リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「プラズモニックナノポア構造を用いた1粒子解析法に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

プラズモニックナノポア構造を用いた1粒子解析法に関する研究

松田, 倫太郎 MATSUDA, Rintaro マツダ, リンタロウ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

A Study on Single Nanoparticle Analysis using
Plasmonic Nanopore Structure
松田, 倫太郎

https://hdl.handle.net/2324/6787415
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(理学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(様式3)





論 文 名
Structure





:松田 倫太郎


A Study on Single Nanoparticle Analysis using Plasmonic Nanopore
(プラズモニックナノポア構造を用いた1粒子解析法に関する研究)



















近年、細胞外小胞(extracellular vesicles:EV)と呼ばれる生体粒子が注目を集めている。EV
は細胞から分泌される直径 100 nm 程度の小胞であり、親細胞由来の分子で構成されている。がん
細胞由来の EV 表面にはがん細胞由来の分子が存在するため、EV 表面の分子はがんマーカーとし
て注目を集めており、これを用いた「がん検査技術」および「がん種識別技術」の開発に期待が高
まっている。また、EV は生体内において細胞間の情報伝達を仲介する重要な役割を担っている。
例えば、がん細胞由来 EV 表面のインテグリンファミリーの違いによって、EV の到達先が変化し、
結果的にがんの転移先が変化することが報告されている。このように、EV の表面分子は EV の体
内動態に大きく影響を与える重要なファクターであるため、体内動態解析の観点からも EV の表面
分子解析技術は重要である。EV 表面分子を解析する際、1 粒子ごとに解析する 1 粒子解析技術の
構築が必須である。EV は多様性が非常に高く、同じ細胞から分泌される EV であっても均一な表
面分子を有する粒子集団ではない。そのため、EV 表面分子の解析を行う際には、1粒子ごとに計
測を行い、統計的に解析を行うことが重要である。一般的な1粒子表面分子の解析手法としてはチ
ップ増強ラマン散乱分光法(TERS)が挙げられるが、計測方法が煩雑であるため統計的に十分な
数の粒子を TERS で計測することは非現実的である。そこで本研究では、1粒子表面分子解析技術
の開発を目的とし、具体的には、
「1 粒子計測および統計解析を可能にするプラズモニックナノポア
デバイスの構築」
「EV の表面分子情報に基づく各種 EV の識別」
「EV 表面分子に基づく EV 体内動
態の評価」を行った。
プラズモニックナノポアデバイスは、ナノポア構造内部に発生するプラズモン増強電場を利用す
ることで、ナノポア構造を通過する粒子から表面増強ラマン散乱光(SERS)の検出が期待される
デバイスである。しかし、1 粒子から得られるラマン散乱光はそもそも非常に微弱であり、これま
で解析に十分な強度のラマン散乱光の検出に成功した例はなかった。本研究では、従来の円筒型の
ナノポア構造ではなく、ナノポア壁面が傾斜した逆ピラミッド型のナノポア構造を用いることで、
入射光がナノポアに集光されるとともに、ナノポアの鋭角構造によって、より強い増強電場がナノ
ポア内部に発生することを見出した。具体的には、約 10 8 倍の散乱光の増強度が得られており、こ
れは筒型のナノポア構造に比べて約 103 倍の増強度である。実際に、このナノポア構造を用いるこ
とで、液中を浮遊するシリカ粒子の1粒子ラマン分光計測が可能であることも見出した。
逆ピラミッド型のプラズモニックナノポア構造を用いることで、1粒子 SERS が可能であること
を見出したため、実際に健常者血中 EV およびヒトがん細胞(HepG2:肝がん, HCT-116:大腸が
ん, MDA-MB-231:乳がん)に由来する EV の1粒子 SERS 計測を行った。その結果、各細胞種由

来の EV から十分な S/N 比を有するラマンスペクトルが得られ、それぞれ 100 粒子以上の計測に成
功した。さらに、Finite-difference time-domain(FDTD)シミュレーションによるナノポア内部のホ
ットスポットの解析結果から、得られたラマンスペクトルは EV 表面分子からの散乱光が支配的で
あることがわかった。また、得られたラマンスペクトルをデータセットとしてランダムフォレスト
を用いて機械学習を行うことで、これらの EV を識別できるか評価した結果、4 種類の EV を 94%
以上の精度で識別することに成功した。
最後に、EV の体内動態評価を目的に、X 線照射前後のマウスの血中および尿中に含まれている
EV の1粒子ラマン分光計測を行った。さらに、X 線照射が EV の表面分子に与える影響を調べた。
X 線照射前後の血中および尿中の合計 4 種類の EV をそれぞれ 100 粒子以上計測し、それらをデー
タセットとした主成分分析を行った結果から、血中、尿中それぞれにおいて、X 線照射後だけに現
れる EV が存在することが明らかとなり、一方で X 線照射に関係なく存在する EV も確認された。
これらの EV において、具体的に表面分子がどのように異なっているのかを調べるためにラマンピ
ークの帰属を行った。EV のような複数の分子で構成されている物質からラマンスペクトルを測定
した場合、あるピークに対して複数の候補分子が存在する場合がある。そこで本研究では、それぞ
れのスペクトル群を用いて各ピーク間の相関係数を見積もることで、強度の増減が連動しているピ
ーク群を明らかにし、それらが同一分子からのピークであると仮定することで帰属を行った。その
結果、X 線照射後に現れた EV では高マンノース型の N 結合型糖鎖が EV 表面に多く存在している
ことが強く示唆された。さらにこの N 結合型糖鎖を有する EV は X 線照射後の血中と尿中の双方に
含まれていたことから、体外に放出される体内動態であることが示唆された。
以上、本研究により「1 粒子計測および統計解析を可能にするプラズモニックナノポアデバイス
の構築」
「EV の表面分子情報に基づく各種 EV の識別」
「EV 表面分子に基づく EV 体内動態の評価」
が達成された。この技術を応用することで、これまでに無い新しい「がん検査技術」および「がん
種識別技術」の構築が期待される。また、本解析法は分子の指紋情報を内包しているラマン散乱光
の計測をベースにした解析法であるため、脂質、タンパク質、糖鎖などの分子種にとらわれず、こ
れらを横断した EV の表面分子の解析が期待でき、バイオセンサーとしてだけではなく EV を分子
生物学観点から理解するための重要な技術になり得ることを見出した。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る