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大学・研究所にある論文を検索できる 「プレミルシナンジテルペンの合成研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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プレミルシナンジテルペンの合成研究

吉永, 浩平 名古屋大学

2023.05.22

概要

報告番号



















論文題目

プレミルシナンジテルペンの合成研究



吉永



浩平

論 文 内 容 の 要 旨
【背景・目的】プレミルシナンはトウダイグサ科の植物から単離さ
れる代表的なジテルペンである。トウダイグサ科の植物は古来より
自然薬として用いられており、現代においても大戟や甘遂といった
生薬が人々の健康を支えている。このようにトウダイグサ科の植物
は、人類にとって有益な生物活性を示す天然物を含むものが多く、
右 に 示 す

14-oxopremyrsinol(1) で は 抗 ウ イ ル ス 活 性

euphorbiaproliferins (2)で は 神 経 保 護 作 用
はカリウムチャネルの阻害活性

3)

2)

1)



、 falcatin P (3)で

が報告されている。プレミルシナ

ンは魅力的な生物活性を示す一方で、その合成研究はほとんど行わ
れておらず、これは構造的複雑さが理由として挙げられる。基本骨
格 と し て 1 の 赤 線 で 示 す [5-7-6-3]の 四 環 性 の 炭 素 骨 格 を 持 ち 、中 に
は 2 の様な環状エーテルや 3 のようなアセタール環を形成している
も の も あ る 。ま た 、11 個 以 上 の 連 続 す る 不 斉 中 心 と 多 数 の 酸 素 官 能
基を有することもその合成を困難なものとしている。以上の背景よ
り、薬学的観点から興味深い天然物であるプレミルシナンへの化学的なアクセスを可
能とすべく、合成経路の確立を目的として本研究に着手した。
【 逆 合 成 解 析 】 プ レ ミ ル シ ナ ン 4 が 13,14 位 に 持 つ 二 つ の 酸 素 官 能 基 は 、 二 重 結 合 に
対するジヒドロキシ化により導入できるとして、7 員環上に二重結合を持つ 5 を中間
体 と し て 設 定 し た 。こ の 二 重 結 合 は 閉 環 メ タ セ シ ス 反 応 (RCM)に よ り 形 成 で き る も の と
考 え る と 、 ジ エ ン 6 へ と 逆 合 成 さ れ る 。 6 の 6,12 位 は 、 7 位 ケ ト ン の ,位 で あ る こ
と か ら 、 エ ノ ン と 有 機 銅 試 薬 を 用 い た 三 成 分 カ ッ プ リ ン グ 反 応 が の 合 成 と し て 合 理
的 で あ る と 考 え た 。つ ま り 、イ ソ プ ロ ペ ニ ル 銅 試 薬 を エ ノ ン 8 に 1,4-付 加 し た 後 、生
じる銅エノラートに対してアルデヒド 7 を作用させることでアルドール反応が進行す

れ ば 、ジ エ ン 6 を 一 挙 に 合 成 で き る と 考 え た 。ま た 、12 位 で の 反 応 は ジ メ チ ル シ ク ロ
プロパンとの立体反発により紙面奥側から進行するものと考えられることから、高い
立体選択性が発現すると予想した。

【5 員環ユニット 7 および 6 員環ユニット 8 の合成】市販品から 2 工程で調製される
エノン 9

4)

を 利 用 し 、 五 員 環 ユ ニ ッ ト 7 の 合 成 を 行 っ た 。 ま ず 、 LDA を 用 い て ケ ト ン 

位 を メ チ ル 化 し た 後 、CBS 還 元 を 行 う こ と で 、ア ル コ ー ル 11 を ジ ア ス テ レ オ 選 択 的 に
得 た 。こ の 時 、光 学 分 割 に よ り 得 ら れ た 11 は 84:16 の エ ナ ン チ オ マ ー 比 を 有 し て い た 。
次 に 、 脱 TBS 化 と ベ ン ジ リ デ ン ア セ タ ー ル 化 の 後 、 DIBAL を 用 い た 還 元 的 な 開 環 反 応
を 経 て 、 ベ ン ジ ル エ ー テ ル 13 を 合 成 し た 。 15 位 に 酸 素 官 能 基 を 導 入 す べ く 二 重 結 合
に 対 し ヒ ド ロ ホ ウ 素 化 を 行 っ た 後 、生 じ る ジ オ ー ル 14 の 第 一 級 水 酸 基 を TBS 化 、第 二
級 水 酸 基 を 酸 化 す る 事 で ケ ト ン 15 へ と 変 換 し た 。閉 環 メ タ セ シ ス 反 応 に 必 要 な 二 重 結
合を導入すべく、ビニルグリニャール試薬をケトンへと付加させ、生成物が持つ第三
級 水 酸 基 を メ チ ル 基 で 保 護 し 16 と し た 。最 後 に TBS 基 を 除 去 し 、塩 基 存 在 下 デ ス マ ー
チン試薬で酸化する事で、アルデヒドを有する 5 員環ユニット 7 の合成を完了した。
続いて六員環ユニット 8 の合成を行った。8 が有するジメチルシクロプロパンと六員
環 は 安 価 な キ ラ ル プ ー ル で あ る (+)-3-carene が 持 つ 構 造 で あ る こ と か ら 、こ れ を 原 料
と し た 。 既 知 の 手 法 を 用 い て α -ク ロ ロ ケ ト ン 17

5)

へと変換した後、チオラートによ

る 求 核 置 換 反 応 に よ り ス ル フ ィ ド 18 を 得 た 。 最 後 に 酸 化 す る 事 で ス ル ホ キ シ ド 19 へ
と 変 換 し 、 炭 酸 カ ル シ ウ ム 存 在 下 加 熱 撹 拌 を 行 う こ と で ス ル ホ キ シ ド の syn 脱 離 を 引
き起こし、エノンを有する6員環ユニット 8 の合成を完了した。

【三成分連結反応と閉環メタセシス反応の検討】合成した各ユニットを連結すべく、
イ ソ プ ロ ペ ニ ル 銅 試 薬 に 対 し エ ノ ン 8 を 作 用 さ せ 、 銅 エ ノ ラ ー ト 20 を 発 生 さ せ た 後 、
アルデヒド 7 を加えたところ、予想通りアルドール反応が進行し、目的とするジエン
6 を単一のジアステレオマーとして得ることに成功した。しかし続く閉環メタセシス
反 応 は 、様 々 な Ru 系 触 媒 を 用 い て も 反 応 は 進 行 せ ず 、原 料 が 回 収 さ れ る の み で あ っ た 。
これは 6 が持つ二重結合が立体的に込み合った位置にあり、触媒が作用できなかった
ことが原因であると考え、分子内反応を利用したリレー閉環メタセシス反応を行うこ
と と し た 。実 際 に リ レ ー 側 鎖 を 有 す る 五 員 環 ユ ニ ッ ト 22 を 合 成 し 、同 様 の 反 応 条 件 に
て 三 成 分 カ ッ プ リ ン グ 反 応 を 試 み た と こ ろ 、反 応 は 円 滑 に 進 行 し ト リ エ ン 23 を 得 る こ
と に 成 功 し た 。 し か し 23 に 対 し て も 同 様 に 様 々 な Ru 系 触 媒 を 作 用 さ せ た も の の リ レ
ー閉環メタセシス反応は進行せず、分子の二量化やアリル基の内部オレフィンへの異
性化が観測されるのみであった。

【 架 橋 構 造 の 導 入 と 配 座 制 御 】こ こ で 筆 者 は ト リ エ ン 23 の 構 造 や そ の 挙 動 、配 座 に 変
化を与える事で、リレー閉環メタセシス反応の結果に影響を与えられないかと考え、
分 子 内 に 架 橋 構 造 を 導 入 す る 事 を 計 画 し た 。ト リ エ ン 23 が 7 位 に 有 す る ケ ト ン を 立 体
選 択 的 に 還 元 し ジ オ ー ル と し た 後 、ベ ン ジ リ デ ン ア セ タ ー ル 24 へ と 変 換 し た 。そ し て
1,4-ベ ン ゾ キ ノ ン 存 在 下 、 Ru 触 媒 25 を 加 え 加 熱 撹 拌 を 行 っ た と こ ろ 反 応 は 円 滑 に 進
行 し 、プ レ ミ ル シ ナ ン が 特 徴 と す る 4 環 性 骨 格 を 有 す る 化 合 物 26 を 合 成 す る こ と に 成
功した。

【参考文献】
1) M. Litaudon and J. Paolini et al., J. Nat. Prod., 80, 2051 (2017)
2) Y. Guo et al., J. Nat. Prod., 74, 2224 (2011)
3) J. Hohmann et al., J. Nat . Prod., 79, 1990 (2016)
4) K. Gademann et al., Synthesis, 631 (2010)
5) P. S. Ba ran et al., J. Am. Chem. Soc., 136, 5799 (2014)

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