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大学・研究所にある論文を検索できる 「Proteomic analysis of exosome-enriched fractions derived from cerebrospinal fluid of amyotrophic lateral sclerosis patients」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Proteomic analysis of exosome-enriched fractions derived from cerebrospinal fluid of amyotrophic lateral sclerosis patients

林 紀子 横浜市立大学

2020.03.25

概要

1. 序論
神経変性疾患は特定の神経細胞群が徐々に障害され,脱落する緩徐進行性の疾患群である.多くの神経変性疾患に共通する分子機構は,折り畳み異常により高次構造が変化した異常タンパク質の蓄積と凝集体形成に特徴づけられる.これらの異常タンパク質は,細胞間を超えて伝播・拡大することが報告されており「プリオン様伝播仮説」として注目されている.異常タンパク質が伝播する経路のひとつにエクソソームとよばれる細胞外小胞があり,髄液エクソソーム中には既知の異常タンパク質が含まれている(Guo and Lee, 2014).本研究で対象とした筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)は上位および下位運動ニューロンの障害を特徴とし,数年で死に至る神経変性疾患で,根本的治療法はない.本研究の目的は大きく 2 つである.ひとつはプロテオーム解析に適した髄液エクソソームの精製方法を検討し,今後の各種神経変性疾患の髄液エクソソーム研究への活用をめざすことである.もうひとつは筋萎縮性側索硬化症の髄液エクソソームに含まれるタンパク質を網羅的に解析することで,新規バイオマーカーや疾患関連タンパク質を同定することである.

2. 実験材料と方法
髄液エクソソーム精製方法について, Size Exclusion Chromatography on Drip Column(EVSecond)と従来の超遠心法の比較や,精製効率を上げるための条件検討を行った.孤発性筋萎縮性側索硬化症 3 例および疾患コントロール 3 例の髄液各 3.5ml から,EVSecond を用いてエクソソームを精製し,液体クロマトグラフィータンデム質量分析計(Liquid Chromatograph-tandem Mass Spectrometer;LC-MS/MS)を用いたプロテオーム解析を行った.筋萎縮性側索硬化症群において有意差をもって増加または減少のみられる候補タンパク質を選択し,最も増加していたタンパク質として NIR[novel INHAT(inhibitor of histone acetyltransferases)repressor]を同定した.次に EVSecond を用いて精製した髄液エクソソームについて,エクソソームマーカー CD9,CD81,および NIR に対する抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察を行った.最後に筋萎縮性側索硬化症患者の脊髄切片を用いて,NIR に関する免疫組織病理学的な評価を行った.

3. 結果
EVSecondによって単離した髄液エクソソームは,従来の超遠心法と同等以上にエクソソームマーカータンパク質を十分に含んでいることをウエスタンタンブロットで示し,質量分析に適用可能なクオリティーであることを確認した.筋萎縮性側索硬化症と疾患コントロールの髄液エクソソーム画分についてLC-MS/MSによるプロテオーム解析を行った結果,ペプチドは均質に精製できており,25,900スペクトルと334種類のタンパク質を検出した.Alix,CD9,CD81などのエクソソームマーカータンパク質も検出できていることを確認し,Gene Ontology analysisを行ったところ,細胞外小胞やエクソソームに関与するタンパク質が豊富に含まれていた.筋萎縮性側索硬化症の髄液エクソソームにおいて,有意差(p<0.05)をもって増加しているタンパク質は3種類,低下しているタンパク質は11種類あり,最も増加していたタンパク質はNIRであった.髄液エクソソーム画分の免疫電子顕微鏡では,径30から150 nmの小胞を観察でき,抗CD9抗体,抗CD81抗体,抗NIR抗体が陽性であった.NIRに対する免疫組織染色を行った結果,コントロールの脊髄前角運動ニューロンではNIRの染色性は核と細胞質内で強く陽性であったが,筋萎縮性側索硬化症患者では運動ニューロン病理に比例して核内または細胞全体で染色性が低下していた.NIRとTDP-43の蛍光二重染色では,NIRの核内染色性の低下とTDP-43凝集体形成の間に関連性はみられなかった.

4. 考察
本研究では少量の髄液からエクソソームを精製し,質の高いプロテオーム解析を行うことに成功した.これにより,筋萎縮性側索硬化症の髄液エクソソーム画分における,はじめてのプロテオーム解析データを示した.核小体タンパク質のひとつであるNIRを筋萎縮性側索硬化症の髄液エクソソーム画分で最も増加していたタンパク質として同定し,病理学的には筋萎縮性側索硬化症の運動ニューロンの核内で発現が減少していることを明らかにした.一方,NIRとTDP-43など既知の異常タンパク質との関連性は明らかでなかった.NIRが筋萎縮性側索硬化症の病態に与える役割については,核小体ストレスに関与している可能性が考えられるが,さらなる研究による詳細な解析が必要である(Heyne et al., 2014, White et al., 2019).本研究で行った髄液エクソソームのプロテオーム解析方法は,今後さまざまな神経疾患において,疾患関連タンパク質の探索に用いることができると考えられた.

この論文で使われている画像

参考文献

GUO, J. L. & LEE, V. M. 2014. Cell-to-cell transmission of pathogenic proteins in neurodegenerative diseases. Nat Med, 20, 130-8.

HEYNE, K., FORSTER, J., SCHULE, R. & ROEMER, K. 2014. Transcriptional repressor NIR interacts with the p53-inhibiting ubiquitin ligase MDM2. Nucleic Acids Res, 42, 3565-79.

WHITE, M. R., MITREA, D. M., ZHANG, P., STANLEY, C. B., CASSIDY, D. E., NOURSE, A., PHILLIPS, A. H., TOLBERT, M., TAYLOR, J. P. & KRIWACKI, R. W. 2019. C9orf72 Poly(PR) Dipeptide Repeats Disturb Biomolecular Phase Separation and Disrupt Nucleolar Function. Mol Cell, 74, 713-728.e6.

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