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Microglial process dynamics depend on astrocyte and synaptic activity

池上, 暁湖 名古屋大学

2023.07.28

概要

主論文の要旨

Microglial process dynamics depend on astrocyte and
synaptic activity
ミクログリア突起動態はアストロサイトおよびプレシナプスの
Ca2+活動に応じて変化する

名古屋大学大学院医学系研究科
機能形態学講座

総合医学専攻

分子細胞学分野

(指導:和氣 弘明
池上 暁湖

教授)

【緒言】
ミクログリアは、中枢神経系の変化を感知し反応を示す脳内免疫細胞である。ミク
ログリアの細胞突起は絶えず伸縮を繰り返し、神経細胞の細胞体、前・後シナプス、
樹状突起、軸索のほか、他のグリア細胞や細胞外マトリックスへ接触することが知ら
れる。この突起動態により、ミクログリアは細胞および組織の損傷を迅速に検出し対
処するが、そうした単なる免疫細胞としての機能を超え、特にシナプスの可塑性に影
響を与えることにより脳の恒常性維持へ寄与する可能性が近年示唆されている。しか
しながらミクログリア突起動態の物理的特徴や制御メカニズムは未だ解明途上である。
ミクログリアがシナプスの状態を何らかの機構で検知しているならば、その近傍の脳
内他細胞の活動が突起動態に影響を与え得るという仮説が成り立つだろう。これを検
証するため、本論文ではミクログリアに緑色蛍光タンパク質を発現させた
CX3CR1 eGFP/+ マウスを使用し、第一次運動野における in vivo 2 光子イメージングを行
い、ミクログリア突起動態とアストロサイト、前・後シナプスの前後の活動を同時に
可視化することで細胞要素間の相互関係を検証した。
【結果】
ミ ク ロ グ リ ア の 突 起 動 態 に 影 響 を 与 え 得 る 因 子 と し て 、 ア デ ノ シ ン 5'-三 リ ン 酸
(ATP)は、ミクログリアの突起を迅速に誘引することが知られている。グリア細胞の
一種であるアストロサイトはシナプスの周囲を取り巻いており、脳内 ATP の主要な供
給源である。また、シナプス前終末(プレシナプス)から放出される神経伝達物質も同
様にミクログリアの突起動態に影響することがわかっている。このことから、アスト
ロサイトおよびプレシナプス、またプレシナプスと接続するシナプス後部(ポストシ
ナプス)の 3 要素に着目し、その Ca2+ 活動についてアデノ随伴ウイルスベクターを用
い可視化した。3 群の CX3CR1 eGFP/+ マウスの第一次運動野において、アストロサイト、
視床下部から運動野へ投射する軸索のプレシナプス、第一次運動野 5 層の錐体細胞ポ
ストシナプスのいずれかに Ca 2+ 感受性蛍光タンパク質である GCaMP6f を発現させた
(Fig. 1A)。得られた Ca 2+ シグナルの大小を積分し(AUC)、測定した細胞構成要素(ROI)
の最も近傍にあるミクログリアの突起動態の各パラメータに対してプロットした。突
起動態のパラメータとして、伸縮の速度および「ベクトル長(Vector length)」、すなわ
ち突起の先端が測定を開始した初期位置から各 ROI に向かって移動した距離を測定
することで定量した(Fig. 1A)。アストロサイトの Ca 2+ 活動の大きさは、ミクログリア
の突起の速度と負の相関を示し、Vector length と正の相関を示した(Fig. 1B)。プレシ
ナプスの Ca 2+ 活動についても、アストロサイトと同様に突起の速度と負の相関が見ら
れ、Vector length とのさらに強い正の相関があった(Fig. 1C)。一方、ポストシナプス
や樹状突起に関しては、その Ca 2+ 活動とミクログリアの突起動態の間に有意な相関を
認めなかった(Fig. 1D, 1E)。ただしプレシナプスからの局所的な入力を反映する、単
一 ポ ス ト シ ナ プ ス に お け る Ca 2+ 活 動 に 着 目 し た 場 合 、 ミ ク ロ グ リ ア の 突 起 動 態 の
Vector length との間に弱い正の相関が出現した(Fig. 1F)。

-1-

ミクログリアの突起速度が、Ca2+ 活性の高いアストロサイトおよびプレシナプスの
周辺で低下する傾向が見られたことから、このときの突起先端が局所に留まることに
より周辺シナプスの構成要素に接触している可能性が示唆された。この仮説を検証す
るため、Ca2+ 活動と上記に示したミクログリア突起動態のパラメータとを分単位で合
算することで、より長い時間軸での細胞間相互作用を定量した。17 分強のイメージン
グ時間全体におけるアストロサイトおよびプレシナプスの Ca2+ 活動の AUC 合計は、
ミクログリアの突起動態の各パラメータの合計と正の相関があった(Fig. 1G, 1H)。次
に、合計する時間を減らした際に、ミクログリアの突起動態が各細胞の Ca 2+ 活動と相
関しているかどうかを調べた(Fig. 1I)。結果、アストロサイトとの正の相関は失われ
たが、1 分間のプレシナプス Ca 2+ 活動の総和とミクログリアの移動距離の間には弱い
相関が残存した(Fig. 1J)。
【結論】
本論文では、ミクログリア、アストロサイト、神経細胞のプレ・ポストシナプスの
同時イメージングにより、シナプスを取り巻く細胞構造の Ca2+ 活動がミクログリア突
起動態を変化させることが示された。アストロサイトの Ca 2+ 活動にはポストシナプス
の形成・除去に関与する小胞放出が付随することが知られる。また、より強くミクロ
グリアの突起を誘引したプレシナプスの Ca 2+ 活動は、ATP やグルタミン酸の放出に伴
ってみられると考えられ、接続するポストシナプスとの間の可塑性を以て、神経細胞
間の情報伝達効率調節に直接の影響を持つ。今回確認されたミクログリアの突起動態
は、これまで本細胞で報告されているポストシナプスの形成・除去といった形態的可
塑性に寄与している可能性がある。突起動態の制御やシナプス可塑性への影響につい
て、より根本的なメカニズムと機能的意義を解明するため、さらなる研究が必要であ
る。

-2-

Fig. 1 Ca2+ activity in astrocytes and pre-synapses is differentially associated with microglial process movement.
(A) Schematic diagram showing imaging of Ca2+ transients (blue transients) in astrocytes (n = 6 mice) and pre-synapses
(n = 6 mice) and Ca2+ transients in post-synapses (dendrites [pink balloon] and spines [single spine activity indicated
by red plot in yellow balloons], n = 5 mice) while simultaneously measuring microglial movement velocity and vector
length. Post-synapse data, relevant AAV vector, and injection sites are also shown. (B–D) Ca2+ activity was integrated
(AUC) and plotted against microglial process velocity and displacement for astrocytes (B), pre-synapse (C), and postsynapse (D). Plots fit to linear regressions. (E, F) Scatter plots of dendritic (E) or single spine (F) Ca2+ activity integrals
against velocity (left) and vector length (right) of microglial process movement. The lines show fit to data with a simple
linear regression. (G, H) Ca2+ activity in astrocytes (G) and pre-synapses (H) were plotted against microglial astrocyte
or pre-synapse interaction intensity. (I) Plot of astrocyte Ca2+ activity integrals binned into 1- and 3-minute time
intervals (for 2,000-frame imaging of about 17 mins), and microglial distance travelled during each bin. No correlation
was observed indicating no time-dependent astrocytic component attracted microglial movements. (J) Plot of the
integral of pre-synaptic Ca2+ activity binned into 1- and 3-minute time intervals, and microglial distance travelled during
each bin. A significant but weak positive correlation was observed with the 1-min AUC bins, suggesting larger but less
sustained Ca2+ transients were associated with microglial movements. Slopes of regression lines in (B–J) were
compared to a slope of 0 using simple linear regression, P values are shown in the graphs.

-3-

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