映して kCYC+/−
マウスで増加したのに対し、浸潤 CD8+ T 細胞数は有意に減少した。さらに、kCYC+/−マ
ウスでリンパ管機能不全により皮膚樹状細胞サブセットの 4 つ全て、特に
langerin+CD103− ランゲルハンス細胞のリンパ節への遊走が妨げられることを示した。
CD8+ T 細胞の細胞傷害性の低下、およびリンパ管機能不全によるランゲルハンス細胞
の遊走障害が、kCYC+/−マウスにおける DMBA/TPA 誘発性皮膚発癌以降の増殖に関与
することが考えられた。
3. 皮膚発癌モデルにおいて、炎症性サイトカインの mRNA 発現量は kCYC+/−マウスと
WT マウスで差がなかったが、IL-17A、IL-22、IL-23、IL-6 の各炎症性サイトカイン
のタンパク発現量は kCYC+/−マウスの皮膚で有意に増加した。この結果は、kCYC+/−マ
ウスと WT マウスで炎症性サイトカインの産生に差がなく、kCYC+/−マウスで炎症性サ
イトカインが皮膚に貯留したことを示した。また、kCYC+/−マウスの表皮角化細胞にお
ける STAT3 の高活性化と NF-κB 経路は、TPA 塗布 48 時間後にさえ検出された。こ
の結果は、リンパ管機能不全は Th17 サイトカインや IL-6 の生成に影響を与えないが、
それらのサイトカインを皮膚に保持することで DMBA/TPA 皮膚発癌モデルにおける
腫瘍増殖に寄与することを示した。
4. イミキモド誘発乾癬様皮膚炎モデルにおける皮膚症状が、WT マウスと比較し kCYC+/−
マウスで有意に増悪した。耳の厚さも kCYC+/−マウスで有意に増強した。また、CD4+

T 細胞、CD8+ T 細胞、マクロファージ、major histocompatibility complex (MHC) class II +
細胞の数が有意に増加することを示した。
5. イミキモド誘発乾癬様皮膚炎モデルにおいて、乾癬の病態において重要な IFN-γ、TNFα、IL-17A、IL-22、IL-23p40、IL-23p19 の各炎症性サイトカインの mRNA 発現量は、
kCYC+/−マウスと WT マウスで同程度であった。一方で、ウエスタンブロット解析によ
る前述の各炎症性サイトカインのタンパク発現量は、WT マウスと比較し kCYC+/−マウ
スで有意に増加した。加えて、リン酸化した STAT3 と NF-κB p65 の核内移行も kCYC+/−
マウスで有意に増加することを示した。以上の結果より、リンパ灌流障害による炎症性
サイトカインの蓄積が、kCYC+/−マウスにおけるイミキモド誘発乾癬様皮膚炎の増悪に
関与すると考えられた。
以上、本論文はリンパ浮腫を示す kCYC+/−マウスにおいて、二段階皮膚発癌が増悪した。
CD8+ T 細胞の減少が、組織学的悪性度に関与した可能性が考えられた。kCYC+/−マウスで
はランゲルハンス細胞と真皮樹状細胞の遊走が障害されており、早期から IL-17A、IL-22、
IL-23、IL-6 の各炎症性サイトカインのタンパクの蓄積と下流シグナル伝達の増強を認め、
腫瘍増殖に寄与している可能性が考えられた。また、kCYC+/−マウスにおいてイミキモド誘
発皮膚炎が増悪した。IFN-γ、TNF-α、IL-17A、IL-22、IL-23 の各炎症性サイトカインの
タンパクの蓄積と下流シグナル伝達の増強を認め、皮膚炎の増悪に関係した可能性が示唆
された。両モデルで皮膚病変部に炎症性サイトカインが蓄積し、下流シグナルが増強してい
たことは、リンパ管機能不全を伴う患者に対する新たな治療標的になり得ると考えられる。
リンパ浮腫に続発する悪性腫瘍などの合併症に対して、新たな予防法・治療法を提示する重
要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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