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SGTA associates with intracellular aggregates in neurodegenerative diseases

窪田 瞬 横浜市立大学

2022.03.25

概要

【序論】
神経細胞内におけるタンパク質凝集体の形成は,ポリグルタミン病,筋萎縮性側索硬化症((amyotrophic lateral sclerosis: ALS),パーキンソン病(Parkinson disease: PD),多系統萎縮症(multiple system atrophy: MSA)などの神経変性疾患に共通して見られる病理学的特徴の一つである.タンパク質凝集体の構成因子はそれぞれの疾患により異なるが凝集体形成過程には共通の分子病態の存在が考えられている(Ross and Poirier, 2004; Soto and Pritzkow, 2018).ハンチントン病(Huntington disease:HD)や常染色体優性遺伝性脊髄小脳失調症(spino cerebellar ataxia: SCA)などのポリグルタミン病では,伸長したCAG配列を持つ原因遺伝子によって,ポリグルタミン鎖が伸長したタンパク質が産生される.これらの異常タンパク質は,自己重合を繰り返し最終的には不溶性のポリグルタミン凝集体を形成する.凝集体中には,その他にも数多くの凝集体相互作用タンパク質が含まれ,それらは凝集体形成のプロセスに関係し,様々な神経変性疾患の病態生理に広く関与していると考えられるがその詳細は明らかでない.これまでに筆者らは,HDモデル細胞において,ポリグルタミン凝集体の構成要素として,small glutamine-rich tetratricopeptide repeat (TPR)-containing protein alpha (SGTA)を同定している.しかし,これまでにヒト神経変性疾患の細胞内凝集体とSGTAの関連性を示した研究はない.本研究の目的は,疾患モデル細胞や疾患モデルマウスならびに神経変性疾患症例の病理におけるSGTAの局在を評価し,これらの疾患の病態へのSGTAの関与を明らかにすることである.

【実験材料と方法】
細胞質内または核内にポリグルタミン凝集体を形成するHDモデル細胞(HD150Q細胞およびHD150Q-NLS細胞)(Doietal.,2004)およびHDモデルマウスの脳切片に対して抗SGTA抗体を用いて免疫細胞染色を行いSGTAの凝集体との共局在を確認した.HD150Q細胞ならびに凝集体形成を生じない細胞(野生型Neuro2a細胞,HD16Q細胞)をTritonX-100で可溶性・不溶性に分画し,凝集体形成に伴いSGTAが不溶性画分に移行するかを確認した.さらに,SCA1,SCA2,SCA3,歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubral-pallidoluysian atrophy: DRPLA)などのポリグルタミン病剖検脳ならびにその他の神経変性疾患(PD,MSA,ALS)の剖検脳ないし剖検脊髄に対しても免疫組織染色を行いSGTAの神経細胞内での局在,凝集体との共局在に関して組織学的な検討を加えた.SGTAと凝集体の結合部位を同定するため,SGTA欠失変異体を発現するプラスミドベクターを作成し,HD150Q細胞へ強制発現させ,SGTAの凝集体結合部位を確認した.また,HDモデル細胞の凝集体形成に対するSGTAの凝集体抑制効果をfilter trap assayで評価した.

本研究は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令」「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令の規程に基づき認定宿主ベクター系等を定める件」「公立大学法人横浜市立大学医学部等遺伝子組換え実験安全管理規程」を遵守して行った.病理学的研究については「神経・筋疾患における免疫組織化学的研究」(B130704093)として平成25年5月20日の横浜市立大学医学研究倫理委員会で承認され,以後継続が認められている.

【結果】
①HDモデル細胞,HDモデルマウスを用いた検討
HDモデル細胞においてSGTAは細胞質内凝集体,核内凝集体いずれとも共局在していた.HDモデルマウス脳切片の免疫染色で海馬の神経細胞核内封入体中にSGTAが認められた.凝集体形成細胞(HD150Q細胞)ならびに凝集体を生じない細胞(野生型Neuro2a細胞,HD16Q細胞)をTritonX-100で分画すると,野生型Neuro2a細胞,HD16Q細胞ではSGTAは可溶性画分でのみ認められたが,HD150Q細胞では不溶性画分でもSGTAが検出された.

②神経変性疾患での組織学的検討
ポリグルタミン病症例(SCA1,SCA2,SCA3,DRPLA)で脳幹の神経細胞核内封入体中にSGTAが認められた.さらに,MSA症例の剖検脳では,SGTAはグリア細胞質内封入体と共局在していたが,PD患者やALS患者の神経組織ではSGTAの蓄積は見られなかった.

③凝集体形成にSGTAが及ぼす機能の解析
HD150Q細胞にSGTA欠失変異体を発現させ免疫細胞染色を行った結果,SGTAのC末端ドメインがポリグルタミン凝集体と共局在することが示された.SGTAのN末端またはTPRドメインは,凝集体中には認められず細胞質内に拡散して分布していた.また,HD150Q細胞にSGTAを過剰発現させ,filter trap assayを行った結果,negative controlと比較してポリグルタミン凝集体の減少が認められた.

【考察】
神経変性疾患の病態機序としてタンパク質品質管理システムが破綻し,神経細胞内に異常なタンパク質が蓄積することで神経細胞死,神経脱落を引き起こすことが想定されている(Takahashietal.,2010).SGTAは細胞内タンパク質の品質管理に関わり,特にBCL2-associatedathanogene6(BAG6)と協調して膜タンパク質の細胞質内品質管理・分解に関わる事が報告されている(Xuetal.,2012;Leznickietal.,2012).過去の報告でSGTAはC末端ドメインを介して分解の標的となるタンパク質の疎水性部位と結合することが知られていた.今回筆者が行った実験でSGTAはC末端ドメインを介して凝集体と結合することが明らかになり,ポリグルタミン凝集体は疎水性の性質を持つことから,この結果は既報告と矛盾しない.さらに本研究では,実際にSGTAがヒトのポリグルタミン病(SCA1,2,3,DRPLA)ならびにMSAなどヒト神経病理組織において凝集体と関連している事を初めて示したこと,およびSGTAがポリグルタミンタンパク質凝集を抑制する結果が得られたことから,SGTAはポリグルタミン病やMSAの病態形成に関与し,病態修飾因子として機能している可能性が示唆された.

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参考文献

Doi, H., Mitsui, K., Kurosawa, M., Machida, Y., Kuroiwa, Y., & Nukina, N. (2004). Identification of ubiquitin-interacting proteins in purified polyglutamine aggregates. FEBS Letters, 571(1–3), 171– 176.

Leznicki, P., & High, S. (2012). SGTA antagonizes BAG6-mediated protein triage. Proceedings of the National Academy of Sciences, 109(47), 19214–19219.

Ross, C. A., & Poirier, M. A. (2004). Protein aggregation and neurodegenerative disease. Nature Medicine, 10(7), S10–S17.

Soto, C., & Pritzkow, S. (2018). Protein misfolding, aggregation, and conformational strains in neurodegenerative diseases. Nature Neuroscience, 21(10), 1332–1340.

Takahashi, T., Katada, S., & Onodera, O. (2010). Polyglutamine Diseases: Where does Toxicity Come from? What is Toxicity? Where are We Going? Journal of Molecular Cell Biology, 2(4), 180–191.

Xu, Y., Cai, M., Yang, Y., Huang, L., & Ye, Y. (2012). SGTA Recognizes a Noncanonical Ubiquitinlike Domain in the Bag6-Ubl4A-Trc35 Complex to Promote Endoplasmic Reticulum-Associated Degradation. Cell Reports, 2(6), 1633–1644.

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