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書き出し

太陽条件および惑星固有磁場が太古火星の電離大気散逸に与える影響の研究

坂田, 遼弥 関, 華奈子 京都大学

2023.03

概要

太陽条件および惑星固有磁場が太古火星の電離大気散逸に与え
る影響の研究
Effects of solar conditions and a planetary intrinsic magnetic field on ion escape from ancient
Mars
研究代表者:坂田遼弥

(東京大学理学系研究科)
r.sakata@eps.s.u-tokyo.ac.jp

研究分担者:関華奈子

(東京大学理学系研究科)
k.seki@eps.s.u-tokyo.ac.jp
担当:指導教員、議論

研究目的 (Research Objective):
太古火星における大規模な気候変動を引き起こした物理過程の一つとして宇宙空
間への大気散逸が挙げられている。太古火星は現在よりも強力な太陽 X 線・極端紫外
線放射(太陽 XUV 放射)や太陽風に曝されており、活発な電離大気の散逸(イオン
散逸)が起きていたと推定されている。しかし恒星 XUV 放射や恒星風の時間発展は
一意ではなく、当時の太陽 XUV 放射・太陽風条件には 1 桁程度の不確実が存在する。
一方で現在の火星表面に存在する残留磁場の分布から、太古火星は全球的な固有磁場
を保持していたことが示唆されている。先行研究 (Sakata et al., 2020, JGR) や前年
度までの共同研究では主に固有磁場影響に着目し、固有磁場の影響が太陽風動圧に対
する固有磁場の磁気圧の大きさに依存していること、固有磁場の影響は特に電離圏ア
ウトフローが主な散逸過程である分子イオン (O2+, CO2+) に対して大きいことが明ら
かにした。本年度は、前年度と同様のグローバル多成分 MHD (磁気流体力学)モデ
ル REPPU-Planets による検証に加えて、新たに開発した多流体 MHD モデルの有効
性の検証や、多流体 MHD シミュレーションに基づいたイオン散逸の研究を行うこと
を目指した。イオン種ごとの運動方程式およびエネルギー方程式を解く多流体 MHD
モデルを用いることでより正確なイオン散逸過程や散逸率の検証が可能になるほか、
多成分 MHD 近似と多流体 MHD 近似の比較によってイオン種ごとの運動の違いがイ
オン散逸に与える影響への理解が深まることが期待される。

計算手法 (Computational Aspects):
多成分 MHD 計算には前年度に引き続いて 3 次元グローバル多成分 MHD モデル

REPPU-Planets (Terada et al. 2009, JGR; Sakata et al., 2020, JGR) を用いた。ま
3
MHD モデル
た、多流体 MHD 計算としては新たに開発した次元グローバル多流体
を用いた。多流体 MHD モデルは磁場の誘導方程式に加えてイオン種ごとの連続の式、
運動方程式、エネルギー方程式を解く形になっている。電離圏や磁気圏で重要となる
各種反応(光電離、電荷交換、電子衝突電離、化学反応、衝突による運動量交換)は
-3
3-

REPPU-Planets(Terada et al., 2009, and references therein) と同様のものを使用し
ているほか、多成分 MHD モデルでは考慮する必要のないイオン・イオン衝突につい
ても組み入れた。また本モデルでは電子の圧力方程式を独立して計算しており、光電
子による加熱や CO2 大気との非弾性衝突による冷却など電子に関する反応を組み入

2
semi-discrete central scheme を採用し、時間方
れた。計算スキームには次精度の
向の積分は 3 次精度の TVD Runge Kutta 法を用いて行った。計算グリッドには

Cubed sphere グリッドを採用した。 Cubed sphere グリッドはほぼ一様なグリッドと
同一の局所座標系を持つ 6 つの面で構成されており、時間刻み幅や並列化の観点から
計算効率が良い。本研究では高度 100 km から 40 惑星半径までの計算領域を動径方
6
MPI による並列化を行った。
向には 80 分割、水平方向にはつの面ごとに分割して
:

00

j


研究成果( Accomplishments

新たに開発した多流体 MHD モデルの検証の一環として、先行モデルである

BATS-R-US との比較計算を行った。中性大気および太陽風の条件は太陽極小期にお
ける現在火星のものを使用したが、残留磁場は保持していないと仮定した。どちらの
モデルでも準平衡状態に達するまで計算を行い、両者の結果を比較した。その結果、衝
撃波の位置や誘導磁気圏の構造、電離圏内の密度プロファイルが良く一致した。また、惑

8
星由来の重イオン(O+, O2+, CO2+)の散逸率も最大%の差異の範囲内で一致しており、新
モデルが先行モデルと遜色ない精度で太陽風と火星電離圏・磁気圏の相互作用シミュレー
ションを行えることを確かめられた。また比較検証の過程において、組み入れている物理過
程のパラメータ設定がイオン散逸率に一定の影響を与えることが明らかになったため、そち
らについても検証を進めた。物理過程に関するパラメータの代表例としては光電子による加
熱率が挙げられる。標準ケースでは光電子によって供給されるエネルギーを 1 eV としたが、
それに加えて 0.3 eV, 5 eV としたケースについても検証した。その結果、特に分子イオンの
散逸率に数倍の変化が見られた。解離性再結合による分子イオンの消失率は電子温度に
依存することから光電子による加熱率が影響を与えたと考えられる。また今回の比較検証で
使用した条件では電離圏のプラズマ圧と太陽風の動圧が同程度 (~1 nPa) であることから、
電離圏の加熱に伴うプラズマ圧の増大が電離圏と太陽風との圧カバランスにも影響を与え
た可能性がある。これらの検証結果については今後も詳細な解析を進める予定である。
また、多成分 MHD モデル REPPU-Planets による研究をまとめた投稿論文を発表した

(Sakata et al., 2022, JGR)。固有磁場によるイオン散逸への影響は、惑星表面での固有
磁場による磁気圧 (Pdipole) と太陽風動圧 (Pdyn) の比で 0.1 を境に変化することや、電
離圏アウトフローが主な散逸過程である分子イオンヘの影響が特に大きいことを明
らかにした。
参考文献

Sakata, R., Seki, K., Sakai, S., Terada, N., Shinagawa, H., & Tanaka, T. (2020). Effects of
an intrinsic magnetic field on ion loss from ancient Mars based on multispecies MHD

-34-

simulations. Journal of Geophysical Research: Space Physics, 125, e2019JA026945.
https://doi.org/ 10.1029/2019JA026945
Terada, N., H. Shinagawa, T. Tanaka, K. Murawski, & K. Terada (2009), A
three-dimensional, multispecies, comprehensive MHD model of the solar wind interaction
with the planet Venus, J. Geophys. Res., 114, A09208, doi:10.1029/2008JA013937.
公表状況( Publications )::
(論文)

1. Sakata, R., Seki, K., Sakai, S., Terada, N., Shinagawa, H., & Tanaka, T. (2022).
Multispecies MHD study of ion escape at ancient Mars: Effects of an intrinsic magnetic
field and solar XUV radiation. Journal of Geophysical Research: Space Physics, 127,
e2022JA030427. https://doi.org/10.1029/2022JA030427
(口頭)

1. 坂田遼弥,関華奈子,堺正太朗,寺田直樹,品川裕之 , Simulations of ion escape at
ancient Mars based on a new multifluid MHD model with the cubed sphere, 日本地球惑
星科学連合大ム
云,ハイフリッド, PEM16-12 2021 年6月
2. ...

参考文献

Sakata, R., Seki, K., Sakai, S., Terada, N., Shinagawa, H., & Tanaka, T. (2020). Effects of

an intrinsic magnetic field on ion loss from ancient Mars based on multispecies MHD

-34-

simulations. Journal of Geophysical Research: Space Physics, 125, e2019JA026945.

https://doi.org/ 10.1029/2019JA026945

Terada, N., H. Shinagawa, T. Tanaka, K. Murawski, & K. Terada (2009), A

three-dimensional, multispecies, comprehensive MHD model of the solar wind interaction

with the planet Venus, J. Geophys. Res., 114, A09208, doi:10.1029/2008JA013937.

公表状況( Publications )::

(論文)

1. Sakata, R., Seki, K., Sakai, S., Terada, N., Shinagawa, H., & Tanaka, T. (2022).

Multispecies MHD study of ion escape at ancient Mars: Effects of an intrinsic magnetic

field and solar XUV radiation. Journal of Geophysical Research: Space Physics, 127,

e2022JA030427. https://doi.org/10.1029/2022JA030427

(口頭)

1. 坂田遼弥,関華奈子,堺正太朗,寺田直樹,品川裕之 , Simulations of ion escape at

ancient Mars based on a new multifluid MHD model with the cubed sphere, 日本地球惑

星科学連合大ム

云,ハイフリッド, PEM16-12 2021 年6月

2. 坂田遼弥,関華奈子,堺正太朗,寺田直樹,品川裕之,田中高史多成分

MHD による

XUV 放 射 の 影 響, 日 本 惑 星 科

太古火星におけるイオン散逸の研究固有磁場と太陽

学会 2022 年秋季講演会,水戸, SA-07-05 ,2022 年9月

-3

5-

...

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