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大学・研究所にある論文を検索できる 「つわりと社会的支援が妊娠初期女性の生活の質に与える影響に関する縦断的研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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つわりと社会的支援が妊娠初期女性の生活の質に与える影響に関する縦断的研究

廣瀬, 允美 名古屋大学

2021.06.02

概要

I. 緒言
近年、つわりを含めた妊娠に関連する症状がQOLに与える影響について関心が高まっている。妊娠初期女性の健康に関連した生活の質における悪心嘔吐の影響に関するこれまでの研究では、研究によってデータ収集のタイミングが様々であり、一つの研究の中でも対象妊婦の妊娠週数が異なっていた。また、妊娠初期におけるつわりの変動については、通常妊娠5週頃始まり、8〜12週にピークに達し妊娠20週までに自然に軽減するとされ、短期間に大きく変化することが考えられる。しかしこの期間中に複数回データを収集する研究は限られており、それに加えてつわり、ソーシャルサポート、そして健康に関連する生活の質との独立したそれぞれの関係を調べた先行研究は見当たらない。本研究の目的は、妊娠初期のつわりとQOLの変化のパターンを明確にすることと、妊娠初期の女性のQOLに対するつわりとソーシャルサポートの独立した関連を明らかにすることである。

II. 対象及び方法
2018年8月から2019年2月の期間中に、総合病院の産科外来を受診した妊婦に対しアンケート調査による縦断的研究を行った。研究対象者は以下の基準を満たす者とした。1)20歳以上の単胎妊婦、2)日本語の読み書きができる、3)産科医から本研究に参加することを認められた女性。アンケートの主要部分の記入漏れや、妊娠経過の正常からの逸脱がみられた場合、研究対象者から除外された。初診時に産科外来にて、研究者から対象者に対しこの研究の目的と、研究に参加することの利益や不利益および参加することをいつでも拒否できる権利が伝えられた。以上の条件を満たす初診妊婦175名中、途中脱落者22名を除いた153名が統計解析対象者となった。

初診時に、年齢、配偶者の有無、出産歴、学歴、職業、世帯収入等の社会人口統計学的データを含め3つの自己記入式アンケート(悪心嘔吐と空嘔吐の尺度:INVR(Index of Nausea, Vomiting, and Retching)、ソーシャルサポートの多面的尺度:MSPSS(Multidimensional Scale of Perceived Social Support)、12項目短形式健康調査:SF-12(12-Item Short-Form Health Survey)【(身体的サマリースコア(PCS:Physical component summary)および精神的サマリースコア(MCS:Mental component summary)を算出)】の記入を対象者に依頼した。その後妊娠20週までの間に最大3回まで、INVRとSF-12の記入を再依頼した。研究プロトコルは名古屋大学医学部の倫理委員会(承認番号17-157)と研究協力施設の倫理委員会によって承認された。すべての分析は、統計学的有意水準を5%に設定し、5%未満を統計学的に有意と判定した。分析はIBMSPSS Windows版25.0を用いて実施した。

III. 結果
初回受診時とその後の受診時の妊娠週数が対象者間で異なっていたため、つわりの変動に関する先行研究の知見に基づき、対象者が質問に回答したそれぞれの妊娠週数を3つの期間(G1期:妊娠5-8週、G2期:妊娠9-12週、G3期:妊娠13-20週)に分けた。

INVRスコアによるつわりの程度に関しては、重度のつわりを有する女性の割合はG2期で最高であったが(G1期、G2期、G3期の順に5.0%、10.1%、4.7%)、つわりを有さない女性の割合は妊娠期間とともに増加した(同順に5.0%、16.8%、41.1%)。INVRの粗平均値はG2期からG3期の期間に急激に減少し、一方、PCSとMCSの値は共にG2期からG3期の期間に高くなった。

内部相関や交絡因子を調整し縦断的データを混合モデル使用にて分析した結果、INVRスコアはSF-12スコアのPCSと有意な負の関連がみられたが(β=-0.80,p<0.001)、MSPSSはPCSとの間に有意な関連が見られなかった。一方、MCSにおいては、互いに独立してINVRとは有意な負の関連(β=-0.49,p<0.001)、MSPSSとは有意な正の関連(β=0.30,p<0.001)が見られた。INVRスコアとMSPSSスコアの間に有意な関連はみられなかった。

IV. 考察
本研究は、妊娠初期の縦断的データに基づいて、HRQOLに対するNVPおよびソーシャルサポートの影響を調べた初の研究である。本研究では、妥当性が証明された尺度を用いて情報を収集し、解析には、全ての反復データを利用しながら内部相関を考慮し、かつ交絡要因を調整することができる混合モデルを使用した。その結果、縦断的な研究に基づきいくつかの明確な知見が得られた。

本研究では、社会人口統計学的因子を調整した後、G1期とG2期の間にはINVRスコアに有意な差はなく、G3期のINVRスコアはG1期とG2期と比較して有意に低かった。G1とG2期におけるつわりが無かった者の割合は、2/40(5.0%)と25/149(16.8%)、一方、両期間の重度のつわりの割合は、2/40(5.0%)と15/149(10.1%)であった。このことから、G1期からG2期にかけてつわりが軽減する人もいれば、強くなる人もいる可能性が示唆された。将来的には、この違いを引き起こす要因を検討する必要があると考える。

妊娠初期において、PCSはつわりの程度と有意な関連が見られたが、ソーシャルサポートとは有意な関連が見られなかった。MCSに対しては、つわりとソーシャルサポートが互いに独立して有意に関連していた。周産期医療に関わる医療専門家は、HRQOLに対するつわりの重大な影響を認識し、つわりを適切に管理する必要がある。さらに、つわりが深刻であってもソーシャルサポートが精神的QOLの改善に寄与する可能性があることを認識し、妊娠中の女性自身を支援しようとするべきである。彼らはまた、妊娠中の女性の周囲の人々に支援の重要性を伝える必要があるだろう。また、つわりに対するケアと治療の有効性、およびソーシャルサポートの効果は、妊婦のQOL回復の観点から評価する必要があると考える。

V. 結論
妊娠初期において、つわりは身体的QOLに負の影響を与えるが、ソーシャルサポートは身体的QOLに影響しない可能性が示唆された。一方、つわりとソーシャルサポートは、互いに独立して精神的QOLにそれぞれ負の影響と正の影響を与えることが示唆された。周産期医療に関わる専門家は、HRQOLに対するつわりの重大な影響を認識し、つわりを適切に管理する必要がある。さらに、つわりが深刻であってもソーシャルサポートが精神的QOLの改善に寄与する可能性があることを認識し、妊娠中の女性自身を支援しようとするべきである。

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