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大学・研究所にある論文を検索できる 「腎代替療法を要する急性腎障害患者における予後予測因子の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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腎代替療法を要する急性腎障害患者における予後予測因子の検討

吉田, 輝彦 東京大学 DOI:10.15083/0002002446

2021.10.15

概要

【背景】急性腎障害(Acute Kidney Injury, AKI)は重症患者に高頻度に合併しそれに伴い死亡率が有意に上昇する、現時点で有効な治療が存在しない症候群である。支持療法である腎代替療法を要する最重症のAKIにおいては死亡率が50%を超え、腎代替療法から離脱ができない症例においては予後がより不良であることが知られている。持続的腎代替療法(Continuous Renal Replacement Therapy, CRRT)による治療開始時期の早期化による予後の改善を企図した臨床研究が多数行われる中で、CRRT終了時期に関しての研究は限られており、CRRT離脱基準は一定したものが存在しない。同時にCRRTを施行すること自体による悪影響を意味したCRRTトラウマという概念も近年提唱されてきており、腎代替療法の至適終了時期に関する検討、またその指標となりうるバイオマーカーの検討の必要性があると考えた。本研究では後ろ向きにCRRT施行患者を対象に短期予後指標としてのCRRT離脱の予測因子の検討を行い、既知の因子に加えて動的推算糸球体濾過量(Kinetic estimated Glomerular Filtration Rate, Kinetic eGFR)という動的指標の検討を行った。次に前向きにCRRT施行患者を対象としたコホートにおいて、後ろ向きコホートで得られた知見の検証を行うとともに、尿中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(neutrophil gelatinase-associated lipocalin, NGAL)とL型脂肪酸結合蛋白(L-type fatty acid-binding protein, L-FABP)というAKI早期診断マーカーとして知られる腎組織障害マーカーの中長期予後予測マーカーとしての有用性を検討した。

【方法】本研究は後ろ向き・前向き観察研究として行った。後ろ向き研究では東京大学医学部附属病院において2015年5月から2016年4月の期間にCRRTを受けたAKI患者を対象とし、68例中52例が解析対象となった。背景情報・CRRT関連指標・予後指標・毎日の尿量と血清クレアチニンの情報検索を行った。アウトカムをCRRT中止時から48時間以内のCRRT再開あるいは7日以内の間欠的腎代替療法(Intermittent Renal Replacement Therapy, IRRT)がなされた場合はCRRT非離脱と定義し、いずれも満たさない場合はCRRT離脱と定義し、CRRT離脱の予測因子の受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic, ROC)解析を行った。前向き研究では2016年8月から2018年3月の期間に同院にてCRRTを受けたAKI患者を対象とし、109例中73例が解析対象となった。CRRT離脱時に血液検査を行い、CRRT離脱後24時間以内に尿NGAL, L-FABPを含む尿検査を行った。CRRT離脱のアウトカムに加えて主要腎イベント(Major Adverse Kidney Events, MAKEs)をCRRT開始から90日以内の死亡あるいは90日経過時点での腎代替療法施行中あるいはベースラインeGFRからの25%以上のeGFRの低下と定義した。CRRT離脱とMAKEsと90日死亡の予測因子のROC解析を行った。本研究は東京大学医学部倫理委員会により承認された(倫理番号2810, 11239)。研究の対象とした症例において, 患者本人もしくは家族より同意を取得した。

【結果】後ろ向きコホートでは52例の解析対象患者のうち38例がCRRT離脱群、14例がCRRT非離脱群に分類された。離脱群において有意に高い自宅退院率(53%(18/38例)/8%(1/14例))(離脱群/非離脱群, 以下同様)と有意に低い院内死亡率(16%(6/38例)/50%(7/14例))であった。離脱予測因子の候補とされた尿量, eGFR, Kinetic eGFRはいずれもROC解析で曲面下面積(Area under the Curve, AUC)0.7を上回っており高い精度であった。Kinetic eGFRと尿量と利尿薬投与を従属変数としてCRRT離脱を目的変数とした多変量ロジスティック回帰分析を行うと、Kinetic eGFRがCRRT離脱と有意な関連が見られたとともに、尿量にKinetic eGFRを組み合わせることでAUC0.93と尿量単独と比較して有意に精度が高まった。またDiscontinuation Indexという尿量とKinetic eGFRから簡便に計算されるモデルを作成したところ、AUC0.87でCRRT離脱を予測した。次に前向きコホート対象の109例CRRT施行全例に対して離脱群別にCRRT開始からの90日生存率を解析すると、打ち切り12例を除いた90日生存率は非離脱群で23%(9/40例)、離脱群で84%(48/57例)と有意に差を認めた(ログランク検定, P-値<0.001)。前向きコホートでの除外基準を満たした36例を除いた73例が解析対象となり、59例がCRRT離脱群、14例がCRRT非離脱群に分類された。アウトカムのうちMAKEsに関しては離脱群で有意に少なかった(28%(17/59例)/64%(9/14例))。CRRT離脱予測因子の単変量解析では後ろ向きコホートで検討を行った各種因子は前向きコホートでも同様に有意差を認めた。ROC解析では尿量がAUC0.91と最も高い精度を示し、Kinetic eGFRを含む他因子は組み合わせても尿量の精度に及ばなかった。またDiscontinuation IndexもAUC0.76と後ろ向きコホートと比較して精度が低下した結果であった。MAKEs予測因子のROC解析では尿NGALがAUC0.76と尿量(AUC0.59)より有意に高い精度を示し、90日死亡予測因子のROC解析では尿量と比較して有意差はないものの尿L-FABPがAUC0.79と精度が高い傾向を示した。

【結論】後ろ向き・前向きコホートの両結果から短期予後指標としてのCRRT離脱の予測因子としては尿量が最も有用であることが示された。CRRT患者の中長期予後指標であるMAKEsの予測因子としては尿NGAL, 90日死亡の予測因子としては尿L-FABPが最も高い精度を示した。CRRTを要するAKI患者においてCRRT離脱時の尿量を始めとした腎機能マーカーの測定は短期予後としてのCRRT離脱予測に有用であり、尿NGALや尿L-FABPといった腎組織障害マーカーの測定は中長期予後予測に有用である可能性が示唆された。
AKIにおける腎機能マーカーと腎組織障害マーカーは異なる特性を持っており、異なる予後を予測することが明らかとなった。今後の重症AKI患者に対する臨床での有用性が期待されると同時に、多施設での結果の検証が望まれる。

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