構造制御された高分子の解析
概要
令和 4 年度
京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
構造制御された高分子の解析
Analysis of structure-controlled polymers
京都大学化学研究所 高分子制御合成研究領域
登阪雅聡
研究成果概要
近年開発された可逆不活性化ラジカル重合法は均一で制御された分子量のポリマーを合
成するのに有用な手法である。しかし、高分子量ポリマー、特にポリスチレン(PSts)やブロック
コポリマーの合成は困難な課題であった。我々は、有機テルルを用いたエマルションラジカル
重合(TERP)により、構造制御された高分子量 PSts および高分子量 PSt セグメントからなるブ
ロック共重合体を合成することに成功した。TERP の連鎖移動剤(CTA)の有機テルル基の親
水性が分子量制御の成功に重要であることを見出した。即ち、ジエチレングリコール、あるい
はテトラエチレングリコールユニットを持つ CTA が適していた。これらの CTA に加え、界面活
性剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を使用することにより、分子量
100 万以上で低分散性(Ɖ < 1.6)の PSts が、モノマー転換率 96%以上で合成された。この
ような高いモノマー変換率、高い末端基忠実度、ポリマー粒子への迅速なモノマー拡散により、
マクロ CTA を分離することなく、第一モノマーを変換した後に第二モノマーを加えることで低分
散性の高分子量ブロックコポリマーも合成することに成功した。この方法は、高分子量 PSts を
ベースとしたポリマー材料を作製するための貴重なルートを提供するものである。
Fig. 1. Emulsion TERP giving high molecular weight homo (Mn > 1 × 106) and block copolymer
(Mn > 4 × 105) with narrow dispersity (Ð < 1.6).
発表論文(謝辞なし)
[1] Jiang, Y.; Fan, W.; Tosaka, M.; Yamago, S. ACS Macro Lett. 2022, 11, 1331–1335. ...