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書き出し

Ecteinascidin743の合成研究

中島, 長安 名古屋大学

2023.05.22

概要

報告番号







論文題目
















Ecteinascidin 743 の 合 成 研 究

中島 長安

論 文 内 容 の 要 旨
【 背 景 】エ ク テ ナ サ イ ジ ン 743( 1)は カ リ ブ 海 原 産 の ホ ヤ よ り
単離された天然物であり、がん細胞をアポトーシスへ導く作用
を 有 す る た め 抗 ガ ン 剤 と し て 利 用 さ れ て い る [ 1] 。1 は 、2 つ の 芳
香環と 6 つの不斉中心を含む 3 つの含窒素ヘテロ環が連なった
5 環性骨格および、スピロ結合したテトラヒドロイソキノリン
骨 格 と 硫 黄 原 子 を 含 む 10 員 環 ラ ク ト ン と い っ た 興 味 深 い 構 造
を有している。1 の合成研究はこれまでに、様々な反応の有用
性 の 拡 大 や 、そ の 特 異 な 構 造 か ら 生 ま れ る 未 知 の 反 応 性 の 発 見 な ど を も た ら し て い る 。
筆 者 は 1 の 新 規 合 成 経 路 の 開 発 に 取 り 組 み 、 そ の 形 式 全 合 成 を 達 成 し た [2] 。 以 下 に そ
の概略を記す。
【合成戦略】本天然物の合成上の課題の 1 つに、2 つのテトラヒドロイソキノリン骨
格 を 結 ぶ C-C 結 合 上 に 存 在 す る 、 3 位 と 11 位 の 連 続 不 斉 中 心 の 構 築 が 挙 げ ら れ る 。
本 研 究 で は こ の 課 題 に 対 し 、 カ ス ケ ー ド Heck 反 応 を 応 用 す る こ と を 計 画 し た 。 以 下
に 作 業 仮 説 を 示 す 。 ま ず エ ナ ミ ド 2 に 対 し 分 子 内 Heck 反 応 を 進 行 さ せ る こ と で 中 間
体 3 を 導 く 。そ の 過 程 で syn 付 加 に よ り 立 体 選 択 的 に 構 築 さ れ る 3 位 の C-Pd 結 合 を 、
連 続 的 に C-C 結 合 へ 置 換 す る こ と が で き れ ば 、連 続 不 斉 中 心 が 一 挙 に 構 築 さ れ た 4 が
得られると期待した。以下、実際に確立した合成経路を示す。

【 2 種 の 光 学 活 性 な ユ ニ ッ ト の 調 製 】 市 販 化 合 物 よ り 10 工 程 で 供 給 可 能 な デ ヒ ド ロ
ア ミ ノ 酸 5 に 対 し 、 ( R )-PipPhos と Rh 触 媒 を 用 い る 不 斉 水 素 化 反 応 [3] を 行 い フ ェ ニ
ル ア ラ ニ ン 誘 導 体 6 を 得 た 。続 い て 酸 性 条 件 下 で Boc 基 を 除 き 第 1 級 ア ミ ン と し た 後 、
還 元 的 に ア ル キ ル 化 を 行 う こ と で 7 を 得 た 。そ し て ア ミ ノ 基 の 保 護 と エ ス テ ル の 加 水
分解を経てカルボン酸 8 へと導いた。

ま た 市 販 化 合 物 よ り 6 工 程 で 供 給 可 能 な ベ ン ゾ ニ ト リ ル 9 を 、 DIBAL 還 元 に よ り
ア ル デ ヒ ド 10 へ と 変 換 し 、 続 く ( S )- tert -ブ チ ル ス ル フ ィ ン ア ミ ド と の 縮 合 [4] に よ り

N - ス ル フ ィ ニ ル イ ミ ン 11 を 導 い た 。 そ し て 亜 鉛 を 用 い た ジ ア ス テ レ オ 選 択 的 な
Barbier 型 の ア リ ル 化 [ 5] を 経 て 、 ホ モ ア リ ル ア ミ ン 12 を 得 た 。

【 ジ ア ザ ビ シ ク ロ [3.3.1]骨 格 の 構 築 】 化 合 物 12 が 有 す る tert -ブ チ ル ス ル フ ィ ニ ル 基
を 除 い た 後 、 得 ら れ た ア ミ ン を カ ル ボ ン 酸 8 と 縮 合 さ せ て ア ミ ド 13 と し 、 さ ら に エ
ナ ミ ド の 形 成 と ベ ン ゾ イ ル 基 の 除 去 を 経 て 化 合 物 14 を 導 い た 。 続 く 分 子 内 カ ス ケ ー
ド Heck 反 応 は 、 ジ ア ザ ビ シ ク ロ [3.3.1]ノ ナ ン 骨 格 の 構 築 に よ り 生 じ た 中 間 体 15 の
Pd-C 結 合 が 、前 述 の Barbier 型 の ア リ ル 化 に よ っ て 導 入 し た C=C 結 合 に よ り 捕 捉 さ
れ た こ と で 、想 定 通 り に 11 位 と 3 位 の 連 続 不 斉 中 心 が 一 挙 に 構 築 さ れ た 目 的 物 16 を
与 え た 。 そ の 後 本 反 応 の 最 適 化 に 取 り 組 ん だ 結 果 、 Herrmann 触 媒 [6 ] の 存 在 下 で 円 滑
に 反 応 が 進 行 し 、 良 好 な 収 率 で 16 が 得 ら れ る こ と を 見 出 し た 。

【トリオールの部位選択的な開裂】エキソメチレンの開裂に向け、ジヒドロキシ化に
よ り ト リ オ ー ル 17a, 17b を 導 い た 後 、 過 ヨ ウ 素 酸 ナ ト リ ウ ム を 用 い た 検 討 を 行 っ た 。
そ の 結 果 、ト リ オ ー ル 17a か ら は α -ヒ ド ロ キ シ ケ ト ン 18 が 、一 方 で 17b か ら は 環 状
ヘ ミ ア セ タ ー ル 19 が 、 そ れ ぞ れ 選 択 的 に 得 ら れ る こ と を 見 出 し た 。 そ の 後 、 18 よ り
導 い た ジ オ ー ル 20 を 原 料 と し 、 形 式 全 合 成 に 向 け た 変 換 に 取 り 組 む こ と と し た 。

【 形 式 全 合 成 】ジ オ ー ル 20 を 四 酢 酸 鉛 で 開 裂 し て ジ ア ー ル 21 を 得 た 後 、酸 性 条 件 で
水 和 す る こ と で 化 合 物 22 へ 変 換 し た 。 続 い て E 環 上 の ベ ン ジ ル 基 を 選 択 的 に 除 き 、
得 ら れ た フ ェ ノ ー ル を メ ト キ シ メ チ ル 基 で 保 護 し 23 と し た 。 最 後 に B 環 の 構 築 と
Red-Al 還 元 を 経 て 既 知 の オ キ サ ゾ リ ジ ン 24

[ 7] を 導 き 、 1

の形式全合成を達成した。

【 参 考 文 献 】 [1] T. Kan et al ., Nat. Prod. Rep. , 2015, 32 , 328. [2] S. Yokoshima et

al ., Org. Lett. , 2022, 24 , 8228. [3] B. L. Feringa et al ., J. Org. Chem. , 2005, 70 ,
943. [4] J. A. Ellman et al ., Chem. Rev. , 2010, 110 , 3600. [5] G.-Q. Lin et al .,

Chem. Commun. , 2010, 46 , 8460. [6] W. A. Herrmann et al ., Angew. Chem. Int.
Ed. , 1995, 34 , 1844. [7] T. Fukuyama et al ., J. Am. Chem. Soc. 2013, 135 , 13684.

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