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大学・研究所にある論文を検索できる 「軽度認知障害者における認知力アップデイケアの出席率と局所脳容積減少量との関連性の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

軽度認知障害者における認知力アップデイケアの出席率と局所脳容積減少量との関連性の解明

朴, 要俊 筑波大学 DOI:10.15068/0002008467

2023.09.04

概要

筑 波 大 学

博 士 ( 医 学 ) 学 位 論 文

軽度認知障害者における
認知力アップデイケアの出席率と
局所脳容積減少量との関連性の解明

2022

筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科



要俊

2

原典論文
この学位論文は、The Multicomponent Day-Care Program Prevents Volume Reduction
in a Memory-Related Brain Area in Patients with Mild Cognitive Impairment. Youshun
Boku, Miho Ota, Miyuki Nemoto, Yuriko Numata, Ayako Kitabatake, Takumi Takahashi,
Kiyotaka Nemoto, Masashi Tamura, Aya Sekine, Masayuki Ide, Yuko Kaneda, Tetsuaki
Arai.

Dementia

and

Geriatric

Cognitive

Disorders.

2022;

51:

120-

127. doi.org/10.1159/000522654.を原典とする。

本 学 位 論 文 で は Dementia and Geriatric Cognitive Disorders. 2022; 51: 120127. doi.org/10.1159/000522654.に掲載された論文の内容を、Karger 社の規定にしたがっ
て再利用している。

3

目次
略語 ....................................................................................................................................... 6
背景 ....................................................................................................................................... 7
1. 認知症概論〜概念や疫学的動向 ............................................................................... 8
2. 軽度認知障害の概念と非薬物療法の重要性 ............................................................. 9
3.健常者および MCI 例の認知機能に対する非薬物的介入の効果 ........................... 10
3-1. 健常者を対象とした研究報告 ...................................................................... 11
3-1-a. 単因子介入 ......................................................................................... 11
3-1-b. 多因子介入 ......................................................................................... 13
3-2. MCI 例を対象とした研究報告 ...................................................................... 14
3-2-a. 単因子介入 ......................................................................................... 14
3-2-b. 多因子介入 ......................................................................................... 15
4. 非薬物的介入によって生じる脳の構造的変化 ........................................................ 16
目的 ...................................................................................................................................... 18
方法 ...................................................................................................................................... 20
1. 被験者の登録基準 .................................................................................................... 21
2. 認知力アップデイケアの内容 .................................................................................. 21
3. MRI データの収集と解析 ......................................................................................... 22
4. 統計分析 .................................................................................................................. 25
5. 倫理的配慮 ............................................................................................................... 26
結果 ...................................................................................................................................... 27
1.標本の統計学的・臨床的特徴 .................................................................................... 28
2.各 ROI の 1 日容積変化量 ........................................................................................ 28

考察 ...................................................................................................................................... 29
1.得られた結果のまとめ ............................................................................................ 30
2.先行研究との比較 .................................................................................................... 31
3.非薬物的介入による脳容積増加の機序について..................................................... 34
4. 本研究の限界と今後の課題 ..................................................................................... 36
結語 ...................................................................................................................................... 40
要約図 .................................................................................................................................. 42
参考文献 .............................................................................................................................. 44
謝辞 ..................................................................................................................................... 63
出典 ..................................................................................................................................... 65
図表 ..................................................................................................................................... 66

5

略語
ACC

Anterior cingulate cortex,前部帯状皮質

AHN

Adult hippocampal neurogenesis,成体海馬での神経新生

ANCOVA

Analysis of covariance,共分散分析

BrdU

Bromodeoxyuridine,ブロモデオキシウリジン

DSM-5

Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition,精神
疾患の診断・統計マニュアル第 5 版

IGF-I

Insulin-like growth factor-1,インスリン様成長因子

MCI

Mild cognitive impairment,軽度認知障害

MMSE

Mini-Mental State Examination,ミニメンタルステート検査

MRI

Magnetic resonance imaging,核磁気共鳴画像

mRNA

Messenger RNA,メッセンジャーRNA

PET

Positron emission tomography,ポジトロン断層撮影

rACC

Rostral anterior cingulate cortex,吻側前部帯状皮質

RCT

Randomized controlled trial,ランダム化比較試験

ROI

Regions of interest,関心領域

SPECT

Single photon emission computed tomography,単光子放射断層撮影

TrkB

Tyrosine kinase receptor B,トロポミオシン関連チロシンキナーゼ B

WHO

World Health Organization,世界保健機関

6

背景

7

1. 認知症概論〜概念や疫学的動向
認知症の定義は、世界保健機関(World Health Organization: WHO)が 1993 年に発行
した国際疾病分類第 10 版(International Statistical Classification of Diseases and Related
Health Problems 10th Revision: ICD-10)および、米国精神医学会が 2013 年に発行した精
神疾患の診断・統計マニュアル第 5 版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental
Disorders, Fifth Edition: DSM-5)の記載が代表的であり、世界的に広く用いられている。
日本の精神医学領域では、DSM-5 の診断基準による定義が用いられることが多い。それ
によると、1 つ以上の認知領域(複雑性注意、遂行機能、学習および記憶、言語、知覚-
運動、社会的認知)において、以前の行為水準から有意な認知の低下が認められ、そのた
めに、例えば請求書を支払う、内服薬を管理するといった複雑な手段的日常生活動作に援
助を必要とするなど、日常の活動において認知機能低下が自立を阻害する状態と定義され
る[1]
。急速な高齢化に伴い、認知症患者は多くの国と地域で増加し続けており、WHO
の報告では、2018 年時点で、全世界で約 5000 万人であり、2030 年には約 8200 万人、
2050 年には約 1 億 5200 万人に達すると推計されている[2]
。日本における認知症に関す
る最新の統計学的報告では、認知症患者数は、2012 年時点で 462 万人であると報告さ
れ、65 歳以上の高齢者の有病率は 15%と推計された。各年齢層の有病率が 2012 年以降一
定であると仮定した場合、認知症患者数は 2025 年には 730 万人に達すると推計されてい
る[3]
。認知症発症率の変遷には地域差があることが知られており、特に北米や西欧の先
進諸国では、最近 40 年間にわたり、認知症発症率は 10 年あたり 10-38%低下傾向にある
とする複数の報告が、2010 年代よりされ始めている[4-9]
。最近の報告では、2020 年に
Wolters らは、アメリカや西欧諸国の 7 つのコホート研究を総合的に解析し、1988 年から
2015 年の約 25 年間における認知症発症率を調査した。全 5 万人を対象にしたこの研究に
おいては、この 25 年間に認知症発症率が 10 年あたり 13%低下傾向にあることが報告され
た[4]
。北米や西欧の先進諸国における最近の認知症発症率低下の原因としては、複数の
8

因子がこの数十年間に変化したため定説は得られていないものの、最近数十年の先進諸国
での生活の質の改善や、血圧管理・抗血栓療法・脂質異常症管理・血糖管理といった心血
管危険因子への介入の普及が寄与している可能性が指摘されている[4]
。更に、より活動
的で知的な生活様式が認知症発症予防に効果的であるとするエビデンスが蓄積され[1012]、先進諸国でこれらの生活様式の普及・啓蒙が促進されてきたことも関係している可
能性がある[5]。運動や認知療法といった非薬物的介入が認知機能の改善や認知症発症率の
低下に及ぼす効果についても多くの知見が集積されつつあり、それらについては本章第 3
部に詳述する。

2. 軽度認知障害の概念と非薬物療法の重要性
正常加齢では説明できない程度の認知機能低下を示す者を早期に発見し治療介入を始
め、認知症に至る前の段階で進行を予防する必要性が指摘されるようになる中、1999 年、
Petersen らにより軽度認知障害(Mild cognitive impairment: MCI)という概念が提唱され
た[13]
。現在は様々な診断基準が存在し、DSM-5 では、上記に示した 1 つ以上の認知領
域において、以前の行為水準から軽度の認知の低下を認め、複雑な手段的日常生活動作に
おいてより大きな努力、代償的方略、または工夫が必要となっているものの、日常の活動
における自立は阻害されていない状態であると定義されている[1]
。65 歳以上を対象にし
た複数の疫学研究により、MCI から認知症への進行率(コンバート率)は 10-15%/年であ
り、同年代の認知症発症率である 1-2%を大きく上回ることから、MCI には認知症の初期
段階にある一群が含まれるとされている[14,15]
。一方、MCI から正常へのリバート率は
およそ 5-50%/年と報告により幅があるが、早期介入により認知機能が改善する可能性が
高くなると考えられている[16-18]
。MCI 例を早期に診断し治療介入を始め、認知症への
進行を予防することが重要な課題であり、その治療法の確立に向けて様々な研究が行われ
ている。
9

認知症に対する薬物療法は、本邦では 3 種類のコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジ
ル、ガランタミン、リバスチグミン)と N-Methyl-D-aspartate (NMDA)受容体拮抗薬で
あるメマンチンの計 4 種類が Alzheimer 型認知症に、ドネペジルが Lewy 小体型認知症に
各々保険適用を有し、日常臨床で広く使用されている。コリンエステラーゼ阻害薬は、学
習や記憶に関連する神経伝達物質であるアセチルコリンの分解酵素を阻害することによ
り、認知機能の改善効果をもたらす。また、NMDA 受容体拮抗薬は、過剰な活性化によ
り神経毒性をもたらすグルタミン酸の受容体である NMDA 受容体を阻害することによ
り、認知機能の改善効果をもたらす。アメリカでは最初の抗認知症薬としてコリンエステ
ラーゼ阻害薬のタクリンが承認されたが、強い肝毒性のため現在では使用されていない。
MCI から認知症への進行予防あるいは MCI 例の認知機能低下の抑制を目的とした薬物療
法については、これまでドネペジル[19-21]
、ガランタミン[22]
、リバスチグミン
[23]などを含めて多くの研究が行われたが、いずれにおいても効果は認められておらず
[19-31]
、MCI 例に対してエビデンスを有する薬剤は存在しないのが現状である[32]

一方、非薬物的な対応としては、血圧管理などの生活習慣病の予防、有酸素運動や筋力ト
レーニングを含めた運動療法、認知療法、音楽療法などの効果が報告されているが[3242]
、研究により介入方法が様々で統一されたプログラムがなく、その効果量やエビデン
スレベルについても十分とは言えないのが現状である。次項より、健常者および MCI 例
に対する非薬物的介入に関するこれまでの研究について概観する。

3.健常者および MCI 例の認知機能に対する非薬物的介入の効果
運動療法、認知療法、音楽療法といった非薬物療法が認知機能改善にもたらす効果につ
いては、これまでに多くの研究が行われてきた。介入方法としては、例えば有酸素運動の
みといった単因子介入と、運動療法と認知療法との組合せといった多因子介入に大別され
る。以下に、対象患者が健常者である研究と、MCI 例を対象とした研究に分け、単因子介
10

入と多因子介入におけるこれまでの研究の成果について整理する。

3-1. 健常者を対象とした研究報告
3-1-a. 単因子介入
単因子介入が健常者の認知機能に及ぼす効果については、運動療法に関して最も多くの
研究が行われてきた[43-55]
。運動習慣による認知機能改善や認知症発症率低下に関する
観察研究は、2000 年代初頭より報告されている。例えば、2003 年に Barnes らは、55 歳
以上の健常人 349 人にトレッドミルを用いた運動を課した後に心肺機能を測定し、6 年後
の認知機能の変化との関連を追跡する前向きコホート研究を行なった。心肺機能として
は、運動中の最高酸素摂取量や運動継続時間などが測定された。その結果、心肺機能が低
いほど、Mini-Mental State Examination (MMSE)を含めて施行した全ての認知機能検査に
おける得点が低い傾向があることを報告した[43]
。2004 年に van Gelder らは、70〜90
歳の健常高齢者 295 人を 10 年間追跡し、質問形式による身体活動度と MMSE との関連を
調査した。そして、10 年間に 1 日あたりの身体活動時間が 60 分以上減少した集団は、身
体活動時間を維持していた集団と比較し、認知機能低下の度合いが 2.6 倍であったと報告
した[44]
。運動と認知症発症率との関連性についての研究の例としては、2004 年に
Abbott らが、71〜93 歳の健常高齢男性 2257 人の 1 日あたりの歩行距離を記録し、認知症
発症率との関連を調査する前向きコホート研究が挙げられる。この研究では、年齢調整後
において、1 日歩行距離が 0.25 マイル未満の集団は2マイル以上の集団に比べて、認知症
発症率が 1.8 倍になることが明らかとなった[45]

運動療法に関する介入研究の結果についても複数の報告がある。有酸素運動の例として
は、2012 年の Langlois らによるランダム化比較試験(Randomized controlled trial:
RCT)が挙げられる。この研究では、61〜89 歳の健常高齢者 83 人を、1 回 60 分、週 3
11

回、12 週間のトレッドミルやバイクを用いた有酸素運動を行う群と対照群に割り付け、介
入前後の認知機能の変化を比較した。その結果、処理速度、ワーキングメモリ、遂行機能
などの認知機能が有酸素運動群で有意に改善していた [46]。また、筋力トレーニングなど
の無酸素運動についても、健常者の認知機能に及ぼす効果を検討した報告がある。2010 年
に Liu-Ambrose らは、65〜75 歳の健常高齢女性 155 人を、1 回 60 分、週 1 回、52 週間
の低負荷筋力トレーニング群と、週 2 回の高負荷筋力トレーニング群、対照群の 3 群に割
り付け、介入前後の認知機能変化を比較する RCT を行った。その結果、高負荷および低
負荷の筋力トレーニング群のいずれにおいても、対照群に比較し、選択的注意を評価する
Stroop test の成績が有意に向上していた[47]
。なお、運動が認知機能の改善に寄与する
メカニズムの一つとして、運動による血清中の脳由来神経栄養因子(brain derived
neurotrophic factor: BDNF)の上昇が報告されている[56-58]
。BDNF は、神経新生、シ
ナプス形成、樹状分枝、神経保護などに関わる機能を有しており[59]
、運動により、
BDNF による海馬でのシナプス増強が促進されることが認知機能の改善に繋がる可能性が
指摘されている[60]。 ...

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