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大学・研究所にある論文を検索できる 「高血糖ストレスモデルを用いたラット腱細胞におけるアポシニンの抗酸化作用の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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高血糖ストレスモデルを用いたラット腱細胞におけるアポシニンの抗酸化作用の検討

Kurosawa, Takashi 神戸大学

2020.03.25

概要

【緒言】
糖尿病は様々な筋骨格系障害との関連性が報告されているが、近年、腱障害との関連性が注目されている。具体的には腱炎や肩腱板損傷、腱の治癒障害などが挙げられ、糖尿病患者においては非糖尿病患者と比べて手や肩の腱障害が多いことも示唆されている。その機序としては高血糖に起因する酸化ストレスの亢進が関与していると考えられ、酸化ストレスの主体をなすのは活性酸素種(ROS: reactive oxygen species)である。ROSはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸オキシダーゼ(NOX: NADPH oxidase)を介して生成され、生体内では特に NOX-1、NOX-4 が重要な役割を持つことが知られている。我々は過去に腱細胞に対して糖負荷を行うことで、NOX およびROS 産生の増加とそれに伴う炎症性サイトカインの上昇を確認し、高血糖状態が腱障害の一因となり得る過程を報告している。したがって、抗酸化剤を投与することで酸化ストレスを抑制し、将来的には腱障害の予防に応用できると考えた。抗酸化剤の1つであるアポシニンはNOX 阻害剤であり、効果的に ROS の産生を低下させることが過去に報告されているが、腱細胞に対しての使用報告は過去にない。本研究の目的は、in vitro においてラット腱細胞に対して糖負荷による酸化ストレスを加え、アポシニンを投与し、その影響について検討を行うことである。

【材料と方法】
8 週齢の正常 SD ラットからアキレス腱を採取し、腱細胞を分離・培養した。培養液の糖濃度が 12 mM をregular-glucose 群(RG 群)、25 mM をhigh-glucose 群(HG 群)として培養を行った後にアポシニンを投与し、以下の 4 群を設定した。(1)RG apo-(コントロール)群、(2)RG apo+群(RG 群にアポシニン投与)、(3)HG apo-群(HG 群にアポシニン非投与)、(4)HG apo+群(HG 群にアポシニン投与)。アポシニン投与後 48時間でReal-time PCR 法によってNOX-1、NOX-4、IL-6 の遺伝子発現を検証し、投与後の酸化ストレス応答を評価した。また、WST-assay で細胞増殖活性を、TUNEL 法でアポトーシス発現を、蛍光免疫染色で ROS 産生を評価した。

【結果】
Real-time PCR 法ではHG apo-群ではRG 群と比較して、有意にNOX-1、NOX-4、IL- 6 の上昇を認めた。HG 群間での比較においてはHG apo+群では有意にNOX-1、NOX-4、IL-6 の発現は抑制された。WST-assay では RG 群間での比較において RG apo+群で有意に細胞増殖活性の上昇を認めた。HG 群間での比較においてはHG apo+群で有意に細胞増殖活性の上昇を認めた。TUNEL 法ではHG apo-群で RG 群と比較して、有意に発現の上昇を認めた。HG 群間での比較においてはHG apo+群では有意に発現が低下した。蛍光免疫染色では、HG apo-群ではRG 群と比較して有意に ROS 産生の増加を認めたが、HG 群間での比較においてはHG apo+群で有意にROS 産生は減少した。

【討論】
腱細胞においては糖負荷によって細胞外マトリックスの分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs; matrix metalloproteinases)の発現が亢進することが知られている。高血糖状態が腱細胞での MMPs 発現と細胞外マトリックスの分解を亢進させることで腱付着部症や腱損傷といった腱障害を引き起こすと考えられている。また、糖尿病患者のアキレス腱では非糖尿病患者との比較で、免疫染色においてⅠ型コラーゲンの密度や血管内皮増殖因子(VEGF; vascular endothelial growth factor)および核内因子к B(NFкB; nuclear factor kappa B)の発現が増加していることが報告されており、高血糖状態は腱での炎症反応を惹起することも腱障害の要因であると言える。

高血糖状態ではプロテインキナーゼ C(PKC; protein kinase C)の活性化を経て NOX が活性化されることで ROS が産生され、組織障害を引き起こすことは腎臓や心血管系など多臓器において報告されており、我々も過去に腱細胞に対して糖負荷を行うことで、 NOX や IL-6 の発現上昇やROS 産生の増加を認めたことを報告している。

抗酸化剤であるアポシニンはNOX 阻害剤であり、ROS 産生のダウンレギュレーターとしての有効性は腎血管内皮細胞や心筋細胞などで報告されているが、これまでに腱細胞での使用報告はない。本研究ではアポシニンが腱細胞においても糖負荷による酸化ストレスモデルに対して NOX1 とNOX4 の発現を抑制し、ROS 産生を低下させた。また、アポシニンの投与によって IL-やアポトーシスの発現が低下したことは、ROS 産生の低下に伴う抗炎症効果やアポトーシス抑制効果の影響であり、その結果として細胞増殖活性の増加を認めたものと考えられた。

本研究はあくまでも実験レベルの枠を超えるものではないことを強調しなければならない。臨床使用に関しては今後さらなる研究が必要である。特に本研究は細胞での研究であり、アポシニンが生体内で同様の抗酸化作用を示すかどうかについては動物実験での評価は当然ながら必要である。さらにアポシニンの作用機序をより明らかにするために、アポシニンの拮抗薬を用いた研究も必要となるかもしれない。

【結論】
本研究では糖負荷による酸化ストレスモデルに対してアポシニンは腱細胞で NOX を阻害し、ROS 産生を低下させた。また、ROS 産生の低下に伴い、抗炎症効果やアポトーシス抑制効果を示し、細胞増殖活性も増加させることが示唆された。アポシニンの抗酸化作用は糖尿病性腱障害の治療薬としての可能性が期待される。

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