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大学・研究所にある論文を検索できる 「人工膝関節全置換術後患者に対する床反力計と表面筋電図を同期させた三次元動作解析 : 正常膝関節を模倣した近代型人工関節と従来型人工関節との比較」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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人工膝関節全置換術後患者に対する床反力計と表面筋電図を同期させた三次元動作解析 : 正常膝関節を模倣した近代型人工関節と従来型人工関節との比較

兵頭, 康次郎 筑波大学

2021.08.03

概要

⽬ 的:⼈⼯膝関節全置換術(TKA)は末期の変形性膝関節症に対する治療法として、良好な臨床成績が多数報告されている。⼀⽅、⼈⼯股関節全置換術と⽐較して疼痛改善 効果は同等であるものの,関節機能や⽣活の質の改善効果は劣ることが⽰唆されており、術後の異常動態がその要因の⼀つとして考えられている。術後の動態評価としては、透 視下での 2D-3D レジストレーション法が主に⾏われているが、撮影範囲の制限、X 線 被曝の影響や⼒学的評価が困難という⽋点がある。⼀⽅、モーションキャプチャシステ ムは、⾚外線反射マーカーを体表に貼付し、光学式カメラで撮影し、その軌跡を解析す ることで⾏う動態解析⼿法であり、床反⼒計と同期させることで被曝や撮影範囲の制限 無く kinetics を評価できる。また表⾯筋電図は⽪膚上に電極を貼り付け、筋電位を計測 し筋疲労を推定できる。そこで本研究の⽬的はモーションキャプチャシステムに、床反⼒計と表⾯筋電図を同期させることで、kinematics に加えて、kinetics と筋活動を含めた動態解析を⾏い、正常膝を模倣した近代型 TKA と従来型 TKA を⽐較検討することである。

対象と⽅法:対象は 60 歳以上の変形性膝関節症患者に対して⾏った⽚側 TKA 術後患者で、正常膝を模倣した近代型 TKA(Smith and Nephew 社製 Journey 2)を⽤いた 12 例 (以下 M 群)と従来型 TKA(Smith and Nephew 社製 Legion)を⽤いた 12 例(以下 C 群)である。M 群は男性 2 例、⼥性 10 例、平均 69.4 歳(62-76)、術後経過観察期間 13.1 ヶ⽉(6-25)、C 群は男性 4 例、⼥性 8 例、平均 70.0 歳(61-84)、術後経過観察期間 16.8 ヶ⽉(10-26)である。Plug-in Gait モデルを⽤いた三次元動作解析装置(VICON MX)に床反⼒計(AccuGait)と無線表⾯筋電図(Trigno)を同期させ、歩⾏解析と⽴ち上がり解析を⾏った。歩⾏動作は 10m の歩⾏路を⾄適速度で 3 回歩⾏させ、⽴ち上がり動作は両⼿を腰に添えて 90 度に膝を屈曲させた肢位から、⾄適速度で 3 回⽴ち上がり動作を⾏った。歩⾏解析では歩⾏中の下肢関節⾓度、⽴脚期膝関節モーメントを評価し、6 カ所(内側広筋、⼤腿直筋、外側広筋、半腱様筋、⼤腿⼆頭筋、中殿筋)の筋活動を⽴脚期、遊脚期の積分筋電図と最⼤随意収縮の割合で算出した。⽴ち上がり解析は動作中の下肢関節⾓度、膝関節⾓速度、膝、股関節モーメントを計測し、歩⾏解析と同様に筋活動を評価した。各項⽬を M 群と C 群で対応のない t 検定で⽐較した。P 値は 0.05 未満を有意とし、SPSS Statistics 21.0 を解析に使⽤した。

結 果:
[歩⾏解析] 歩⾏速度がM 群で1.1±0.2m/s、C 群で0.9±0.2m/s とM 群で速く(p=0.03)、歩幅が M 群で 0.54±0.07m、C 群で 0.45±0.11m と、M 群で⻑かった(p=0.03)。M 群、C 群ともに double knee action を⽰したが、⽴脚初期の膝関節屈曲⾓度が M 群で 10.9±3.0 度、C 群で 8.0±2.6 度と M 群で有意に⼤きかった(p=0.04)。また⽴脚期膝関節伸展モーメントが M 群は 0.55±0.24Nm/kg、C 群で 0.34±0.19Nm/kg と M 群で有意に⼤きかった(p=0.04)。筋活動において有意差はなかったが、⽴脚期、遊脚期ともにM 群で四頭筋の筋活動が低かった。

[⽴ち上がり解析]
⽴ち上がり動作は M 群、C 群ともに 11 例での⽐較となった。⽴ち上がりにおける膝伸 展⾓速度はM 群で131.3±33.8°/s、C 群で113.3±30.1°/s とM 群で速かった(p=0.22)。最⼤膝関節伸展モーメントは M 群で 0.37±0.1Nm/kg、C 群で 0.32±0.14Nm/kg (p=0.35) 、 最⼤股関節伸展モーメントは M 群で 0.52±0.23Nm/kg 、 C 群で 0.69±0.16Nm/kg であった(p=0.08)。平均垂直床反⼒は M 群で 4.08±0.5N/kg、C 群 で 4.68±0.4N/kg と M 群で⼩さかった(p=0.01)。筋活動においては、内側広筋、⼤腿 直筋、外側広筋において M 群が C 群より少ない傾向を⽰した。

考 察:M 群である近代型 TKA の特徴は内外側が左右⾮対称の解剖学的な関節⾯形状を再現している。冠状⾯の関節⾯傾斜に加えて、⽮状⾯で⼤腿⾻がより前⽅に位置していて、⽣体に近い⼤腿⾻、脛⾻の前後位置関係を獲得しており、medial pivot や posterior rollback などの⽣理的な膝関節運動を⽰す guided motion 型インプラントである。また BCS 型インサートでは ACL と PCL の機能を代⽤する特徴的なポストカム構造も持ち合わせている。⼀⽅、従来型 TKA である C 群は内外側が左右対称の形状であり関節⾯傾斜も平坦である。良好な臨床成績が報告される⼀⽅、動態解析で異常な関節運動を⽰すことがわかっている。今回歩⾏動作では M 群で正常に近い double knee action を⽰した。また C 群と⽐較し⽴脚期膝関節伸展モーメントが⼤きかった。ACL不全膝では、歩⾏⽴脚期の膝関節伸展モーメントが低下することが知られていることから、C 群と⽐較し M 群では ACL の機能の⼀部をインプラント形状で再現できた可能性が考えられる。⽴ち上がり動作に関しても M 群では C 群と⽐較し、M 群ではより速く⽴ち上がることができ、M 群では C 群と⽐べて股関節伸展モーメントが少なく、かつ⼤腿四頭筋の筋活動が少ない傾向であった。平均垂直床反⼒が少ないことをあわせると、 M 群はより⼤腿四頭筋を有効に活⽤して⽴ち上がり動作を⾏えていることが⽰唆され、特徴的なデザインが影響していると考察できる。

結 論: TKA 術後患者に対して、床反⼒計と表⾯筋電図を同期させたモーションキャプチャシステムで三次元動作解析を⾏った。正常膝を模倣した近代型 TKA と従来型 TKA の⽐較において、歩⾏動作と⽴ち上がり動作で近代型 TKA は、特徴的なインプラント形状により前⼗字靭帯の機能の⼀部である前⽅安定性を獲得でき、さらに⼤腿四頭筋を有効に活⽤して動作を⾏えた可能性が⽰唆された。Kinematics と kinetics と筋活動を同時に評価できる本研究の動作解析⼿法は TKA 術後患者の動態評価として有⽤と考えられる。

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