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大学・研究所にある論文を検索できる 「Stump分類に基づくAdvanced glycation end-productsの腱板脆弱性への影響」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Stump分類に基づくAdvanced glycation end-productsの腱板脆弱性への影響

篠原, 一生 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Biochemical Markers of Aging (Advanced
Glycation End Products) and Degeneration Are
Increased in Type 3 Rotator Cuff Tendon Stumps
With Increased Signal Intensity Changes on MRI

篠原, 一生
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8498号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482246
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Biochemical Markers of Aging (Advanced Glycation End Products)
and Degeneration Are Increased in Type 3 Rotator Cuff Tendon
Stumps With Increased Signal Intensity Changes on MRI

Stump 分類に基づく Advanced glycation end-products の腱板脆弱性への影響

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
整形外科学
(指導教員:黒田
篠原

良祐教授)

一生

【目的】
近年,Advanced glycation end-products (AGEs)が老化関連物質として注目されている.AGEs は
タンパク質と還元糖の非酵素的な糖化反応である Maillard 反応によって生成されることが知られ
ており,主にコラーゲンに蓄積して異常架橋を形成することで皮膚や内臓臓器の老化に繋がると
される.また,AGEs はレセプターである receptor for AGEs (RAGE)に結合することで NADPH
オキシダーゼ(NOX)を活性化させ、酸化ストレスのもととなる活性酸素種(ROS)を増加させる
ことで組織障害をもたらす.肩関節に関しては AGEs と病態に関する報告は少ない.我々の研究
室ではこれまでにヒトの腱板由来細胞に AGEs を投与することで ROS の発現増加や Apoptosis
の増加,細胞活性の低下が生じることを報告している.
近年,腱板の脆弱性の指標として MRI の T2 強調脂肪抑制像の coronal view で三角筋に対する腱
断端の信号強度比を用いた stump 分類が報告された.腱板断端部と 45°線上の三角筋の信号強
度を比較した分類であり,断端が三角筋よりも低信号である type 1,等信号である type 2,断端が
高信号である type 3 に分類される.Stump type 3 では他の type と比較し,鏡視下腱板修復術後
(Arthroscopic rotator cuff repair; ARCR)の再断裂率が有意に高いことが報告されており,stump
分類が腱板の脆弱性を示唆するとして注目を集めている.これらの背景を考慮し,我々は AGEs
に関連する病態が stump 分類に影響を与えるという仮説を立てた.本研究では,AGEs と stump
分類の関係を明らかにするために,腱板変性断裂患者の断端組織を stump 分類別に評価すること
を目的とした.

【対象と方法】
対象は腱板完全断裂に対して当院で手術加療を施行した患者 30 例(Stump type1 11 例,type2 9
例,type3 10 例;平均年齢 63.8 歳).手術時に腱板断端部より組織を採取した.得られた検体は一
部を組織評価として使用し,残りの検体は約 1mm2 の大きさに mincing した後に Dulbecco’s
modified Eagle’s medium(DMEM)培地で培養した.それぞれ 2-4 継代培養を行ない,48 時間
培養後に評価を行った.

組織評価
固定した標本より 5-μm の切片を作成し,標準のプロトコルに従って Hematoxylin-eosin(HE)染
色を,Trichrome stain kit を使用して Masson Trichrome 染色を行い組織学的に評価した.また,
AGEs と RAGE の発現量を蛍光免疫染色法で評価した.1 次抗体には抗 AGEs 抗体と抗 RAGE 抗
体を使用し,2 次抗体には抗ウサギ IgG 抗体を使用した.染色した切片は BZ-8000 confocal
microscope で観察し,染色割合を Image J (ver.1.52,)を用いて定量的に評価し 3 群間で比較した.

細胞活性
48 時間培養した細胞に,water-soluble tetrazolium salt (WST) assay を使用して細胞活性を評価
した.

蛍光免疫染色
酸化ストレスマーカーである ROS の評価には Total ROS/Superoxide Detection Kit を用いた CarboxyH2-DCFDA 染色を行い,BZ-8000 confocal microscope で観察した.DAPI 陽性細胞に対する ROS 陽
性細胞の比率で半定量し,無作為に選んだ 4 視野の平均を 3 群間で比較した.また,Apoptosis の
評価として APO-DIRECT kit を用いて TdT-mediated dUTP nick end labeling (TUNEL)染色を行い,
ROS 評価と同様に apoptosis の割合を半定量した.
Quantitative polymerase chain reaction(qPCR)
qPCR には,SYBR® Green Master Mix 試薬による real-time PCR を使用した.評価項目として ROS
産生に関与する NOX 1,NOX 4,AGEs の受容体の RAGE,腱板組織の主要構成成分である I 型コラー
ゲン (COL 1),瘢痕や修復過程で発現する III 型コラーゲン (COL 3),及び炎症性サイトカインの
Interleukin (IL) 6,IL 1β の遺伝子発現量を 3 群間で比較した.また,線維化の指標として III 型コラ
ーゲン/I 型コラーゲン比を算出し比較検討した.

統計解析
全てのデータは,平均値と標準偏差で表記した.細胞活性及び qPCR は,対応する時点での base
control に対する比率で評価した.3 群比較には,Kruskal-Wallis 検定を用い,Steel-Dwass 法によ
る多重比較検定を行った.統計解析には,IBM SPSS Statistics version 21(IBM, Armonk, NY,
USA)を使用した.統計的有意性は p<0.05 とした.

【結果】
組織評価
HE 染色において type1,type2 は腱板のコラーゲン配列がほぼ平行に配列していたが,type3 では
コラーゲンの配向性が乱れていた.また Masson Trichrome 染色でも同様に type 3 において膠原
線維の配向性が乱れていることが観察された.免疫組織化学染色では AGEs 染色は細胞外基質を
中心に染色され,RAGE 染色は細胞の核周囲が染色された.いずれも染色割合を Image J を使用
して定量的に評価した.4 視野での平均染色割合(%)はいずれも type3>type2>type1 の順に有意
に高く,それぞれに有意差を認めた.

細胞活性
細胞活性は type1 が最も高く,type1
蛍光免疫染色
ROS の蛍光免疫染色では type3 での発現が最も高く,type3>type2>type1 の順にそれぞれ有意差
を 認 め た . TUNEL 染 色 に よ る Apoptosis の 発 現 割 合 も 同 様 に type3 で 有 意 に 高 く ,

type3>type2>type1 の順にそれぞれ有意差を認めた.

qPCR
酸化ストレスに主に関与する NOX 1,NOX 4,AGEs の受容体である RAGE は type3,type2,type1
の順に発現が高く,それぞれに有意差を認めた.COL 1 は type1 で type2,type3 より有意に高く,
COL 3 は type3 が type1 より有意に高かった.また,III 型コラーゲン/I 型コラーゲン比は type
3, type 2, type 1 の順に高く,それぞれ有意差を認めた.炎症性サイトカインでは,IL 6 は type3 が
type1 と比較して有意に高く,IL 1β は type3,type2 が type1 に比較して有意に高かった.

【考察】
本研究では stump type3 の腱板において AGEs の蓄積に伴い変性や炎症が生じていた.
臨床において腱板脆弱性との関連性から stump 分類が注目されているが,これまでに stump 分
類と組織学的/細胞学的評価を組み合わせた研究はない.AGEs はコラーゲンに蓄積することで異
常架橋や酸化ストレスを介した apoptosis を生じることで組織の脆弱性に関連するとされる.腱
板もコラーゲンが豊富な組織であり,我々の過去の研究では in vitro, in vivo において AGEs の投
与が腱板由来細胞に酸化ストレスを惹起し脆弱性に繋がることを報告している.本研究では,
stump 分類と AGEs の間に関連性があるという仮説に基づき,stump 分類別に腱板組織断端の評
価を行った.組織学的評価では stump type3 の腱板組織に高い AGEs 蓄積を認め,コラーゲン線
維の配向性の乱れを認めた.細胞評価でも stump type3 において高い ROS および Apoptosis 発
現を認め,細胞活性は低かった.qPCR では stump type3 において有意に高い RAGE,NOX,IL,
COL3 発現を認め,高度の変性が示唆された.MRI の T2 脂肪抑制像では変性や炎症,浮腫が高
信号を呈するとされ,stump type 3 では AGEs に関連する病態の影響で脆弱化した腱板の断端が
高信号に描出される可能性がある.

【結語】
本研究では,臨床において腱板の脆弱性の指標となる stump 分類と AGEs の関連性を評価した.
組織学的評価の結果,stump type3 でより高い AGEs の蓄積を認めた.細胞評価でも,type3 に
おいて酸化ストレスや apoptosis の発現が高く,細胞活性は低かった.qPCR では type3 において
有意に高い RAGE, NOX, IL, COL 3 の発現を認め,高度の変性が示唆された.Stump 分類に基づ
く画像評価により,腱板断端部の変性および脆弱性を反映した評価ができる可能性が示唆された.

神戸大学大学院医学(系)研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
甲第3
242号





受 付 番号

篠原

一生

Stump分類に基づく Advancedgl
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sの腱板脆弱性へ

論文題目

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(要旨は 1, 000字 ∼ 2, 000字程度)

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近年、 MRIに基づく画像分類である Stump分類が腱板の脆弱性を示唆するとして注目を集めている
本研究では,申請者らは AGEsと s
tump 分類の関係を明らかにするために,腱板変性断裂患者の断端組
織を s
t
u
mp分類別に評価した対象は腱板完全断裂に対して当院で手術加療を施行した患者 30例.手術
時に腱板断端部よ り組織を採取した.得られた検体は一部を組織評価として使用し,残りの検体は約
l1nm2の大きさに mincin
gした後に Du
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smedium (DMEM) 培 地 で 培 務 し た そ れ
4継代培蓑を行ない, 48時間培養後に評価を行った.固定した標本より 5-μmの切片を作成し,
ぞれ 2

標準のプロトコルに従って Hematoxyline
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)染色を
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tを使用して Ma
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染色を行い組織学的に評価した. また, AGE
sと RAGEの発現量を蛍光免疫染色法で評価した. 1次抗
体には抗 AGEs抗体 と抗 RAGE抗体 を使用し, 2次抗体には抗ウサギ IgG抗体を使用 し た 染色した切
片は BZ-8000confocalmicroscopeで観察し ,染色割合を ImageJ
(
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)を用いて定量的に評価し 3群間
で比較した.酸化ス トレスマーカーである ROSの評価には TotalROS/
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tを用 いた
Carboxy-H2-DCFDA染色を行い, BZ-8000co
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peで観察した .DAPl陽性細胞に対する ROS

陽性細胞の比率で半定量し,無作為に選んだ 4視野の平均を 3群間で比較した.また, Apoptos
i
sの評価
として APO-DIRECTk
i
tを用いて TdT-mediateddUTPn
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g(TUNEL)
染色を行い, ROS評価と
同様に apo
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sの割合を半定量した

qPCRには, SYBRRGreenMas
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rMix試薬による r
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ePCR

を 使 用 し た 評 価 項 目 と し て ROS産生に関与する NOXl,
NOX4,AGEsの受容体の RAGE

腱板組織の主
)
,癒痕や修復過程で発現する I
l
l型コラ ーゲン(COL3),及び炎
要構成成分である l型コラ ーゲン (COL1

症性サイトカインの I
n
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n(
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pの追伝子発現量を 3群間で比較したまた,線維化の指標と
して I
l
l型コラーゲン/1型コラ ーゲン比を算出し比較検討した
HE
染色において t
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t
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2は腱板のコラ ーゲン配列がほぼ平行に配列していたが, t
y
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3ではコラ ーゲン
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染色でも同様に t
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e3において膠原線維の配向性が乱れて
の配向性が乱れて い た ま た MassonT

いることが観察された免疫組織化学染色ではAGEs染色は細胞外基質を中心に染色され, RAGE染色は
i
n
a
g
eJを使用して定量的に評価した 4視野での平均
細胞 の核周囲が染色された .いずれも染色割合を l
y
p
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3> t
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2>t
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の順に有意に高く,それぞれに有意差を認めた.細胞活性は
染色割合(
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pelが最も高く ,t
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3の順でそれぞれに有意差を認めた. ROSの蛍光免疫染色では t
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での発現が最も高く, t
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3>t
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2>t
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e1の順にそれぞれ有意差を認めた.TUNEL
染色による Apoptos
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の発現割合も同様に t
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3で有意に高く, t
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3>t
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2
>t
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e1の順にそれぞれ有意差 を認めた.酸化ス トレ
,
NOX4,AGEsの受容体である RAGEはt
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2,
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lの順に発現が高く,そ
スに主に関与する NOXl
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3がt
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れぞれに有意差を認めた COL1はt
l
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型コラーゲン比はtype3
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e2
,t
y
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の順に高く,それぞれ有意差
高かったまた, I
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3がt
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lと比較して有意に高く, lLl
pはt
y
p
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3,
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ype2がt
y
p
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を認めた炎症性サイトカインでは, IL6はt

に比較して有意に高かったすなわち,

stumpt
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において酸化ストレスやa
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の発現が裔く, 細胞活性は低かった .qPCR
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3において有意に高
いRAGE,NOX,IL,COL3の発現を認め,高度の変性が示唆された Stump分類に基づく画像評価により,
腱板断端部の変性および脆弱性を反映した評価ができる可能性が示唆された .
tump分類の根底の病理学的異常として従来ほとんど検討が行われていなかった s
t
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本研究は s
sの蓄積生化学的検討からよって明らかとしたものとして価値ある業禎であ
類の病理学的意義を AGE

る と 認 め る よ って本研究者は、 博士(
医学)の学位を得る資格があるものと 認める .

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